つくろう、島の未来

2021年12月06日 月曜日

つくろう、島の未来

日本の島々は、知る人ぞ知るお魚天国。島々会議006では、島で漁業・水産業に従事する「魚食を支える島の仕事人」にお話を伺います。6組目は長崎県西海市の島に注目。江島(えのしま)、平島(ひらしま)のお二人が登場します。

島々会議006|6組目プロフィール

江島/柏木世次(かしわぎ・せいじ)
2010年、和歌山県より妻、小学5年生(当時)の長男とともに江島に移住。現在は漁師となった長男(18歳)、次男(中学3年)、三男(中学1年)、四男(小学5年)と家族6人で暮らす。2019年に江島水産株式会社を設立。島の近海でイセエビなどの漁を営みながら、移住支援や新規漁業者の就業支援など、地域づくりにも積極的に取り組む。
>>江島(蠣ノ浦大島|西海市)の概要


平島/中邑清敬(なかむら・きよたか)
1950年、平島の漁師の家に生まれる。幼少期より家業を手伝い、工業高校の機械科を卒業後、東京でIT技術者として働き、25歳で平島に帰島。長崎県内有数のイセエビ漁獲量を誇る平島でもトップクラスのベテラン漁師。平島への移住支援や新規漁業者の育成にも精力的に取り組んでいる。
>>平島(蠣ノ浦大島|西海市)の概要

Q1.携わっているお仕事の内容を教えてください。

私と長男、それぞれの船でイセエビをメインにタイ、イサキなどの漁を行っています。長男は、小学生の頃から私の漁を手伝い、島の中学を卒業し「高校へは行かない。島で漁師になる」と宣言。そのまま漁師の道へ進みました。
漁の他にも自分たちの経験を生かして、移住支援や新規漁業者の就業支援など、島の地域づくりにも家族で関わっています。

江島唯一の学校、江島小中学校

平島周辺は、南からの暖流と北からの寒流がちょうど合流する辺りで、水深40メートル程の水域に、多種多様な魚が流れ込んでくる好漁場です。きれいな海は海水の味も良く、製塩すると旨味たっぷりのおいしい塩ができるんですよ。
この海で、春・夏はイセエビの刺し網漁(イセエビ禁漁期はイサキの夜釣り)、10月から2月いっぱいくらいまでクエの延縄(はえなわ)漁をしています。それで充分稼げているので、冬はブリ、ヒラマサ、サワラのトローリング、春・秋はタイ、キジ、ハタの一本釣りなどを楽しみ半分でやっています。

きれいな海で育った平島のイセエビは味も評判

Q2.日本人の食卓に並ぶ魚食を支えるお仕事をされているひとりとして、ご自身のお仕事で感じる「やりがい」「楽しさ」「面白さ」を教えてください。

島で漁師として働く私の姿を見て育った長男が「島一番の漁師になる。島を担いでいくつもり」と言って同じ道を選びました。
長男が自分の船に乗り、汗を流す姿に下の子たちも「兄ちゃんかっこいい」「僕も島で漁師をやりたい」と憧れ、意見が違ったり喧嘩をすることがあっても長男を尊敬し、長男も弟たちの面倒をみています。そんな子どもたちの姿を見ていると、親として、いい子らに育っているなと、うれしくなります。

4男の小学校入学式にて(提供:柏木世次さん)

努力が成果とダイレクトに結びつくところ。その分、責任は自分で負わなければならないけど。でも、失敗は成功のもと。そこから何を学んで、次に活かすかで違いが出てくるんです。私は自分で設計した船に乗っていますが、仕事もしやすく、スピードも十分出る。お金をかけて投資した分、しっかり回収して利益を上げています。

Q3.日々のお仕事のなかで、特に好きな仕事や作業があれば教えてください。

海では潮の流れや波があって一つとして同じ日はありません。ボーッとしても魚が捕れるわけじゃないから、工夫する。この「獲物を捕る」おもしろさは、人に備わった本能だと思います。漁師仲間には、農業にハマっている人もいる。そっちは「ものを育む」本能。島の暮らしには、人が原点に還ることのできるものがいっぱい詰まってます。だから楽しいんです!

