姫島(ひめしま|大分県)で、高速インターネット通信網の整備やサテライトオフィス施設が完成し、43年ぶりに島外企業が進出。2018年の年初からIT(情報技術)企業2社が営業を開始した。「ITの島」として地域活性化を目指す姫島の取り組みを取材した。(写真提供:姫島村)
大分県 国東半島の沖約5キロメートルに浮かぶ姫島
独自の持続策に取り組む姫島村
姫島は、大分県北東部、国東半島の沖約5キロメートルに浮かぶ、総面積6.99平方キロメートルの島。主産業は車えび養殖などの水産業と観光。「キツネ踊り」などのユニークな盆踊りが伝わることで知られている。
姫島には高校がないため、中学校を卒業するとほとんどの子どもが島外へ進学。仕送りの負担などから一家で転居するケースもある。島には働き口が少ないため、高校卒業後の進路も島外での進学や就職が主となる。
若年層の流出などを背景に、島の人口は1950年の4,170名(※1)をピークに、現在1,880人(※2)まで減少している。年齢別人口の変化では、2000年から2010年までで年少人口(0〜14歳)が50.2%減少、生産年齢人口(15〜64歳)が25.9%減少の一方、老年人口(65歳以上)は7.0%増加と、少子高齢化も進んでいる。
※1 参考資料「姫島村総合計画」(平成24年度〜平成33年度)
※2 2017年12月1日現在
姫島村役場は平成の大合併時に1島1村で生き残る道を選び、住民の雇用機会確保のために昭和40年代前半から役場職員のワークシェアリング制度を導入するなど、独自の持続策に取り組んできたことでも知られている。
近年では、離島地域の地理的なハンデを軽減するため、ケーブルテレビ網を活用したインターネット通信網の整備に注力し、情報インフラの向上も図ってきた。
既存施設を活用しIT企業を誘致
2017年12月に完成した「姫島ITアイランドセンター」
こうした施策に加え、地域の活性化には民間の経済活動も欠かせない。そこで、新たな雇用の場を創出するべく姫島村はIT産業に注目した。
村は地方創生交付金を活用し、6,670万円をかけて旧姫島小学校の理科棟を改修、村役場に通じる光ファイバー網を延伸し、2017年12月に「姫島ITアイランドセンター」をオープン。高速通信網を備えた事務所として、一般企業向けに賃貸を開始した。
センターの開設に先立ち、大分県企業立地推進課が2017年4月から東京、大阪、福岡のIT企業約100社を訪問。誘致活動に呼応した東京都のIT企業2社が姫島に進出を決め、2018年の年初より姫島ITアイランドセンターでサテライトオフィスの営業を開始。島にとって43年ぶりの企業進出となった。
(記事後編に続く)