つくろう、島の未来

2024年04月19日 金曜日

つくろう、島の未来

【イベントレポート・龍宮学校 後編】島人とアーティストが先生となり、島ならではの特別な授業を行う4日間だけの学校『龍宮学校』。人口30人の鵜来島に、いよいよ生徒たちが集まりました。カリキュラムは「冒険探検学」「陶芸」「釣り」等、島の環境や文化をベースに、島が好きの皆で練り上げたものばかり。4日間の開校の様子を、企画者の一人である隊長檸檬さんがレポートします。

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いよいよ開校、龍宮学校

こんにちは、隊長檸檬です。

鵜来島で行われた4日間だけの『龍宮学校』、開催レポートの後編をお送りします。
(前編はこちら

開催当日の朝 6:05分、およそ20年前に廃校になった校舎に、起床の鐘が鳴り響きました。
おじいちゃんおばあちゃんたちはいつものように、とっくに校舎の入口に集まっていて和やかに井戸端会議中。眠い目を擦る、前日に集まった生徒達を笑顔で迎えてくれます。生徒たちはラジオ体操、朝食のあと、「龍宮学校」の朝礼が始まります。

♪わーれーら〜なーかーよしー うーぐーるーの子〜♪

この校歌は、廃校になる前の小学校で実際に歌われていた校歌です。
歌い終わると、どこからか拍手が。日陰でおしゃべりに集まっているおばあちゃんたちでした。

「校歌を歌ってくれたことが、本当に嬉しい」「懐かしいねぇ」

音楽室に大きく貼られた歌詞は、とっくにビリビリになっていたので、この日の為に、区長さんが古い楽譜を手に入れてくれていたのです。
「もう忘れた!歌えん」と、教頭先生(宮本さん)は大きく笑いながらも、一緒に歌ってくれました。

鵜来島でしか受けられない授業の数々

龍宮学校の授業は、鵜来島でしか実現できない、不思議な授業ばかりです。

例えば、「そうさくの日」は鵜来島でしか創れないものを作ります。
「ぼうけんの日」は鵜来島でしかできない探検、
「てつがくの日」は鵜来島でしか考えられないことなど。

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「郷土学」では校長先生(田中区長さん)が島の郷土学について教えてくれました。

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「冒険探検学」では、海辺から竜頭山までをウォーキング。鵜来島には、戦時中海軍基地が山中にあり、その砲台跡が山頂に残っているのです。近代戦争史を学びながら、龍頭山山頂までを歩きます。

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土佐の陶芸作家さんによる 「陶芸」の授業は、みんなに大人気!

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お昼は、毎日行われる「家庭科」の授業で作られた栄養ばっちりの高知ごはん。
高知県立大生によるメニューは、日本各地から集まった先生生徒に大好評でした!写真は、島のおばあちゃんたちから郷土料理「さつま汁」を学んでいる様子。さつま汁は、落花生と鰹のとろろみたいな料理。島には川がなく、水に乏しいため、麦や芋、落花生を主産品として育てていた、島の歴史が口に溶けます。

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こちらは授業「釣り」の風景。島のおじいちゃんはみんな漁師さん。島のお魚のことで、知らないことはありません。この日のお魚は勿論、食卓に。タイや穴子まで!美味しく頂きました。

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他にも「お祭り論」「音楽」「倫理」「心理学」「郷土史」等々…毎日どこかで、龍宮学校ならではのふしぎな授業が行われていました。

「感動で繋がれば、島はみんなのふるさとになる」

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勉強の時間以外にも、大事な時間はあります。
校長先生やおじいちゃん達が、無人島に連れて行ってくれたり、おばあちゃん達が、階段で大きな蜜柑を食べさせてくれたり。
放課後はもちろん、部活です。部活の一つ「郷土遊び部」では、「島を守る会」の谷本さんに「島野球」を習いました。「島は狭いので、布切れを集めたボールを、飛ばないように竹で打つ。島ならではの遊び方を知ってほしい」
みんなで汗だく、泥だらけになって「島野球」に興じました。

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ほか、「龍宮学校ARG部」という、少し変わったゲームを行う部活も。

最後の授業は、島の春日神社へ参拝。副校長先生が木の上から指揮を振り、龍宮学校生徒は島中に校歌を響かせました。島の入江が一望出来る神社で、島と自分のはるか未来を思い浮かべながら、校長先生の「感動で繋がれば、島はみんなのふるさとになる」という言葉を思い出します。

最後に残ったのは、参加者の涙と、ボロボロの生徒手帳。
「来年、また!」という固い約束を交わして、龍宮学校は閉校しました。

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人口30人の小さな島、鵜来島で開かれた、4日間だけの不思議な「龍宮学校」。
参加者みんなの心の玉手箱には、何が残ったのでしょうか…。
(文・隊長檸檬)

■レポート前編「30人の島とアートの出会い」
『龍宮学校』オフィシャルホームページ
龍宮学校〜回想録〜 (撮影編集:ウダタクオ)
龍宮学校 togetter

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