つくろう、島の未来

2024年12月08日 日曜日

つくろう、島の未来


島旅フォトライターのいづやんです! 2022年10月10日、「魚(とと)の日限定オープン! プロが選ぶ3島直送のおさかなレストラン」(主催:特定非営利活動法人離島経済新聞社)なるイベントが開催されると聞き、「島のおいしいお魚が食べられるなら行かなければ!」と神保町まで足を伸ばしました。その模様をお届けします。

※このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

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3島の海の幸を目利きのプロが厳選。ほかでは味わえない食材が集う

「魚(とと)の日限定オープン! プロが選ぶ3島直送のおさかなレストラン」では、佐渡島(さどがしま|新潟県)、隠岐諸島の中ノ島(なかのしま|島根県海士町)、奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の3島から、島が誇る「魚の目利きのプロ」が選んだ食材を東京に直送してもらい、島で親しまれている食べ方や、料理人うすいはなこさんによるレストランアレンジ料理が提供されました。

東京ではなかなかお目にかかれない島の食材に加え、そのお魚に合う島のお酒も用意されるとのこと、期待が高まります。

イベントは12時と17時の1日2回開催ですが、どちらの回も満員御礼。参加する皆さんもきっと、見たことなくておいしい島の食材が気になっているのでしょうね。

目利きのプロとお酒の紹介

イベント当日、会場に入ると、ゲストシェフのうすいはなこさん、助っ人に「築地魚河岸北田」顧問・小川貢一さんのお二人が、アイランドキッチンで料理の準備を進めている姿が目に入ってきました。

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三枚に下ろされたきれいな赤身の魚や、何やら巨大なカニが鍋に陣取っています

昼の部開始の12時前には、20席のほとんどに参加者の方が着席。会場を満たす料理の香りに、早くも胃袋が刺激されます。主催の離島経済新聞社の挨拶で、このイベントは日本財団の海と日本プロジェクトの一環として「島の魚のおいしさをよりよく皆さんにお届けしたい」というミッションのもと企画された旨の説明がありました。

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島々の風景をスライドに写しながらのオープニングトーク

今回、佐渡島、中ノ島(海士町)、奄美大島で捕れた海の幸を各島の目利きのプロに選んでもらい、このイベントのために送ってもらったそうです。各島の目利きは以下の通り。

・マルヨシ鮮魚店(佐渡島)
・島食の寺子屋(海士町)
・あまみの魚たち(奄美大島)

「普段東京であまり目にすることがないような食材もあると思いますので、ぜひ楽しみにしていただけたら」と挨拶を締めくくりました。いよいよイベント開始です!

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坂井さんおすすめの島酒3種

日本酒ソムリエ・坂井渉さんから、今日の魚に合う佐渡島・加藤酒造の日本酒「金鶴 大吟醸」、隠岐酒造の日本酒「承久の宴」、奄美大島の黒糖焼酎「まんこい」の説明がありました。

素材と魚愛がすごい!シェフ陣の紹介

続いて、本日のメインシェフで料理家のうすいさんや、助っ人の小川さんの自己紹介タイム。

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本日のメインシェフのうすいはなこさん

全国的に時化の中、島のみなさんが送ってくれた新鮮な魚介を前に、うすいさんから本日の魚と料理のポイントが解説されました。
「こちらの市場でもなかなか目にすることがないものがたくさんありました。目にするものでも、例えば佐渡のメバルなどは、こっちのものとは味も匂いも違う。あまり華美にならないよう、素材の味を生かしてシンプルにお料理させていただきました」

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頼もしいアシスタントは、築地魚河岸北田 顧問 小川貢一さん

小川さんは「日本の島には、その島ごとにおいしい魚がありますが、豊洲には入らないものもたくさんあります。その中で地元で食べられているものに、とても興味があります」と島の魚に興味津々。

お二人の挨拶からは、島から届いた素材の良さと魚愛が伝わってきて、気分が盛り上がってきます!

