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レポート

【レポート】全国12島で未来を語らう「島々の若手の集い in 沖縄」

日本全国の12島より若者が集まり、島々の課題や未来について語らう2泊3日の合宿「島々の若手の集い」が2月上旬に開催された。プログラムを通して見えてきた島々の実情、課題、未来とは。この会のコーディネートに携わった本紙編集長 鯨本がレポートする。

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■日本全国12島より「島の若手」が集結。島々の実情・課題・未来について語った。

 日本全国の12島より若者が集まり、島々の課題や未来について語らう2泊3日の合宿「島々の若手の集い」が2月上旬に開催された。「島々の若手の集い」とは、国立大学法人琉球大学法文学部の研究プロジェクト「融解する辺境・島嶼(しょ)地域における新しい公共の創造」の一環として実施されたもの。プロジェクトの目的はグローバル化に伴うさまざまな社会環境の変化の影響を島嶼地域から捉え、有効策を講ずること。島々のネットワークと情報共有を通して、地域の課題解決のヒントを探った。

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■1日目 「島々が集う意義」「島々における6次産業化」

 1日目。琉球大学法文学部の本村真准教授の呼びかけにより、全国各地から13人の「島の若手」が沖縄本島に集った。最も遠い利尻島の高橋さんが自宅を出たのは2日前。乗り継ぎを経て沖縄入りした。合宿は各人各島の自己紹介にはじまり、離島経済新聞社より「島々の集いの意義」について説明。6,852島からなる日本は世界のなかの離島。島を知ることは日本を知ることにつながり、各島には異なる個性があることから、合宿を通して他島を知り、自らが暮らす島も再認識してほしいと呼びかけた。

 続いて、沖縄の島々で6次産業化に取り組むコープおきなわの石原修さんが講演。伊江島、粟国島、伊平屋島などでの商品開発の例を用いながら「商売では三方良しの考えが大事」「島々の事業では、中心になる人材が必要」と熱く語った。

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■2日目 「島々の魅力」プレゼンし「島々のセルフケア」を実践

 2日目は情報PRをテーマに、各島の「魅力」や「取り組み」について参加者がプレゼンした。利尻礼文サロベツ国立公園に指定される利尻島で生まれ育ち、現在も島で活動する高橋さんは、かつて島で行っていた海浜留学制度について紹介。

 世界農業遺産に認定される佐渡島の寺野さんは、30〜60代の有志による「たかちもんて会」での商品開発や後継者育成について説明した。『日本書紀』の冒頭に記される日本で最初に生まれた島ともいわれる沼島の森本さんは沼島の魚とモノを交換する「手魚舎(ちょうぎょしゃ)」の取り組みを紹介し、まぐろ漁を営む上原さんが生まれ育った沖縄最北端の伊平屋島では、周囲42kmの規模を活かして月夜のなか走る「ムーンライトマラソン」について話した。

 同じく沖縄・粟国島の波平さんは映画『なびぃの恋』のロケ地となった風景や、島で活動を行ううえでのモットーについてプレゼン。宮古島と石垣島の間に浮かぶ、多良間島に嫁いだ富川さんは、日本語にはない発音がある島の方言や「ゆいまーる(共同の精神)」について誇らしげに語った。

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 ここで関心を集めたのは利島。人口306人のうち約8割がIターン者であることから、Iターン者と地元との間で問題がないのか問われると「『よそものですから』は禁句。利島に住んでいる以上、利島の一員としてやっていっている」と、Iターン者が根付くヒントを語った。島の魅力について語った後は、島と島の連携プロジェクトについての話題もあがった。

 粟国島や多良間島では、沖縄県の小規模離島5島が協同する「おくなわ」事業を実施し、日本海の飛島、粟島、佐渡島では3島交流が行われている。小豆島はじめ瀬戸内海の島々に暮らす若者を集め「せとうち横串サミット」を開催している真鍋さんは、「やってみたことで、新しい関係性が生まれてきている」と言う。

 2日目の午後は「島々のセルフケア」として東日本大震災の被災地でも実施されている「TRE(※)」エクササイズを実習。自然災害やストレスに対しての対処法を皆で体感し、各島でのセルフケアの在り方についても話し合われた。

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■3日目 「島々のつながり」。行政や大学との連携について議論

 3日目は「島々のつながり」をテーマに、島どうしのつながり、行政や教育機関との連携について意見を交換。島々は人口規模が似ていても「1島1自治体」「1島2自治体」「本土の一部離島」「複数の離島で1自治体」など自治体の形態が異なり、「離島振興法」「沖縄特別振興法」など歴史的背景をもとに法律も異なる。これにより行政や事業予算の枠組みが異なるため、連携を図る場合はお互いの違いを把握する必要がある。

