つくろう、島の未来

2020年10月29日 木曜日

離島経済新聞社は、10月22日に10周年を迎えます。
10年間の感謝を込めて、10月22日(木)夜に全国の島々のゲストと中継をつなぎ、音楽ライブやトークをお楽しみいただくオンライン生配信イベント「シマナイト ON LINE」を開催します。(※)。

※TwitCasting(ツイキャス)有料配信。生配信終了後、録画再生可能

ここでは、2012年に創刊した『季刊ritokei』のバックナンバーより、シマナイトのゲストが登場した記事をWEB上で特別に掲載。第3回は、上甑島(かみこしきしま|鹿児島県)で「山下商店甑島本店」・「FUJIYA HOSTEL」・「コシキテラス」等、地域固有の小さな拠点の再生に取り組む山下賢太さんへのインタビュー、2012年4月『季刊ritokei』2号「逢いたい島人」企画をお届けします。

子どもたちが、帰ってくる島に

遊びで行くなら、島は楽しい場所でしかないけれど、一生そこに働き、暮らすとなれば一筋縄ではいかないことが山ほどあります。鹿児島県西部の甑島列島(こしきしまれっとう|鹿児島県)は、総人口約6,000人に対して高校はゼロ。
子どもたちは中学を卒業すると同時に島を離れなければなりません。上甑島(かみこしきしま)で生まれ育ち、一旦は島を離れた山下賢太さんは自ら仕事をつくり、将来、子どもたちが帰ってくることのできる島をつくっていきます。
(聞き手・鯨本あつこ/文・甲斐かおり/写真・コセリエ)

※インタビューは、すべて『季刊ritokei』vol.2(2012年4月発行)掲載時のものになります

島外の視点をつないだ先に初めて見える島の未来

鯨本:

賢太くんとは昨年、上甑島で開催された「甑列島会議」の時に少しお話をさせてもらいましたが、こうしてちゃんと話すのは初めてですよね。

上甑島出身で中学卒業と同時に島を出て、大学卒業後に島に戻ってきたという賢太くんですが、実は、リトケイがスタートした直後(ウェブ版がスタートした2010年10月)に、リトケイ宛にメールをくれた初めての島人でもあります(笑)。

メールくれた時は、まだ島に戻って3カ月目くらいでしたか?

山下:

そうですね。大学卒業後、自分の故郷である上甑島に戻って、これから本格的に農業をやっていこうという時期でした。

コメをつくりながら、商品開発を始めようとしていて。僕は島でただ生きていくだけじゃなくて、島の外にいた時の視点を忘れずに、これまでとは少し違う角度で島に光を当てていけたらと思っていたんです。

だからリトケイを見た時は、全国の島を相手に同じようなことをやろうとしている人がいるんだって思って。これはすごいことになるぞって(笑)。

鯨本:

嬉しいです。実際、リトケイの読者には島の人よりも、島出身者や島に興味はあるけれど住んでいないという人の方が多いんです。リトケイもそういう人たちと島の人たちをつなぐことで、何かできないかなと。

山下:

僕がまだ京都の大学生で「KOSHIKI ART PROJECT」を手伝っていた頃、地元の人たちにはなかなか理解を示してもらえなかったんです。いくら島のことを思って発言しても「だけどお前はここに住んでない」って言われてしまう。それが悔しかった。

今自分は島にいますが、島を離れても島のことを思っている人たちと、今島に住んでいる人たちの視点をつないだ時に、初めて甑島の未来が見えてくるんじゃないかと思っています。

助成金ありきじゃなくて商品の魅力で勝負したい

鯨本:

今は、島でどんなものをつくっているんですか?

山下:

米と、モチ米でつくった郷土菓子こっぱもち「COPPA(こっぱ)」(※)です。早場米と普通期米に分けて育て、期間限定で販売しています。8月の上旬頃には新米が収穫できます。

これまで、島の農業は助成金があって成り立ってきたけれど、僕は助成金ありきじゃなくて商品ありき、でやっていきたいんです。やっぱり、商品の魅力で勝負したい。売り先ができれば、農地も自然と増えます。助成金ありきでは、続かないですから。

※現在は製造を休止しています

鯨本:

「COPPA」の生産は、全部ひとりでやってるんですか?

