つくろう、島の未来

2024年04月19日 金曜日

つくろう、島の未来

能登島(のとじま|石川県七尾市)で、「能登島の酒プロジェクト」を立ち上げた観光協会青年部が地元6農家に呼びかけ、約20年ぶりに酒米を生産。能登町の酒造会社に醸造を委託して純米酒「能登島」が完成した。2月より能登島内外の道の駅などで販売が始まっている。(写真提供:能登地域づくり協議会)

石川県能登半島の七尾湾に浮かぶ能登島で、能登島観光協会青年部が「能登島の酒プロジェクト」を進めている。島内の農家と協力し、酒米を生産。できた米で仕込んだ日本酒を島の新たな特産品として販売し、農家のやりがいにつなげるとともに、島の住民に愛される「島の酒」造りを目指す。

島内の農家らが集まる観光協会青年部は、島の交流人口を増やそうと、かつて島が流刑地だったことに着目し、2014年から都市在住者を対象とした「島流しツアー」を企画。「流人」になった設定で島を訪れる参加者に、「刑」に見立てた田植えや稲刈りなどを体験してもらった。ツアーは好評で、リピーターとなった参加者の中からは移住者も誕生した。2015年には、耕作放棄地を再生させて農業体験施設「島流し農園」を開設。「流人」たちとともにコシヒカリを生産した。

「島流しツアー」で島を訪れた「流人」たちの田植え体験

2015年、観光協会青年部の活動を知った能登町の数馬酒造株式会社から「島流し農園」の米で酒造りをしてはどうかとの提案があった。どうせなら島内の農家とも協力して「島の酒」を造ろうと、観光協会青年部から島内の農家に呼びかけ、6農家が応じた。

島内では約20年前に酒米を試験栽培したことがあったが、その後栽培は行われておらず、いずれの農家も酒米生産は初めての試みだった。そこで、観光協会青年部が島外の酒米農家や数馬酒造への視察を企画。酒米生産や日本酒造りについて共に学び、2016年より島内7箇所の水田で酒米「五百万石」の生産に取り組んだ。

酒米の田植えや収穫には島外から訪れた「流人」たちも参加し、秋祭で住民と「流人」たちが共に豊年を祝う姿も見られた。2016年秋、約20年ぶりに収穫できた島の酒米は当初目標にしていた2400キログラムを上回る、約3180キログラムの豊作。1200キログラムを酒造りに使い、残りを地元の卸業者に販売した。

「島流し農園」の田に豊かに実る酒米「五百万石」の稲

栽培農家の一人で向田町集落営農組合の花園陽一さんは、「初めての酒米づくりでしたが、有機肥料を使い、研修や指導を受けながら各農家の環境条件に合わせて小まめに世話をしてきました。天候にも恵まれ、島外からのボランティアも手伝いに来てくれて、おかげさまでたくさんの米が収穫できました。各農家、例年を少し上回る収益が得られたようです」と喜ぶ。

2017年1月下旬、能登島産の酒米を仕込み、能登島出身の書家がラベルを書いた純米酒「能登島」が完成した。酒米の生産者が集まり開かれた試飲会では「甘みがありながらすっきりとした味わいで、島の山海の幸との相性も良い。自慢できる酒になった」と酒の完成を祝い合ったという。今年も引き続き、酒米生産と酒造りに取り組む。
「能登島」は一升瓶で千本製造され、2月より能登島内外の道の駅などで販売が始まっている。


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