つくろう、島の未来

2019年12月07日 土曜日

宮城県の寒風沢島で、NPOやボランティアらが東日本大震災の津波で塩害を受けた田んぼを再生し、伝統農法による米の生産や日本酒造りなどの活動を続けている。震災を乗り越えて続く、地域興しの取り組みを取材した。

■津波で被災した水田を再生し、生産した米から酒を造る

宮城県の浦戸諸島の一つ寒風沢島で、NPOとボランティアが協力し、東日本大震災の津波で被災した水田を再生し、米の生産に取り組んでいる。生産した米で造った清酒が新たな特産品として売り上げを伸ばすほか、地元の子どもたちに向けた米作りの体験学習を行うなど、活動の輪が広がっている。

寒風沢島では、2007年に地域活性を目的とした任意団体「浦戸アイランド倶楽部」が発足し、地元住民や島外の会員が、田植えから米作りに携わり生産した米を原料に清酒を生産。地元テレビ局でドキュメンタリー化されるなど話題を集め、2010年にNPO法人化してプロジェクトを継続してきた。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災の津波により島の堤防が破壊され、耕作し始めていた水田が全て海水に浸かってしまった。

震災翌年の2012年4月、島に仮堤防が完成し、浦戸アイランド倶楽部では被災した水田の除塩作業を開始。島内には農業用水が無かったため、溜池を作って水を貯め、田に水を張っては流す作業を繰り返し、田に生い茂った葦(あし)を取り除き、約2ヵ月をかけて田植えを行えるまでに再生させた。

現在、寒風沢島では冬に集めた雪と雨水を農業用水として利用し、稲刈り後は天日干しで仕上げる「ふゆみず農法」と呼ばれる伝統的な農法で、宮城県の代表的な品種ササニシキを生産。ブランド米「寒風沢米」として販売している。また、この米を原材料に、地元塩竈市内の酒蔵 株式会社佐浦(さうら)の協力のもと、清酒「純米吟醸 浦霞 寒風沢」も限定生産される。

浦戸アイランド倶楽部理事長の大津晃一さんは「『ふゆみず農法』は水のない島で米を作るために編み出された農法。収穫は多くないが味のよいのが特長です。『寒風沢米』で造った酒は、塩竈で地元の酒として浸透し、年々売り上げを伸ばしています」と喜ぶ。

■ボランティア参加や小学生の体験学習など、広がる活動の輪

毎年、田植えや収穫の際は、塩竈市内の小学生をはじめ、都市部から訪れるボランティアのグループが参加している。浦戸諸島内の野々島にある塩竈市立浦戸小中学校では、2014年度より学習用の田で米づくりの体験学習を導入。子どもたちは苗の手植えから、手刈りの収穫までを体験した。同校の柳沼 裕教頭は、「スーパーに並ぶ商品としての米しか知らなかった子どもたちが、稲が育つ姿に触れ、農作業の大変さを体験するなかで、食べ物を大切にする心や作り手への感謝の気持ちが育まれていることを実感しています。この取り組みを長く続けていくことで、地場産業への関心が高まり、郷土愛も育んでいけるのでは」と期待する。

浦戸アイランド倶楽部では、米以外の農産物を生産するべく2012年より島の環境に適した商品作物の研究を進め、2014年より枝豆とサツマイモの試験栽培を開始。2014年秋に「寒風沢ちゃ豆」というブランド名で枝豆を売り出している。精力的な活動を続けるなか、この夏は塩竈市内に寒風沢島のアンテナショップも開設予定という。

「震災で家を失い、本土に移住せざるを得なくなった人たちが沢山います。復興は人が元気になってこそ。それには、コミュニティが必要であるため、アンテナショップは島の農産物や特産品を販売するだけでなく、出身者が集まれる場にしたいと思っています」と話す大津さんは、「島で農業や漁業に従事する若手人材の育成も始めています。2〜3年後には、元気な島の姿を全国に発信できると思います」とさらなる展望も語った。震災を乗り越え、地域の未来を見据えた取り組みが続いていく。


【関連サイト】
NPO浦戸アイランド倶楽部
「寒風沢米」販売ページ

関連する記事

ritokei特集