つくろう、島の未来

2026年01月07日 水曜日

つくろう、島の未来

このたびの台風22・23号により被害に遭われた八丈島の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。一日も早いご復興をお祈りいたします。

島旅フォトライターの井月保仁(いづやん)です。2025年10月、台風22・23号が八丈島・青ヶ島を襲い、特に八丈島では建物の損壊や土砂崩れ、断水など甚大な被害が出ました。熟慮の末、12月に島を訪れたときの模様をお届けします。

写真・文 いづやん

八丈島に「行ってもいいのか」迷った日々

「八丈島に行ってもいいのだろうか」。10月の台風で大きな被害が出たと聞いてから、島の知人たちのSNSやニュースを見るたびに、そんなことを考えていました。「今年の八丈島行きは無理だな」と諦めかけてもいました。10月から11月前半は「断水で水も出ないところが多いし、道路も寸断され、宿や店が営業できないので観光に来るのはNG」という島の声も、SNSで目にしました。

それでも何かできないかと考えて、一番動きの早かった離島経済新聞社(リトケイ)さんの「令和7年10月台風被害による八丈島・青ヶ島の事業者応援寄付」に、妻と二人でいくらか拠出しました。

大里の玉石垣の道。近くの神社の石垣は台風で崩れたままになっていた

八丈島には14回ほど訪れています。今年も半年以上前から12月頭にいつもの宿を予約していましたが、台風の被害が残る八丈島へ本当に行っていいのか、ずっと迷っていました。

そんな時、八丈島の友人から「観光の人も、できれば来てほしい。来てもらわないと商売が続かない」というメッセージをもらいました。池袋で開催された離島の祭典「アイランダー2025」でも、八丈島ブースや会場で会った島の知人から「復旧作業している箇所に入らなければ、島はだいぶ日常を取り戻しているから、ぜひ来てください」と、何人もの方から背中を押されました。

戻りつつある日常と、島に残る爪痕

羽田からの飛行機を降りると、八丈富士が迎えてくれる風景は、いつもの八丈島と変わらないようにも見えます。レンタカー屋のスタッフも「飛行機、揺れたでしょう」と朗らかで、台風被害の悲壮感はあまり感じられませんでした。

台風後通行止めになっていた八丈富士のふれあい牧場も、12月には再開されたそう

実際、三根・大賀郷の坂下地区や、樫立・中之郷地区の坂上地区の八丈一周道路沿いは、以前と変わらない八丈島らしい風景が広がっていて、観光で回っても大きな問題はなさそうに感じました。

一方で、道路脇に崩れた斜面があったり、木々がなくなって見通しがよくなっていたり、倒壊しそうな家屋もいくつか見受けられました。島の南東部・末吉地区は今も一部立ち入りができず、通行止めとなっている場所もあります。島の知人から「車で行けるところまで行って状況を見てきたら」と言われましたが、作業車の往来もあることだし、できるだけ邪魔になりたくないと思い、あえて足を踏み入れませんでした。

観光客として過ごせる範囲は決して小さくないものの、島全体がまだ復興の途中にあることを、肌で感じました。

定宿で聞いた、リトケイ支援金が届くまで

今回も、いつもお世話になっている定宿にチェックインし、女将さんに状況を伺いました。ここはお客さんが泊まる宿棟と、ご夫婦が生活している母屋が別で、台風の被害は主に母屋側の雨漏りだったそうです。

「台風が襲ってきた夜は強烈な風と雨が怖くて一睡もできなかったけど、断水や停電はなかったし、他の地区の被災した方々に比べたらずいぶん優しいほうでした」と女将さん。それでも雨漏りの跡はまだ直せておらず、毎回楽しみにしていた母屋での朝食は今回はなし、となりました。

宿から見える森の木々も台風でかなり減って、風景が変わっていた

「被害は小さかったので迷っていたけど、島の人が『申し込んだほうがいい』と言ってくれて」と前置きして教えてくれたのは、罹災証明を取ったり、リトケイさんの八丈島・青ヶ島の事業者支援金に申し込んだこと。

「リトケイさんの支援金は、申し込んだらすごく早く入金されて本当に助かったんです」と話してくれました。僕と妻も台風被害が大きいと知った時、「すぐに支援金を寄付しよう」と思い、リトケイさんに送金しましたが、「事業者支援」と聞いても、どこにどのように届くのか具体的なイメージは持てていませんでした。けれど、いつも泊まっている大切な宿にもそのお金がちゃんと届いていたと知って、本当に嬉しかった。遠くから送った小さな気持ちが、細い糸のように島と繋がったような感覚になりました。

