つくろう、島の未来

2024年11月22日 金曜日

つくろう、島の未来

奄美大島の若者たちが独自の選挙番組を制作

2015年6月、鹿児島県奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)南部の瀬戸内町で、任期満了による町長選挙が行われた。この選挙に向けて、奄美大島南部の瀬戸内町で島内の若者が集まり、町長選挙候補者が出演する政策トーク番組を制作。地域住民や出身者に向けた広報活動が展開され、投票率は前回の町長選を上回る結果となった。(写真提供:瀬戸内町町長選挙公開討論会を実現する会)

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番組中のカット

■「候補者の人となり」にフォーカスした選挙番組を制作

地域住民による政策トーク番組の制作は島内初。番組を制作した「瀬戸内町町長選挙公開討論会を実現する会」代表の武原将樹さんは、「より多くの住民が、自分たちが暮らす地域の政治に関心を持ち、参加できるきっかけづくりを目指した」と語る。

武原さんは瀬戸内町でケーブルテレビ放送を行う、株式会社瀬戸内ケーブルテレビの専務。過去に行われた県議会議員選挙の際に、奄美大島青年会議所が主催した立候補予定者による政策発表のネット配信に協力した経験があった。

武原さんと東京からUターンした構成作家経験を持つ若者が中心となり、島内の20〜40代前半の若者15名が制作メンバーとして参加。青年会議所や奄美テレビ放送株式会社の協力も得て番組づくりが進められた。

「制作スタッフは半数以上が瀬戸内町町長選挙の選挙権を持たない町外のメンバーでした。第三者としての視点を取り入れ、構成を考える際は候補者の発言順を交代させるなど、公平性を保つことを特に意識しました」(武原さん)

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制作スタッフの若者たち

企画会議を進めるなかで、候補者同士が意見をぶつけあう討論形式ではなく、日頃なかなか知ることのできない「候補者の人となり」にフォーカスする方針が固まった。2名の候補者に企画意図を伝えるため、同会では説明会を重ね、両候補者の協力を得て、番組が実現することとなった。

完成した政策トーク番組は「町長選挙直前スペシャル瀬戸内の『未来』を語らん場」と名付けられ、司会を交えたトーク形式で行われた。番組は、各候補者が自分自身を表す1枚の写真をもとに自己紹介を行うコーナーや、住民から寄せられた質問に回答するコーナーなどで構成され、両候補者の個性が自然と現れる内容になった。

番組には「本島(奄美大島)側と加計呂麻島などの離島で格差がある通信インフラの整備について意見を」「子育て支援策について今後どのような取り組みが必要か」などの質問が寄せられ、候補者が回答。ほかにも、政策トーク番組づくりの取り組みを応援する声や、「争点がよく分からないので政策について知りたい」などの意見が番組中で紹介された。

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あまみエフエム出演の様子

■より多くの人に届けるための、多彩な広報活動

同会では番組放送開始の約1ヵ月前より公式ブログを立ち上げ、広報を開始。2本の告知CMを制作し、インターネット動画配信サイトYouTubeで配信した。

ブログではCM映像へのリンクや、スタッフの紹介、番組制作が進む様子などを日々更新。インターネット放送を行い、島内外にリスナーの多いコミュニティFM局あまみエフエムにも出演し、視聴を呼びかけた。

番組は6月1日から選挙告示前日の8日まで、瀬戸内ケーブルテレビと奄美テレビの2局で1日2回放送し、Ustreamでも同時配信を行った。ケーブルテレビに加入していない住民のために島内のコミュニティFM3局の協力を得て音声放送を実施し、番組の放送期間に合わせてYouTubeでも番組やCMの配信を行った(現在は非公開)。また、瀬戸内町の行政区内にある請島・与路島ではケーブルテレビ放送がないため、両島では住民向けの上映会が開催された。

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島での上映会の様子

放送終了後、6月10日から14日にかけて瀬戸内町町長選挙が実施された。当日有権者数7,751人(男3,685人、女4,066人)のうち投票総数6,819人(男3,275人、女3,544人、有効6,730票、無効89票)。期日前投票では有権者全体の約半数にあたる3,830人が投票し、期日前選挙の施行以来最高を記録。最終投票率は87.98%で、2011年に行われた前回の町長選挙の投票率を13.39ポイント上回る高い投票率となり、有権者の関心の高さが表れた。


【関連サイト】
「瀬戸内町町長選挙公開討論会を実現する会」公式ブログ

     

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