つくろう、島の未来

2019年12月10日 火曜日

塩飽(しわく)諸島の粟島(香川県三豊市)のアート作品で、届け先不明の手紙を預かる「漂流郵便局」が、全国で話題となっている。これまで9,600通以上が届き、差出人の多くは身近な人を亡くした人だという。

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アートプロジェクト「漂流郵便局」の存続に込められた想い

塩飽諸島の粟島にあるアート作品で、届けたくても届けることのできない届け先不明の手紙を預かる「漂流郵便局」が、多くの人の共感を集めている。作品の公開以降、これまでに届いた手紙は9,600通以上(2015年11月現在)。その多くは身近な人を亡くした人からのものだという。

同作品は2013年、瀬戸内海の島々で開かれた「瀬戸内国際芸術祭」をきっかけに、芸術家の久保田沙耶さんが旧粟島郵便局を改装して制作。届け先不明の手紙を受け付ける郵便局というコンセプトで作品を発表したところ、過去から未来、物や人などに宛てた手紙が届くようになった。それらの手紙は「漂流郵便局留め」として、届け先に届くまで局内のブリキ製の漂流私書箱で保管。訪れた人は私書箱から自由に手紙を取り出して読むことができる。

芸術祭開催にあたって、粟島には13人の芸術家が来島。当時、旧粟島郵便局の施設は誰にも使われていなかったため、管理者の中田勝久さんが作品制作や展示の場として提供した。当初は芸術祭の会期の1カ月で公開を終える予定だったが、作品への反響が大きかったことと、届いた約400通の手紙を大切にしたいと考えたことから、中田さんが漂流郵便局の局長として存続が決まった。

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同局に手紙を出すには、手紙の不返却、手紙の著作権は漂流郵便局に譲渡、差出人の住所は不要という3つの条件がある。手紙を読みたい場合は、毎月第2・第4土曜日13〜16時の開局時間内に訪問して読むことができる。

漂流郵便局に手紙が届く一方で、実際に同局を訪れたいと、開局日に合わせて全国から来島する人も増えた。三豊市産業政策課の三木愛珠さんは「来島された方々向けに、粟島の魅力を伝えようとする活動が始まったり、船の乗船客が増えたりするなど、漂流郵便局の存在は島の活性化にもつながっている」という。

粟島生まれの中田さんは、粟島郵便局に就職して45年間の職務を勤め上げた。現在は地元の公民館長を務めるかたわら、漂流郵便局の局長としても活動している。中田さんは「手書きの手紙のよさも感じられる、すばらしいアイデアの作品」として、「手紙を出す方や来局する方は、それぞれの思いを抱いている。そうした多くの思いが詰まった大切な場所なので、今後も続けていければ」と話している。

※「漂流郵便局」はアート作品であり、日本郵便株式会社との関連はない

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