スペシャルゲストの海士町の皆さんを紹介しつつ、それぞれの島を説明

続いて、今回のスペシャルゲストとして、海士町の魚を送ってくださった「島食の寺子屋」コーディネーターの恒光一将さんと卒業生の岡村恵さん、定置網漁師の大窪諒慈さん、のお三方が紹介されました。

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写真左からコーディネーターの恒光一将さん、定置網漁師の大窪諒慈さん、卒業生の岡村恵さん

恒光さんや岡村さんから、海士町と島の海や山の幸に触れて料理を学ぶ「島食の寺子屋」を紹介いただきました。2013年から島で定置網漁師をされている大窪さんからは漁のお話も。海士町は訪れたことがあり、魚やお米がとてもおいしかったので、島の食材から得られる学びは大きいだろうな、と羨ましく思えました。

ゲスト紹介後には他の2島、佐渡島のおいしい海の幸と奄美大島の自然や「マルヨシ鮮魚店」について、離島経済新聞社から紹介いただきました。

島から届いたぴちぴちの魚たちを、素材を生かしておいしく調理

島や魚のお話を聞いているうちに、参加者のテーブルには本日の料理が並び始めました。

「先にお刺身をご用意しています。手前が佐渡の赤メバルの昆布締めです。メバルは届いた時にはきちんと処理されていて、かなり鮮度のいい状態でした。普通東京なら煮付けになる魚ですが、今日は昆布締めにしました」とうすいさん。

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北陸は昆布をよく使う「昆布県」で、富山、石川、新潟付近の人にとっては、昆布締めは当たり前の日常食とのこと

佐渡で捕れたメバルを地元で馴染み深い昆布締めに。しっとりやわらかそうな白身の魚は壱岐のメダイです。

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手際よく魚をさばいていく小川さん

メバルの昆布締めは、こりこりとした食感にほんのりと昆布の香りがのってとてもおいしい! 鮮度がよいのと昆布の香りで磯臭さをまったく感じません。メダイの刺身も淡白ながら上品な甘みがありクセがありません。

続いて並べられたのが「白イカの和え物」。

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白イカは海士町での呼び名で、ケンサキイカのことだそう

「海士町から届いた白イカは、塩とごま油のみで味を付けています。付け合せはキュウリ、セロリ、生姜の細切り。白イカは歯ごたえがすごく大切で、切り方が大事なお料理です」とうすいさん。

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白イカは、細さや縦に切るか横に切るかで本当に歯ごたえが変わるそう

ごま油の香りにイカの甘みが広がって、コリコリしたイカの歯ごたえと野菜のシャキシャキした食感が確かにおいしい!

続いて、丸い深鉢に盛られたお魚がやってきました。

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カラリと揚げられた赤メバルの揚出し

先程からキッチンでいい音と香りを立てて揚げられていた赤メバルの揚出し。もみじおろしの代わりに新潟のかんずりを混ぜた大根おろしと一緒にいただきます。添えられたピーマンも新潟産のもので、新潟づくしのひと鉢です。

ぷりぷりに揚げられたメバルを出汁にくぐらせてほおばると、広がるのはじんわりとした旨味。無心で食べ切りました。

島ならではのカニと、海士町名物どんぶりがお出まし!

「次は奄美大島のアサヒガニです。茹で蒸ししたものに、大分県の樹上完熟かぼすを添えています」

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完熟かぼすを絞っていただきます。青唐辛子のスライスも添えられていて、味変もオススメ

会場に入った時に大鍋で茹でられていたのはこのカニでした! 見た目はごついのに意外とあっさりとした上品な味わいで甘みもあって絶品です。

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アサヒガニは同じ奄美群島の加計呂麻島(かけろまじま|鹿児島県)で食べて以来なので、感激です

続いて、海士町の寒シマメの肝醤油漬け。ご飯も一緒に出されました。うずらの卵はお好みで。これは「寒シマメ肝醤油漬け丼」ですね。

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寒シマメ肝醤油漬け丼は『全国ご当地どんぶり選手権』でランク入りしたそうです

