IT技術の進歩にコロナ禍のあおりが加わり、テレワークを推進する企業が増える一方、全国各地でコワーキングスペースやシェアオフィスを整備する動きが活発になっています。そんな中、企業で働く人にとって、島でのテレワークにどんなメリットがあるのか? 北海道は利尻島にある「利尻町定住移住支援センターツギノバ」(利尻町)を拠点にテレワークを行う3人と、その魅力について語り合いました。
利尻島×テレワーク(1)皆がハマっていく利尻島とツギノバ
利尻島×テレワーク(2)利尻島でテレワークできるのはどんな人?
利尻島×テレワーク(3)極端な環境だからこそ得られるものがある
利尻島にハマった3人
ハセタクさん
長谷川琢也(はせがわ・たくや)。ヤフー株式会社所属。SDGsメディア『Yahoo JAPAN SDGs』編集長や企業版ふるさと納税関連事業を担当する他、漁業振興を手がけるFISHERMAN JAPANの事務局長も務める
たまさん
玉城伸太朗(たまき・しんたろう)。東京・上野でウェブ制作やコワーキング施設の運営等を行う株式会社LIGに所属するウェブディレクター。コーヒー焙煎の趣味が縁となり、いつの間にか利尻島リピーターに
大久保
大久保昌宏(おおくぼ・まさひろ)。NPO法人離島経済新聞社理事、一般社団法人ツギノバ代表理事。2010年に鯨本と共に離島経済新聞社を創業。利尻島での事業運営を機に縁が深まりいつのまにか半移住。利尻島を拠点に東京や全国の島々を行き交う
聞き手
鯨本あつこ(いさもと・あつこ)2010年に離島経済新聞社を創業。NPO法人離島経済新聞社代表。『ritokei』統括編集長。子育てを機に2014年よりテレワークを開始。九州を生活拠点に東京はじめ全国の島々を飛びまわる
利尻島でテレワークできるのはどんな人?
ちなみに、コロナ禍で企業のテレワークが浸透して、ヤフーのように企業全体として全国どこでも仕事できる体制を整える企業も出てきています。とはいえ、誰もがどこでも仕事できるわけではないなか、皆さんのように島でも働ける人とは、どんな人になるでしょう?
それこそ長谷川さんのように全国各地を動いている人とか、たまさんのように Web 系の仕事をやられている、いわゆる IT・クリエイター系の人には合うと思います。一方で、小規模なコールセンター業務などチーム単位で動かす仕事も島では良いのかなと思っています。
2〜3人程度のチームで、島を拠点に仕事をするのは連帯感もできそうでいいですね。けれど、そうなってくると寝泊まりする場所の問題が……。
めちゃくちゃ素敵じゃなくてもいいですけど、やはり最低限のものは欲しいですね。利尻島(りしりとう|北海道)で寒かったら死んでしまいますし。
どういう場所がいいのかは世代とかその人の価値観によって違うので、選択肢をいっぱい用意しておくのが、これから大事になってくると感じています。利尻島はまだあまり選択肢がないので、そこは課題かもしれないですね。
たまさんは1カ月間滞在する時は、どこに泊まられているんですか?
自分は利尻町の沓形にあるドミトリーに泊めさせてもらっています。ネットも繋がりますし、寝る場所も寒くなくて。他のお客さんもいて「色々な利尻を楽しんでいる人がいるんだな〜」という感じでした。
近年はあちこちでワーケーションも流行っていますが、中長期滞在になると衣食住に不足があると辛くなりますよね。洗濯がしづらいとか、キッチンがないのに外食の選択肢が狭いとか……。
僕が泊まっているドミトリーにはキッチンもあって、近くにスーパーもあるので簡単なものを作って食べられますし、セイコーマートも夜11時まで開いているのでそこで何か買って食べたり。お昼ごはんは街のどこかに食べに行ったりしていました。
何でも揃って飲食店もあるなら食は問題ないですね。あと、気になるところは移動問題ですが、皆さんは移動してみてどうでしたか?
