韓国との国境離島・対馬島では、大学生、教員、住民、活動団体らが共に地域の課題解決や地域づくりに取り組んでいる。対馬で盛り上がる域学連携プログラムについて担当者に聞いた。
■島全体が学びのフィールド。全国から大学生を受け入れる対馬島の域学連携
本土5島を除いた離島の中では3番目に大きい対馬島(つしまじま|長崎県対馬市)は、面積696.44平方キロメートル、32,669人が暮らす島。韓国との直線距離は約50キロメートルという国境離島だ。島の約9割を占める山林には、ツシマヤマネコをはじめとした希少野生動物が生息。大陸との交流により発展してきた独自の文化など、多様な資源がある。
対馬島では2013年より、域学連携(※)を推進。資源豊富な島全体を大学のキャンパスに見立てた「フィールドキャンパス対馬学舎」として、全国から大学生を受け入れている。2014年度は全国から約460人が来島。学生の専攻分野は生態学、経済学、観光学、建築学などさまざま。
※大学生と大学教員が地域の現場に入り、地域の住民やNPO等とともに、地域の課題解決または地域づくりに継続的に取り組み、地域の活性化及び地域の人材育成に資する活動(総務省ホームページより)
2015年度は環境保全、教育、福祉、産業といった区分ごとに、「婦人グループと連携した六次産業化支援」や「鳥類保全のための生息環境づくり支援」など約20のプログラムが用意され、学生らは希望のプログラムに参加する。
対馬市島おこし恊働隊の細貝瑞季さんは、来島する大学生と島の子どもたちが交流できる場をつくり、進路相談や郷土について考える機会を創出する「対馬こども未来塾」プログラムを担当。島に第3の学びの場を創り、家庭・学校教育のサポートを行うことがねらいだ。
細貝さんは参加する学生に対して、「地域づくりに興味があっても、現場で学べる機会は少ない。ぜひ島で離島の教育の現状について学んでもらいたい」と話す。対馬には専門学校や大学などの高等教育機関がないことから、来島する大学生は保護者から進路や入試情報について相談されることもあるという。
また、5泊6日の短期日程で、古民家再生や耕作放棄地の開墾などを実際に行いながら、地域づくりについて学んでいくプログラム「島おこし実践塾」は、域学連携の一環として、2013年からスタート。対馬北中部の志多留(したる)・伊奈(いな)集落で実施されている。
同プログラムへ参加した経験を持つ西山遥さんは「農業を専攻している人、建築を専攻している人など、実践塾には全国からいろんな学生が参加する。多様な学生と一緒に作業をするなかで、この人はこんなことを考えているんだと、実感することがあった」と話す。地域づくりを考え、さまざまなバックグラウンドを持っている仲間に出会えることも魅力の1つだ。
域学連携コーディネーターを担当する対馬市役所の前田 剛さんは、「対馬に来る学生は、基本的に旅費は自己負担。それでも来たいという熱意のある学生が島に来ていると感じる」と話す。
来島した学生がその後、地域おこし協力隊や集落支援員となり、継続して対馬島に関わるケースもでてきている。一方で、前田さんは「地域のことを知っただけでも重要なこと。たとえ直接地域に関わらない職に就いても役に立つはず」と話す。
「他の島や中山間地域でも同様だが、島には10年、20年先に都市が直面するいろんな課題がある。それを対馬に来て肌で感じて欲しい。そして対馬で生きる人の姿を見てほしい」(前田さん)。現在、フィールドキャンパス対馬学舎では、2015年度に来島する学生や研究者を募集している。域学連携プログラムの発展に期待したい。
【関連サイト】
フィールドキャンパス 対馬学舎 ウェブサイト
>> 各種募集ページ:域学連携に関するイベント情報