山下:

今は時間に余裕のある島の人たちに手伝ってもらっています。私は草取りしかできんよ〜というおばちゃんには、草取り!やってください!みたいな(笑)。

鯨本:

いいですね〜(笑)。新しいことを始めるとき、島の人に理解してもらえないとすると、島外から人を連れてくるほうが簡単だったりするけど、島の人たちと一緒にやりやすいところもUターン者の強みですよね。

山下:

僕が考えているのは、自分が売る商品を通して、島のいいものをアピールしていきたいってことなんです。今お米を5kg 3,500円で販売していますが、島のほかの農産物と合わせてセットで送っています。島の特産で「つけあげ」っていうさつま揚げがあるんですが、そのつけあげだったり、干物だったり。

僕の米は、あくまで島のおいしいものの引き立て役で、〇〇をおいしく食べるためのご飯なんです。実際に、僕自身も島の中でそういう存在でありたいと思っています。つまり、島をおいしくさせる米になりたい!です(笑)。

どんなに大好きな場所も想いだけでは守れない

鯨本:

そもそも、島に戻ろうと思ったのはどうしてですか?

山下:

昔、島の港に「波止ん段(はとんだん)」という大好きな場所があったんです。大木の下に子どもからお年寄りまで島の人たちが自然と集まってきて、いろんな話をする場所で。でも、高校生の時に久しぶりに島に帰ったら、港の改修工事で「波止ん段」が壊されている現場に行き合わせたんです。

しかも、それをやっていたのは建設会社に勤める父だった。それがショックで。責める僕に対して、父が言ったのはたった一言、「オマエのためだ」って。そりゃそうですよね。高校行くお金もそれで出てるわけですから。

その時に、あぁ大好きな場所を守るためには、想いだけじゃだめなんだって思い知ったんです。

鯨本:

それで、島を何とかしなくちゃと?

山下:

はい。僕はやっぱり地域の人たちに育てられたっていう思いが強いんです。だから島への恩返しみたいな意味もあります。

そういうこともあって、4月から山下商店を法人化したんですが、休暇で島に帰ってきて農作業を手伝ってくれる高校生たちが、「賢太兄ちゃん、収入いくらあんの?」って聞いてくるんですよ。18歳の子たちが僕のやっていることを気にしているんです。

これは失敗できないなって思いますね。彼らも、できれば島から離れたくないんですよ。仕事さえあれば。

鯨本:

リトケイとしても、賢太くんのように島で仕事をつくろうとしている人たちを応援していきたいのですが、島に行きたいけどなかなか勇気が持てない人たちに何かひとことアドバイスするとしたら、何かありますか?

山下:

行け!迷うな!とりあえず行ってから悩め!ですかね(笑)。

【話を聞いた人】
山下賢太(やました・けんた)

東シナ海の小さな島ブランド株式会社 代表取締役
1985年、鹿児島県・上甑島生まれ。JRA日本中央競馬会競馬学校を中退後、16歳できびなご漁船の乗組員に。京都造形芸術大学にて環境デザイン学科を学び、日本の水産業に新たな選択肢をつくるFISHERMANS FESTや鹿児島離島文化経済圏を企画・監修。「山下商店甑島本店」・「FUJIYA HOSTEL」・「コシキテラス」等、地域固有の小さな拠点の再生に取り組みながら地域資源が循環するもの・コトづくりとデザイン経営を実践している。
http://island-ecs.jp/


さまざまな島のゲストが登場するリトケイのオンライン生配信イベント「シマナイト ON LINE」は10月22日に開催。山下さんのトークもお楽しみいただけます♪ 下記の【チケット申し込み】URLよりお申し込みのうえ、ぜひご視聴ください。

【シマナイト ON LINEイベント概要】
日時:10月22日(木) 19:30〜22:00
料金:1,500円(ツイキャス有料配信 別途手数料あり)
出演者:okei(小笠原諸島)、黒島慶子(小豆島)、大口久(小値賀島)、山下賢太(上甑島)、麓憲吾・渡陽子・楠田莉子(奄美大島)、宮良賢哉・池城安武(石垣島)、リトケイ一同
チケット申し込みhttps://twitcasting.tv/tokyoculture2/shopcart/26611

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