女将さんやご主人はあまり不安や不便についてお話されませんでしたが、台風直後から11月末までは宿のキャンセルも多く、厳しい時期が続いたはずです。そこに支援金が迅速に届いたことは、少なからず精神的な支えになっていたのではないでしょうか。

「島の声」を聞きながら、ぜひ訪れてほしい

島の方からの「ぜひ島に来てほしい」という後押しがあったから、12月に八丈島を訪れることができました。では、それこそ初めて行くような人が、今の八丈島に観光で行ってもいいのでしょうか。

僕の答えは、「島の声を聞きながら、ぜひ行ってほしい」です。

島内には、かなりの割合の宿や飲食店、観光施設が営業を再開しています。一方で、復旧作業を優先している施設や、被害の大きかったエリアへの立ち入りは禁止されています。行く前には、観光協会や町の公式サイトで最新の情報を確認し、「通行止めや被害の大きかったエリアには入らない」「開いているお店で、いつも以上にしっかり楽しませてもらう」 そんな姿勢が大事だと感じました。

宿では復興ガイドマップや、観光の可否を示した「観光施設リスト」「飲食店リスト」を置いてくれていました。これらは八丈町のサイトで頻繁にアップデートされているので、確認しておくと安心です。

八丈町サイトの復興ガイドマップ。観光する際には最新情報をチェック(出展:八丈町)

八丈島を応援するなら、ぜひ島で食べて買おう

今回の旅では、10月にリニューアルオープンし拝観するのを楽しみにしていた「八丈島歴史民俗資料館」をまず訪れました。

台風被害にあった八丈島ですが、たくさんの魅力を改めて知ることのできる素晴らしい施設です。ガイダンスシアターの3面映像で見られる島の姿は感動的で、八丈島に思い入れのある僕ら夫婦は二人して思わず涙ぐんでしまったほどです。

10月にリニューアルオープンしたばかりの八丈島歴史民俗資料館。大きな被害はなく11月から開館している

夜はいつもの居酒屋で島の海と山の幸をたっぷりいただき、翌朝は変わらず雄大な八丈富士や、海の向こうの八丈小島を仰ぎ見ました。黄八丈の工房やギャラリーを訪れて体験なども楽しみました。

島の人たちは「まだ復興には時間がかかると思うけどね」と言いながらも、「来てくれてありがとう」と笑顔で迎えてくれました。今の八丈島には、「確かに復興へと進んでいる景色」があります。

島の居酒屋や食堂、レストラン、カフェは、どこも島の人たちで賑わっていたのが印象的だった

これからの冬の季節は島にとってはオフシーズンですが、観光で訪れるには実は狙い目です。復旧した温泉巡りもできますし、島のグルメを堪能できる飲食店も多彩です。

島のお土産品もクオリティが高く、お菓子や調味料、お茶、黄八丈製品など、どれを選んでも満足感があります。今回は被災したあしたば加工場さんや八丈島乳業さんの製品を中心に、あちこちのお店でたくさん買い込みました。

応援の意味ももちろんありますが、どれも美味しくて素敵なものなので、まさにWin-Winです。観光客の少ない冬ならのんびり過ごせて、しかも島の復興のためにもなる。いいことづくめですよ。

お土産店や商店、カフェを巡り、お気に入りの島の商品をいつも以上に買い漁ってきた

被災地に「遊びに行く」ことに、迷いや戸惑いがある人も多いと思います。僕もそうでした。

それでも一歩踏み出して、島の人たちと顔を合わせ、「また来るね」と言葉を交わすこと。それが支援金と同じくらい、これからの八丈島の力になっていくのではないか。今回の旅を通じて、そんなことを感じたのでした。

最後に、レンタカー屋のスタッフに空港に送ってもらった時、「お土産たくさん買った? あんまり人にあげないでな。ちょっとだけあげて興味を持ってもらって島に来てもらわないとな!」と、ガハハと笑っていたのが印象的でした。

そう、島に来てもらうのが、今は一番の応援になるのです。

<完>

井月保仁(いづき・やすひと)
千葉県船橋市在住。「いづやん」のペンネームで島旅フォトライターとして活動。大学在学中に訪れた小笠原で島に魅了され、以後ライフワークとして日本の離島を巡り、島旅ブログ「ISLAND TRIP(https://www.islandtrip.jp/)」にて旅の様子を書き綴る。島の魅力を伝えるべく、Webメディアや雑誌、イベントなどで活躍。有人離島211島を巡っている(2025年11月現在)。2025年4月に、島を撮る写真家たちの団体「日本島写真家協会(https://jips.jp/)」を設立しました。島を撮る人ならどなたでも入会可能です。


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