「シマメとは隠岐でのスルメイカのことで、海士町や隣の西ノ島(にしのしま|島根県)は、昔からこのイカの名漁場なんです」とは、このイカを捕った大窪さんの言。隠岐の島前地域の海底地形が南下してくるスルメイカを島前に誘導する形になっていて、イカ好漁場の要因なのだそう。西ノ島にはイカ寄せの浜があり、浜のそばにはかつてイカに噛みつかれた女神が祭神の「由良比女神社」があります。

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丁寧な包丁さばきで寒シマメを仕込みます

寒シマメ肝醤油漬け丼、スルメイカの濃厚な肝の旨味と身の甘みをうずらの卵がまとめてくれて、ご飯がいくらでも進みます。

汁物はアサヒガニの味噌汁。カニの卵や味噌が溶け出して、コクのある汁になってこれまたうまい。

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北と南、新潟の味噌の3つを合わせているそう。「味噌は離れているほど合わせた時においしい」とのこと

「アサヒガニは結構あっさりしているので、昆布出汁と合わせて煮てあります」とうすいさん。

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島の魚は、島で触れてみると料理の世界が広がる

すべてのメニューをいただいて満腹となった参加者を前に、うすいさんが最後に料理人として魚との向き合い方をお話ししてくださいました。

「その島や町の何がおいしくてどう食べているかを知ると、どう料理したらいいかというのが見えてきます。ぜひ皆さんも、島に行ったら漁師さんに聞いたり海に行って何がどう捕れているのかを知ると、合わせる食材や料理も頭に浮かんでくるんじゃないでしょうか」と締めくりました。

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「このおいしい魚たちが捕れる海と島を見てみたい」、そう思わせる魅力ある料理の数々。日本を取り巻く多彩な魚食文化に触れられた、そんなイベントでした。3島の中で僕がまだ行ったことがない佐渡に行って、島の魚を堪能したいものです。

参加者の声

イベント参加者のアンケート回答より、ご参加いただいた方々の声を一部紹介します。

・島はほとんど行ったことがないのですが、色々知ることが出来て面白かったです。優しいお料理でとても癒されました!
・全てのメニューがとてもおいしく、色々な話が聞けて楽しかったです。
・島への理解、食材の豊かさを知る機会を得ることができました。
・お料理もお酒もお話も、とても楽しかったです。
・この度は面白いイベントを企画いただき有難うございました!是非また島の魅力を知りつつ、おいしい食事とお酒を楽しめる会を主催していただければと思います。
・島の方々に直接会えお話も聞け、素晴らしい貴重な機会をありがとうございました! 映像も駆使し分かりやすい、とても温かで和やかな会でした。
・初めて参加したのですが、とても有意義でおいしいひとときを過ごすことができました。また魚食のイベントをお願いしたいと思います。

離島経済新聞社では、今後も島々の魚食をたのしむイベントや、島々で働く海の仕事人に話を聞くウェブ連載「島々会議」などを通して島々の魚食の魅力を発信していきます。どうぞご注目ください。


【魚(とと)の日限定オープン! プロが選ぶ3島直送のおさかなレストラン 概要】

日程:2022年10月10日(月・祝) 第1部:12時~14時 / 第2部:17〜19時
開催場所:パティア神保町店 東京都千代田区神田神保町3-2-9 塚本ビル5F
参加人数:各回20人
出演者:
日本料理家 うすいはなこ
魚のプロ(助っ人) 小川貢一
中ノ島(海士町) 島食の寺子屋 コーディネーター 恒光一将、卒業生 岡村恵、定置網漁師 大窪諒慈
協力:
マルヨシ鮮魚店
(一社)佐渡観光交流機構 (佐渡島)
島食の寺子屋(海士町)
あまみの魚たち(奄美大島)
司会:矢吹飛鳥(離島経済新聞社)


この企画は次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

     

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