宮古島市(みやこじま|沖縄県)は、都市部の事業者などがICT(情報通信技術)を活用して宮古島で働く「テレワーク」や「サテライトオフィス」の誘致を推進しており、既に数社の島外企業がサテライトオフィスを開設したり、個人事業主がテレワーカーとして働いたりと、島へ移住するIターン者のほか、Uターンを希望する出身者の雇用も生まれています。1月に東京都内で催された「テレワーク@宮古島未来会議 in Tokyo 2017」の様子をお伝えします。
宮古島テレワークの可能性を話し合う公開会議
ICTを活用し、場所や時間にとらわれず柔軟に働くテレワークや、企業が本拠地から離れた場所に設置するサテライトオフィスの推進は、若者の地方定住や交流人口増による地域の活性化につながるとして、近年期待されています。
沖縄県の宮古島では、2016年度から宮古島市が雇用を創出し人を呼び込むためのテレワーク推進とサテライトオフィス誘致に乗り出しました。島へIT企業の代表らを招いたモニターツアーを実施し、島でのテレワークの実証や、旧庁舎など空き施設活用の可能性を検討してきました。
2017年1月、宮古島市の担当者と「テレワークで宮古島を面白くしたい!」との想いで集まった有識者やIT(情報技術)事業者、モニターツアーの参加者らが集まり、宮古島のテレワークの可能性を話し合う公開会議 「テレワーク@宮古島未来会議 in Tokyo 2017」が催されました。
会場となった千代田区の「3331 Arts Chiyoda」は、廃校となった旧練成中学校を利用して誕生した民営のアートセンター。館内には、アートギャラリーやショップ、オフィス、カフェなどが入居し、展覧会やワークショップ、講演会など文化芸術活動の拠点として利用されています。
写真左:古性(こしょう)のっちさん|写真右:久貝順一さん
当日の参加者は、30名ほど。「今日の参加者は、IT系の企業の代表の方や、テレワークに関心があるフリーランスの方が多いです」と、受付の古性(こしょう)のっちさん。古性さんもフリーランスで、世界を旅しながらWebデザイナーやライターとして働いていて、宮古島でもテレワーク経験があるそうです。
公開会議の前段では、宮古島市企画政策部の久貝順一企画調整課長が、事業背景について説明。
少子高齢化が進行する宮古島市では、Uターン・Iターン人材を島に呼び込むため、雇用創出を求める声が高まってきたことから、テレワーク推進とサテライトオフィス誘致の可能性を探る調査事業がスタートしました。
働く人が自然や人との絆を通じ充電できる場をつくる
続いて、「サテライトオフィス@宮古島」誘致可能性調査業務を受託する株式会社リチャージ代表の志水哲也さんが登壇し、宮古島での起業やサテライトオフィス開設に至った背景を語りました。
志水さんは名古屋を拠点に長年Web制作会社を経営してきましたが、納期に追われながら次々に新しい技術に追いつかなくてはならないIT系の仕事は、精神的な負荷が高く体調を崩す社員が多かったといいます。
「働く人が自然の癒しや人々との絆を通じて充電できる場所をつくりたい」との想いを抱いた志水さんは、2012年に初めて宮古島を訪れ、島がもつ美しい自然や人情と都会のクリエイターがもつ技術やノウハウを交換することで、それぞれの課題を解決できるのではと考えました。
そして、2013年に宮古島の地元メンバーやIターンのメンバーと共にリチャージを起業。島で開催されるトライアスロン大会の運営を情報技術でサポートしたり、島の農家さんたちへ向けたネットショップ講座や、宮古工業高校でのプログラミング出前講座など、ITやクリエイティブを活かした地域貢献を続けてきました。
写真左:志水哲也さん
また、2016年には、志水さんが代表を務めるWeb制作会社タービン・インタラクティブの宮古島サテライトオフィスを開設。スタッフが移住したほか、Uターンした出身者の雇用も生まれています。サテライトオフィスは、伊良部大橋の架橋に伴い、フェリー乗り場としての用途が縮小されたマリンターミナルの一室をリノベーション。スタッフが挑戦したい夢や家庭事情と両立できるよう、短時間勤務など柔軟な働き方ができるようにしていて、8割の方が4時間勤務を選択しているそうです。UIターンするスタッフの住まいの心配がないよう、男女別のシェアハウスも整備しました。
2017年春には、東京に本社を置く株式会社KDDIウェブコミュニケーションズが、宮古島サテライトオフィス開設を予定するなど、新しい働き方の輪が広がりつつあります。志水さんは「宮古島を、シリコンバレーのようにIT企業が集まるCoral Valleyにしよう」と呼びかけました。
(後編に続く)
【関連サイト】
テレワーク@宮古島