隠岐郡海士町(あまちょう|島根県)は、離島という枠を超えて、全国の地域づくりのトップランナーとしても知られる。財政破綻の危機から全国の熱視線を集める地域づくりの先駆者となった海士町の島づくりについて取材した。(写真提供:海士町)
※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。
島の生き残りをかけた「海士町自立促進プラン」
隠岐郡海士町は、離島という枠を超えて、全国の地域づくりのトップランナーとしても知られる。
1950年代に約7,000人だった町の人口は、2000年に約2,600人まで減少。町の財政も厳しく、一時は財政再建団体になることも予想されていた。
2002年に初当選した山内道雄町長(※1)は、島の存亡の危機に立たされるなか、島の生き残りをかけた「海士町自立促進プラン(※2)」を策定。
※1山内道雄町長……島根県海士町生まれ。NTT通信機器営業支店長、(株)海士総支配人等を経て2002年より現職。著書『離島発 生き残るための10の戦略』(NHK出版)や、共著『未来を変えた島の学校』(岩波書店)。
※2海士町自立促進プラン……海士町住民代表、町議会、行政が一体となり2004年に策定した攻めと守りの行財政改革戦略。
その大きな柱となったのが、主要産業の漁業を中心とする産業振興や、島前地域で唯一の島根県立隠岐島前高校の存続だった。
島の素材に付加価値をつけ雇用を創出
この状況に貢献したのが移住者だった。島の食卓では普通の存在だったサザエ入りカレーのレトルト品を開発し、町民は食べないという岩牡蠣をブランド化し、首都圏エリアで販売。こうした事業が軌道に乗り、雇用創出と外貨獲得の門戸が開いた。
一方、水揚げされた魚介類は出荷時に鮮度が落ち、漁業者の収入向上にはなかなか結びつかなかった。そこで同町は2005年、第3セクターを設立し、魚介類の味と鮮度を落とさず凍結できるよう「CAS凍結センター(※)」を設立。魚介類に付加価値を付け、国内外に出荷するなど販路拡大しながら、町内の雇用創出にも結びつけた。
※CAS凍結センター……細胞を壊さず再生するCAS(セル・アライブ・システム)技術を活用した急速凍結装置を導入。第3セクターである「㈱ふるさと海士」が運営。
(記事後編に続く)