本土から片道約27時間。小笠原諸島・母島(ははじま|東京都)のキッズサッカークラブ「FCフォルサ母島」が、映像制作を通じた教育支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース」(主催・パナソニック株式会社)に初参加。初めてつくった映像作品『つながる』が、同プログラムが開催するコンテストの小学生部門の「最優秀作品賞」と「トレジャー賞」を受賞した。
「何にでも挑戦しよう、島から世界に飛び出そう」
「FCフォルサ母島」は、小笠原諸島・母島で活動するキッズサッカークラブだ。保育園児から中学生まで40名が所属し、ハンディキャップを持つ子どもも参加。所属する子どもたちは、サッカーを中心に、ビーチクリーンやロープクライミングなどの活動にも熱心に取り組んでいる。
今回の映像制作は、同クラブ代表の宮澤 貫(とおる)さんの提案によりスタートしたもの。18年前に子育てのために島に移住した宮澤さんは、子どもたちの個性を活かし、やりたいことを見つけてもらえるよう、文化活動にも挑戦させたいと考えていた。
「キッド・ウィットネス・ニュース(以下、KWN)」の存在を知った宮澤さんは、映像制作の経験こそなかったがプログラムへの参加を子どもたちに提案。2016年に、挑戦がはじまった。
左:「FCフォルサ母島」メンバー/右:ロープクライミング指導の様子
「KWN」は、パナソニック株式会社がグローバルに展開する教育支援プログラム。映像制作を通じて、創造性やコミュニケーション能力を高め、チームワークを養うことを目的としている。
日本国内のコンテストに優勝すると、世界各国のKWNコンテストを勝ち抜いた作品が競い合う「KWN グローバルコンテスト2017」に出品することができる。
宮澤さんは初めから世界を見据えていたという。「島で暮らしていると、どうしても気持ちが内向きになってしまう面がある。母島には、世界の舞台で活躍する一流のスポーツ選手なども来島するので、子どもたちに世界は近いことを伝えたくて、交流の機会をつくってきました」と宮澤さんは語る。
映像制作は、島の良さに目を向け、世界へ向けて表現するための試みだった。宮澤さんは子どもたちに「何にでも挑戦しよう。島から世界を目指そう」と呼びかけた。
人も自然もつながる島の日常を描く
監督、ナレーション、音声、編集などチームが連携して一つの映像を紡ぎ出す
「KWN」参加にあたり、母島小学校に在籍する5年生2名、6年生4名からなる映像制作チーム「FCフォルサ母島 マルチメディア部Aチーム」が結成され、「KWN」事務局から撮影機材の貸出しや技術指導などの支援を受けながら映像制作に取り組んだ。
同チームの6名は、生まれたときから島で一緒に育った仲間とあって、監督やナレーション、音声、編集などの役割分担はスムーズに決まり、数カ月をかけて様々な場面を撮影していった。海中での撮影の際は漁師をしている保護者に船を出してもらうなど、地域の大人たちの協力も得ながら制作が進められた。
宮澤さんは「最初の企画ミーティングで、島と内地の違いを挙げてみたら、信号がない、コンビニがないなど、ないことづくし。反対に、島だけにあるものは何だろう?と話し合い、誰とでも挨拶を交わすことや、お互いの家を行き来すること、美しい夕日や海を眺める暮らし、イルカやクジラなど、子どもたちから出てきた島の魅力が映像のモチーフになりました」と振り返る。
完成した映像作品『つながる』は、約480人が暮らす母島のおだやかな日常風景や、みずみずしい自然の姿を通して、島全体が顔見知りという住民同士の温かなつながりや、身近に存在する自然と人とのつながりを描いている。
母島沖での海中撮影では、たくさんのイルカが登場。子ども達と一緒に泳ぐ姿も
小学生部門の最優秀賞を受賞、世界大会へ
『つながる』は小学生・中学生・高校生69校77チームが参加した「KWNコンテスト2016」で小学生部門の「最優秀作品賞」と「トレジャー賞」を受賞した。2017年3月に東京で授賞式が行われ、メンバー代表として寺戸藍波さんと宮澤波生さんが出席した。
同作品は、小学生部門の日本代表として、世界各国の優勝作品が出品される「KWN グローバルコンテスト2017」にもエントリーされている。宮澤さんは「ここまで来たのだから、調子に乗って世界一を目指します」、子どもたちは「人や自然が関わりあう母島の良さを、世界の人に知ってほしい。僕たちがつくった映像で世界の人とつながりたい」と、期待を寄せている。
授賞式に代表で参加した寺戸藍波さん(左)と宮澤波生さん(右)
【関連サイト】
Youtube Panasonic KWN Japan パナソニック KWN日本チャンネル
2016年度 最優秀作品賞・トレジャー賞 「つながる」
キッド・ウィットネス・ニュース(KWN) 日本コンテスト2016