つくろう、島の未来

2019年12月07日 土曜日

香川県最西端にある伊吹島(観音寺市)には、1970年まで妊婦が出産前後に共同生活した「出部屋(でべや)」と呼ばれる風習があった。2015年4月、香川大学医学部看護学科の学生9名がその文化を残すため伊吹産院跡(出部屋跡地)を保存するプロジェクト「伊吹島・出部屋より未来へ発信~ハートの島より愛を込めて~」を始めた。

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出部屋は島全体で子育てをしてきた原点

2015年4月、香川大学医学部看護学科では、母性看護学の授業のなかで伊吹島の出部屋について紹介。授業を受けた学生9名は、全国的に過疎化高齢化が進行している中で、日本人のお産にまつわる歴史や産育習俗の残る場所として貴重な出部屋の価値が埋もれてしまうことを危惧した。「県内でも知らない人が多いはず」「もっと伝えたい」と感じ、Heart愛Land(ハートアイランド)という団体を結成。プロジェクトがスタートした。

学生らは5月に伊吹島に赴き出部屋跡地を視察。7月に出部屋での産後生活経験者のインタビューを行った。

Heart愛Land代表・丸山彩里さん(看護学科4年生)は「伊吹島では、産後の女性は汚れているとされていたそうです。でも、女性たち自身は出部屋での生活を楽しんでいたと言います。出産の達成感や満足感、子どもを一番に思う気持ちは今の母親と同じだったんだと思いました」と話す。

伊吹島の出部屋には産後の母体保護のほか、妊娠、出産、子育てにおいて積極的に母親としての役割を獲得していく過程があった。

学生らは9月に島を再訪。出部屋跡地の清掃をし、四季折々に咲く花を植えた。「経年的に楽しめる金木犀(きんもくせい)を植えました。島に住む人や観光客のみなさんが、命が生まれることについてゆっくり考えていけるよう、いやされる場所になればと思います」(丸山さん)。

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プロジェクトに取り組む看護学科の学生

今後、Heart愛Landは出部屋に関するパンフレットやポスターを作成し、役所、学校などに配布。また、出部屋までの道のりを3カ国語(日本語、英語、韓国語)で説明した案内板を作成する予定だ。

丸山さんは「9名とも4年生なので、卒業する3月までは活動を続け、この活動を、助産師や母性看護学に興味を持つ下級生に受け継いでいきたい」と話す。

出部屋は島全体で子どもを育ててきた伊吹島の原点。未来に引き継ぐ取り組みに今後も注目したい。

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