江島のイセエビ漁

考えること。色々な機器を船に搭載していますが、機械によってはどうしても狂いがあります。実際の状況や経験と照らし合わせて、答えを見つけるのがおもしろい。判断は儲けにも直結します、読みが当たれば水揚げ量にはね返ってきますからね。
陸にいるときは、フローチャートを描いて、あらゆるパターンとその対処法を準備しています。漁でなくてもどんな仕事でも、考える力を育んできたかどうかで後々変わってきますよ。

船上の風景

Q4.日々のお仕事のなかで、特に大変な仕事や苦手な作業があれば教えてください。

漁に関しては特にありません。
地域づくりの活動では、土地の確保が課題になっています。新たに島に定住するにも、島起こしをするにも、土地が必要になりますが、島の土地は相続をせず、子孫や親類が管理者になっているところがほとんどのため、権利関係が複雑で、土地売買のネックになっています。地域の事情を汲んで、特区扱いにしてもらうなど、何らかの手立てが必要だと感じています。

柏木さんの好きな江島の風景

漁師は自分が好きでやっている仕事なので、大変とか苦手と感じたことはありません。

Q5.ご自身が暮らしている島で生きる日々のなかで、特に「いいなあ」と感じる瞬間を教えてください。

かつて、クジラ漁が盛んだった江島には『江島くじら唄』という民謡があります。だんだん歌える人が少なくなってきましたが、うちの子どもたちが受け継いで歌っています。市の行事などで披露する機会もあり、この唄を聴いていると、漁師の島らしさを感じさせてくれて、素敵な文化だなぁと感じます。
またほかにも、漁の様子なども撮影し、島のなくしたくない文化を継承していけるよう、映像をアーカイブしています。

船の上では気が張っている分、仕事を終えて、夫婦で食卓を囲み、妻の手料理を食べてくつろいでいるときが最高ですね。島の男は、そんな人が多いんじゃないかな。

かつて平島にあった石切場でつくられていた、紙の原料をすりつぶすためのパルプストーン

Q6.20年後の未来を展望したとき、ご自身の仕事あるいは島にとって必要だと感じている事柄があれば教えてください。

島唯一の江島小中学校は、2010年度に中学生1人が卒業してから、うちの子どもたちが通うだけ。島では、学校は子どもたちが勉強するだけでなく、運動会や文化祭などの学校行事から、江島くんち、恵比寿祭り、金毘羅祭りなど、島の伝統行事まで、住民が集う中心的な場になっています。学校の存続は島の暮らしを守ることに直結するため、子育て世代の移住支援が急務だと考えています。

柏木さんの好きな江島の風景

今71歳ですが、常に今がベストだという気持ちでいます。漁師の仕事は命ある限り続けていきたい。
島の漁師は高齢化が進んでいますが、仲間同士助け合って漁をしています。そのために、これからも島で漁師になってくれる仲間を募る活動を継続し、後継者を増やしていきたいです。

網の手入れをする中邑さん(平島)

Q7.西海市の島ならではの魅力を教えてください。

西海市は、島の暮らしを守るために一緒に取り組んでくれる自治体です。私たち家族が移住した時も、小中学校を休校にしないよう尽力してくれました。
江島にはコンビニや自販機はないし、商店が一軒と簡易郵便局があるのみです。何もないところですが、不自由も慣れたら楽しい。それは自分たちで工夫して住みやすい島に変えていけるということでもあるんです。

柏木さんの好きな江島の風景

平島は、一人ひとりが自分らしく「節度のあるワガママ」でいられる島。言い換えると、個性的な人が多いけれど、それでいて協力し合えるのが島のいいところ。例えば、台風の後には、連絡するでもなく皆が自然と集まり、適材適所で片付けや機械の修理にまわります。それは、馴れ合うわけでもなく、日頃からお互いを見ている関係性だからできること。都会のような変な気苦労がないから、島に移住して漁師をやってみたいような人には、ここは合ってるかもよ!

平島の漁師仲間と中邑さん

Q8.島が大好きなリトケイ読者の方へのメッセージをお願いします。

江島の人は70〜80代が中心で、恥ずかしがり屋で人見知りな方が多いです。最初はよそよそしくて寂しく感じるかもしれないけれど、一度心を開くと、とても温かい人たちです。私の子どもたちは周りのお年寄りに可愛がってもらって、人をいたわることのできるいい子に育ちました。人として暮らす、人を育てることを考えるなら、ここはいいところですよ。

イセエビ漁に励む柏木さんの長男

島の漁師は一人ひとりが船主であり社長。だからこそ、自分で考え、自分らしく仕事ができることが醍醐味です。加えて、平島周辺の海は魚種も豊富で漁法もさまざま。常に考えながら漁をすることに楽しみがあります。
島の暮らしは都会ほどの便利さはないかもしれませんが、不便さも楽しみながら、平島らしい島の漁業に魅力を感じ、漁師を仕事にしてくれる仲間を待っています。

海上から見る平島の島影

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