 「行政に期待すること」について話し合われたグループセッションでは、複数の島でひとつの自治体を構成する竹富島や弓削島から「自分たちでやるしかない」という意見が出た。島内に役場がないことから、竹富島が属する竹富町では公民館が主体となり、弓削島が属する上島町ではNPOや市民団体の動きが活発だと話した。

 「教育機関との連携状況」についてのセッション後は、利島が草刈りのため学生団体を招いた実績を発表。小さな島に悪影響がでないよう、事前に2度のレクチャーを行うなどプロジェクトの裏側を語った。飛島では東北広域文化大学との連携で協議会をつくり、飛島音頭を復活させた活動の一方、人件費が負担されない事務局運営の課題も語られた。

 大規模な域学連携事業を行う対馬では「島に大学はないけど、大学があるかのような状況をつくる」ことも念頭に、大学生や院生が3ヵ月以上の調査研究と実践を行うプログラムについて説明。高度な事業が実現される背景に、島内外の人材を取りまとめることができるキーマンの存在があることに、皆の関心が集まった。

 3日間の合宿終了後、参加者からは「島の規模や状況は違っても問題は同じであることを再認識した」「ここに生まれた波紋を大きなうねりに変えたい」という声が聞こえた。その言葉通り、インターネット上にはグループが設けられ「島の仲間」となった若手たちは、島々に戻った今も会話を続けている。このつながりから、きっと良い未来が築かれていくに違いない。

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■参加者プロフィール

高橋哲也(たかはし・てつや)
利尻町商工会青年部副部長。利尻島は利尻町と利尻富士町の2町1島。人口約
5,000人。島の課題は人口や観光客の減少とUターン者が不足していること。

飛島/山形県
渡部陽子(わたなべ・ようこ)NPOパートナーシップオフィス職員。人口約 230人、山形県酒田市の一部離島で酒田港から船で75分。課題は平均年齢69歳の 高齢化。

利島/東京
清水雄太(しみず・ゆうた)東京島しょ農業協同組合職員。利島村は1島1村。人口306人。Iターン者が約180人で40〜60代が中心。島の課題は住宅の整備。

沼島/兵庫
森本真理子(もりもと・まりこ)・大原浩(おおはら・ひろし) 地域おこし協力隊。沼島は南あわじ市の一部離島。淡路島から定期船で約10分。人口約450人。課題は漁獲高の低下と漁師の高齢化。

弓削島/愛媛県
藤巻光加(ふじまき・みつか)上島町しまおこし協力隊。上島町は6つの島から
なる6島1町。弓削島は人口約3,400人。課題は少子高齢化とそれによる高校の存続。

佐渡島/新潟
寺野俊夫(てらの・としお)たかちもんて会。平成16年に10市町村が合併した佐渡市は人口約60,000人。島の課題は年1,000人規模の人口減少と少子高齢化。

小豆島/香川
真鍋邦大(まなべ・くにひろ)小豆島町地域おこし協力隊。小豆島は小豆島町と土庄町の2町1島。小豆島全体の人口は約30,000人。島の課題は空家の活用。

対馬/長崎県
細貝瑞季(ほそがい・みずき)対馬市島おこし協力隊。対馬市は人口約34,000 人。韓国まで45.9km。課題は教育、人材、Uターン者の不足。

伊平屋島/沖縄
上原慎市(うえはら・しんいち)漁師。沖縄最北の島。1島1村の伊平屋村は人口約1,300人。課題は第一次産業の後継者不足。同級生27人中、島に戻ったのは3人。

粟国島/沖縄
波平雄翔(なみひら・かずと)粟国村集落支援員。多良間島出身。1島1村の粟国村は人口約700人。課題は島に良い人材がいてもコーディネートできる人がいないこと。

多良間島/沖縄
富川亜紀子(とみかわ・あきこ)地域活動。多良間島と水納島の2島からなる多良間村。人口約1,200人。課題は人口減少と島人自身が勉強できる機会の不足。

竹富島/沖縄
阿佐伊拓(あさい・たく) 遺産管理型特定非営利活動法人たきどぅん 職員。竹富町は有人9島1町。竹富島は人口358人。課題は祭りの担い手が少ないこと。


※TRE(Tension & Trauma Releasing Exercises)とは、交感神経と副交感神経のバランスを整え、心と身体を健やかに調整する「緊張・トラウマ解放エクササイズ」としてデービッド・バーセリ博士が開発。世界46カ国200万人が実施している。日本では東日本大震災後の2012年に始まり、4,500人以上が体験。自分自身の力で健やかさを取り戻す安全なセルフケアとしてNPO法人TRE Japanが全国でワークショップを開催している。

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