つくろう、島の未来

2021年05月15日 土曜日

百島(ももしま|広島県尾道市)にUターンし、いちご農園を経営しながら雇用創出や人口減少対策に取り組む「百島農園」代表の藤田武士さんに話を聞いた。

■幼少期に見た風景を残したい。市場調査や地産地消で雇用創出に取り組む

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瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の百島(広島県尾道市)に、いちご栽培で雇用創出と人口減少対策を図る百島農園がある。電機メーカーを定年退職後、Uターンした藤田武士さん(76歳)が経営する農園は現在、従業員8名。2〜3年間の就労を通して、いちご栽培のノウハウを教え、従業員の独立支援も行っている。

藤田さんがUターンしたのは、2000年。一人暮らしの母親が営む農業を受け継いだ。「電機メーカーに勤めていたため、工場のように生産性を高める農業をしようと思った」(藤田さん)。

藤田さんはまず市場単価の高い農産物を調べた。当時、最も高価だった農産物がさくらんぼ。続いて高値で取引されていたものがいちごだった。いちごは百島の特産品。「大根1キロ100円だとして、いちごなら1パック300グラム500円で、3パックなら1,500円。どっちがいいかと考えて、いちごの栽培を始めました」(藤田さん)。

また流通にも目を向けた。農産物は農協から青果市場を通してスーパーなどで消費者に販売されているのが大半。生産者である農家の手取りは小売価格の30%程度が標準だ。そこで自ら営業をして、ダイレクト販売を行い、販路を拡大。収益確保を目指す。

販売先も広島県内に絞った。当時、いちごの生産高は栃木県と福岡県が多く、広島県は下位だったと言う。「いちごは品質がよくなきゃいけない。1日置くと傷む。栃木や福岡から広島に輸送するのに1日半は掛かった。うちなら朝採って朝出荷できた」(藤田さん)。鮮度の良いいちごを出荷できる利点を活かす販売方法を見つけた。

百島農園では雇用創出を目的に、藤田さんが身につけた販売手法を従業員に教え、県内での独立支援も行う。「私が島を離れた時期の人口が約2,880名、Uターンした時期が約880名。高齢化が進み、今も年間20名は減っている。だから、島外から最低でも20名の若者を呼ばなければいけない。若者を呼ぶために、稼げる仕事が必要だと思った」(藤田さん)。藤田さんは一従業員辺りの目標年収を500万円に定めている。

「夢は200名の雇用創出。まだまだ叶わないから、後進に託しています」(藤田さん)。藤田さんは、子どもの頃の百島での生活を振り返りながら「渡船で島に帰ると、船着き場で母が迎えてくれた。本土に向かう時も、いつまでも母が手を振ってくれた。そんな百島がなくならないようにしたい」と話す。Uターンした当時、農業の生産者が減って、荒れた農地を見た。子どもの頃のように、作物が取れる一面新緑の田畑に戻るよう、藤田さんはいちご農業を続ける。


【関連サイト】
百島農園が参加する「瀬戸の島いちごグループ」ウェブサイト

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