どうやっても(東京から)直行できないので、札幌や那覇に行くのに比べて1つプロセスを踏まなければならないです。でも、僕自身は札幌で暮らしていたこともあったので、札幌は札幌で楽しみつつ、利尻も楽しむという感覚がちょうど良いです。
丘珠空港から40分ぐらいでしょ? 「大都市・札幌からすぐ行ける島」と考えれば移動は苦じゃないし、ついでにめちゃくちゃコンテンツがある札幌も楽しめるわけなので、観光でも仕事でも札幌を踏んでから行けばいい。1回の移動で2度美味しいと思えばポジティブですよね。
札幌という北海道の大都市と、利尻という北海道の離島を楽しむのはありですね。
ただ、僕が利尻を楽しむには車が必要で(※釣りに出かけたいため)。利尻にレンタカーはあるものの1カ月借りると高額になるといわれて……。
釣りとか目的がしっかりとしていると車じゃないと厳しいかもしれませんが、積雪時じゃなければレンタサイクルなども安く借りられるので、ある程度の移動は問題ないと思います。企業や個人事業主として年間通じて定期的に来られるのであれば、島内で車をリースすることもできるので、レンタカーよりは安くなるかもしれませんね。
なるほど。ハセタクさんは全国各地を移動されていると思いますが、その中での利尻はどんな印象ですか?
遠いですよね。めちゃくちゃ遠いけど、そこは(満足度を図る)六角形のチャートのすべてで高得点を狙う必要もないと思っています。島なのでどこもそうだと思いますが、移動においては正直、遠いなら「遠い」と言ってしまって良いんじゃないかと。
夏は新千歳空港から直行便があるのでいいですよね。夏以外だと移動にめちゃくちゃ時間がかかりますが、「それぐらいのことをしていく場所だ」「有り難さを感じながら行きましょうよ」という感覚にすれば、移動そのものは多少大変でもいいと思います。
なかなか飛行機が飛ばないとか、海が荒れるとか、そういうことには何度か行くと必ず引っかかってくるので、ネックではあります。でも、自然ってそういうものじゃないですか。
移動の問題も衣食住の問題と一緒で、これから多様になってくるニーズに対して、利尻が実験的に新しいチャレンジをしてくれるとしたらすごくおもしろい。カーシェアリングとかEVとか、例えばそういうアイデアに興味ある人が島に来て一緒に課題を考えることにつながったらめちゃくちゃおもしろいなと思います。
皆さんのように働く場所を求めて島を訪れる人のなかには、新しいアイデアやノウハウをお持ちの方もいらっしゃるので、島の環境をより良くするアイデアも生まれてきそうですよね。
ちなみに、島といえば人と人の助け合いも魅力ですが、大久保くんはどんなことで島の人に助けてもらいましたか??
いろいろありますが……。一昨年、ツギノバを出たところの坂道で、車が雪に埋まって出せなくなって……。
ヤバイ!と思っている間にホワイトアウトになって、本当にヤバイと思っていたら、役場の人が駆けつけてくれて車ごと掘り起こしてもらいました。それで、ありがとうございましたと言って走り出した30秒後ぐらいにもう1回埋まってしまい(笑)。通りかかった工事現場の人たちに助けてもらうということがありました。
自然にはかないませんが、その分、人のやさしさが沁みますね。
手作業で雪かきしている時も、除雪作業をやっている人が重機をこっちにめがけて突っ込んでくれて「慣れてないだろうから」と言って一発で雪をかいてくれたり……。助けてもらうことがめちゃくちゃ多いです。
冬場の滞在は大雪のような苦労もありそうですが、その分、島の人との縁は深まるように感じますね。
ですね。それで島の人と仲良くなってくると相談をされることもあって、最近、相談にのった人からは、お礼にめちゃくちゃおいなりさんとかコロッケとか差し入れしてもらって3日分くらい食いつなげましたね。そういうのがすごくおもしろい。
大久保君がちょっと大きくなっていくのはそのせいですか(笑)。
利尻といえば食も充実していますからね。しかしおいしいものの話はキリがなくなりそうなので真面目な話にもどります(笑)。
島にハマった3人と語る北国の島。利尻島×テレワーク(3)に続く
みんなの未来と利尻島内外をつなぐ交流スペース「ツギノバ」
利尻町定住移住支援センターツギノバ
北海道利尻郡利尻町沓形字日出町55
お問い合わせ
TEL:050-8880-6920
info★tsuginoba.com(★を@に変えてお送りください)
営業時間:9:30〜16:30
定休日:無休(年末年始等を除く)
https://tsuginoba.com/
\2022.3.15にオンラインイベントを開催します!/
テレワークを推進する企業や多拠点居住で働ける「場」を探している個人事業主の皆さんに向けて、3/15(火)に島×テレワークの魅力や、「利尻町定住移住支援センターツギノバ」(利尻町)に新しく誕生するシェアオフィス(月額賃料1.5万円〜)の物件案内を行うオンラインイベントを開催します。
当日はこの記事に登場した4人が登場し、記事のなかで語りきれなかった「島×テレワーク」の魅力はもちろん、働く人にとってのメリットやオフィス環境、賃料、住環境などの疑問に直接お答えします。
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