【新島村ふれあい農園 小林さん月報#9月】「島のひと」とは、新島で生まれたひと。「国のひと」とは、新島の外から来て新島で住んでいるひと。「旅のひと」とは、新島にしばらく住んで、いずれ島から離れていくひと・・・。島に移住して12年の小林さんが気づいたあることについて。
9月中旬、知人が主催している
「里都プロジェクト」のフォーラムにてお話する機会をいただいた。
テーマは「週末は離島暮らし(新島)」、
島がつなぐ都会と新島の話が主な内容だった。
会場には20名ぐらいの方が集まり、それぞれ
島の出身の人、将来島に移り住むことを計画している人、
島に興味を持っている人、また島ではないけれど
地域活動に関わっている人など様々だったが、
その全員に共通していることは、自分らしいアクションを起こしたい、
起こし続けたいという想いを持っていることだった。
こういう方たちと出会い、未来を語りあうのは
実に楽しく意義のあることで、活動に参加させていただくのも
自分の「役割」だと感じている。
ところで数年前になるが、
新島のある飲み会で横に座った島の方から興味深い話を聞いた。
どうやら「新島の住人は3つのグループに分けることができる」そうで、
そのグルーピングの考え方は、広く島民に共有されているのだという。
その3つとは、
「島のひと、国のひと、旅のひと」とのこと。
「島のひと」とは、新島で生まれたひとのこと。
「国のひと」とは、新島の外から来て新島で住んでいるひと(死ぬまで)のこと。
「旅のひと」とは、新島にしばらく住んで、いずれ島から離れていくひとのこと。
そう言われて自分の周りの新島で暮らす人々を見渡してみると、
すべてこのグループに分類することができるのである。
12年前、新島に移り住んだ僕は
「この島の人になろう!この地域の役に立とう!」という気持ちでいた。
だから消防団にもはいり、地域活動にも積極的に参加し、人間関係を築き、
与えられたふれあい農園の仕事に自分の持てる時間の多くを費やした。
あまりにも家庭を振り向かないので、
妻から「我が家は仮面家族だね」なんて言われながら・・・。
けれど「この島の人になろう!この地域の役に立とう!」や、
行動を突き詰めようとすればするほど自分らしさを失い、
息苦しさを感じるようになっていった。
数年前、あの「島のひと、国のひと、旅のひと」の話を聞いたとき、
僕はハッと気がついた。
僕は島のひとにならなくていいんだ。いや、「なれないんだ」と。
それならば、国のひとでも旅のひとでもいい、
自分のスタイルとスタンスでこの地域に係われればと・・・。
島のひとには島の人の役割があり、
それ以外のひとにもそれぞれの役割がある。
そう思ったとき、気持ちがすっと軽くなるのを感じた。
僕は最近、「島づくり」にはこの3つ以外に
もうひとつ別のタイプの役割が大きく働いていることに気がついた。
それは新島へ時々、来てくれる人であったり、
新島の魅力を高めるため何かをしたいという島外の人であったり、
またこの新島だけでなく島々を繋げようとしてくれる人であったり・・・。
こういう島の外に住みながらも島のことを想い、
アクションを起こしてくれる方々の存在である。
具体的には、新島のビーチで毎夏開催されるWAXの活動や、
コミュニティーカフェ&宿のsaroの存在、
またビーチウェディングや農業のブランディングの動きなどそうだろう。
そしてこの離島経済新聞社や
ビオアイランドネットワークなどの島々を繋げる活動が、
島についての貴重なコミュニケーションの場となっている。
僕は、こういうタイプに人たちのことを「風のひと」と呼びたいと思う。
そしてこの風のひとたちと、島の住人たちが繋がり共に動くことで
活動が増幅してことを僕は観察し、また身をもって感じている。
島・国・旅・そして風のひとが、
ビジョンを共有し互いの役割を果たすとき、新しい価値が生まれ、
その島の魅力を引き立て、未来の扉を開いていくのだと思う。
だから今、僕は自分なりの役割を果たしていきたいと考えている。