6月15日、今年で5回目の開催となる「トロピカルラヴァース・ビーチフェスタ」が石垣島(いしがきじま|沖縄県)で開催された。若手役場職員などの島人が中心となり、島人や島外から集うファンを楽しませるフェスをレポートします。
■島人が育てる石垣島の「トロピカルラヴァース・ビーチフェスタ」
石垣島の南西部、冨崎(ふさき)海岸で6月15日、島の若手が主催する「トロピカルラヴァース・ビーチフェスタ2014」が開催され、島内外から集まった2,000人の参加者が音楽やライブを楽しんだ。
2013年3月に新空港が開港した石垣島は、多くの航空会社が就航し、2013年度の入域観光客数は過去最高を記録。島に多くの来島者が訪れるなか、今年で5回目となる同フェスも過去最高の参加者を集め、にぎわいを見せた。
会場となるビーチは、石垣市内から車で15分程度の「フサキリゾートヴィレッジ」が所有するプライベートビーチ。敷地内には南国の草木が生い茂るプライベートガーデンや、白砂のビーチがあり、琉球赤瓦が敷かれたコテージ風の宿泊棟が立ち並ぶ。
年間を通して家族連れやカップルに人気というホテルがフェス会場となる当日、会場を訪れると、ビーチには特設ステージ、ガーデンエリアには地元事業者がドリンクやフードを提供する屋台やフェイスペイティングや染め物を楽しめるワークショプテントなどが設けられ、参加者を出迎えていた。
今年は、RIP SLYME(リップスライム)やDef Tech(デフテック)といった人気アーティストも登場するとあり、会場には各アーティストのファンも集結。参加者はそれぞれ美しいロケーションのもと、間近で披露されるライブを楽しんでいた。
石垣島にゆかりのあるクリエイターを集める石垣市の文化産業創出事業「石垣島Creative Flag」でも活躍するイラストレーターのpokke104(ぽっけいちまるよん)さんは、沖縄出身のアーティストEITEN(えいてん(さんとともにライブペインティングも披露。キャンバスいっぱいに石垣島の自然が描かれていく模様に、大人から子どもまでが釘付けとなった。
pokke104さんは、第2回目の開催からポスター等のアートワークも担当している。「今年は『リラックス』をテーマにデザインしました。心地よい自然にかこまれた場所で音楽、自然、アートで沢山の人たちと楽しい時間を共有したい想いで描きました」(pokke104さん)
2010年には奥田民生などの大御所アーティストも出演している同フェスだが、牽引するのは30代の石垣市役所職員を中心とした島の若手メンバーだ。
フェスの実行委員長を務める、石垣市役所企画政策課の宮良賢哉さんに話を聞いた。
「2008年にフサキリゾートヴィレッジの渡邊さんとビーチを使った音楽フェスができないかと話はじめたのがきっかけです」。当時、石垣島にはビーチを使った音楽フェスがなかったことから、ホテルのロケーションを生かし、フェスの開催に踏み切った。
気負いなく柔らかな印象の宮良さんと仲間たちは、アーティストへの声かけから、企業への協力要請などを手分けして担当。音響を担当する地元楽器店、島の高校生や社会人で構成するボランティアスタッフ、旅行代理店、タクシー会社などさまざまな協力を得てフェスを実施している。
「2008年の初開催では、島外からのアーティストも1組だけで、お客さんも200名ほど。翌年は台風で中止になりましたが、オフィシャルツアーをはじめた2010年頃から島外のお客さんも増えてきて、島内の認知度も少しずつあがってきました。今年はオフィシャルツアーで80名、個人で予約される方で400名ほど。北海道からの参加もありました」と 実行委員のひとりであるフサキリゾートヴィレッジの渡邊さんは話す。「回数を重ねるごとにスタッフも慣れてきて、受け入れ体制も整ってきています。ホテルとしても、年間で一番大きなイベントになるので、来年以降も継続していきたいです」(渡邊さん)。
日本全国で野外フェスは開催されているが、野外の心配はもっぱら「天候」にある。「沖縄は台風や大雨のリスクがあります。今年はちょっと雨が降りましたが、お客さんも喜んでくれ、なにごともなかったので良かったです」と、宮良さんは安堵する。お客さんの声にも「今年はよかったと言ってくれる人が多かった」と運営スタッフは口を揃える。
「今年は有名なアーティストも多かったので『有名なアーティストが見られるとは思わなかった』という声もありました」(宮良さん)。テレビで見ているアーティストたちが自分の暮らす島で唄う。その光景を島にいながら味わうことができるのは、島人にとっても嬉しいことだろう。
「来年は島外の人に向けたPRにも力をいれ、島外の人にこのロケーションや雰囲気をあじわってもらいたいです。また、今年は請福(せいふく)酒造がRIP SLYME、pokke 104とコラボレーションした梅酒を販売したが、人気アーティストのコラボも含めて、地元の特産品PRにもつなげていきたい」と、宮良さんは意気込む。
那覇よりも台湾が近い石垣島は、離島にありながらもアジアと日本の架け橋となる交流拠点として、世界各国から訪れる来島者や、全国から集まる移住者を受け入れている。 新旧ともに鮮やかな芸能文化が存在する八重山諸島で、同フェスは島の若手が牽引する新しい文化として根付きはじめている。
(離島経済新聞社編集部)