6月6日、人口402名の渡名喜島で「渡名喜島フューチャーセッション」が開催され、住民が島の未来について話し合った。当日の様子をレポートする。
■島内外から参加した約20名が、島の未来について話し合った
「渡名喜島フューチャーセッション」(島の若手や地域おこし協力隊主催)が開催され、島内外から約20名が参加。渡名喜島の未来について話し合った。
渡名喜島(となきじま|沖縄県渡名喜村)は、那覇市の泊港からフェリーで約2時間、人口402名、面積3.58平方キロメートルの島。一島一村で全島が渡名喜村に属し、沖縄県で最も小さな自治体である。主幹産業は沿岸漁業を中心とした漁業や、島ニンジン、もちきびなどを生産する農業のほか、民宿経営など観光業が営まれている。
もちきびが栽培されている畑
島には古くから伝わる伝統文化が数多く残っている。島の子どもたちが月・水・金曜日の週3回、早朝に集落内清掃を行う「朝起き会」や村民総出で水中綱引きや騎馬戦を行う水上運動会は、いずれも大正時代から90年以上も続く行事だ。ほかにも島人の健康・豊漁・豊作・航海安全などを祈願するシマノーシ(島直し)は2年に1度行われる祭祀で、数百年の伝統がある。
朝起き会で使用する掃除用具
今回、渡名喜島で同セッションを開催することになった経緯は、昨年3月に渡名喜島に地域おこし協力隊として赴任している吉田勇一朗さんが「村民が島について話し合う場をつくることはできないだろうか」と持ちかけたことがきっかけだという。
吉田さんは渡名喜島でその狙いについて、「村づくりに関心をもつ住民に自分の考えを表現してもらいたい。また、島外の新鮮な視点と交わることで起きる化学反応も期待した」と話す。
渡名喜島フューチャーセッションの会場
当日は役場職員や、住民、島外からの参加者など合わせて約20名が参加。役場職員の桃原大起(ももはら・たいき)さんが会の司会役を務め、同じく役場職員の桃原 望(とうばる・のぞむ)さんがファシリテーター(進行役)として、参加者をサポートした。
セッションは前半と後半の2部構成。前半は、参加者はグループに分かれて座り、アイスブレイク(※)や仮想テーマによるディスカッションが行われ、活発に意見をかわしていた。
※初対面時のコミュニケーションを円滑にするためのきっかけづくりとなるゲームやクイズなどの手法
写真左:グループに分かれて交流 / 写真右:ふせんを使用して意見を出し合う
後半では、「未来の渡名喜島がどのような島になってほしいか」というテーマのもとグループごとに、意見を出し合い、渡名喜島の未来についての新聞づくりを行った。
制作した新聞には「活気のある渡名喜島に!」「サンゴ復活プロジェクトで人口3.5倍!」と、気になる見出しの新聞が並び、参加者は他のグループが作成した新聞を興味深く見ていた。
渡名喜島の未来についての新聞が完成
閉会に際し、参加者からは、「普段話さないようなことを話せてよかった」「第1回目でこれだけたくさんのアイディアが出たので、もっと多くの村民に参加してほしい」「島の若い人や島外の人の意見も聞く事ができた」「昔の渡名喜を知っている人が、未来の渡名喜を想像できる場だった。希望のある話し合いができた」といった感想が聞こえてきた。
開催の裏側では、吉田さんをはじめ、桃原大起さん、桃原望さんら島の若手が力を合わせ、準備を進めてきた。セッションの進行方法などを勉強するため、4月に東京で行われた勉強会に参加。桃原大起さんはこの時の様子について、「渡名喜島で行う前に、自分たちも実際にグループワークを行ったので、流れを学べた。また、当日は起業家や社会人、大学生が約100人参加していて、多くの人と話して刺激になった」と振り返る。
写真左:グループごとに新聞の内容を発表 / 写真右:今回のセッションを通じた感想を共有
ファシリテーターを務めた桃原望さんは「今後も開催していくことで、より多くの住民に参加してもらいたい」と話す。「人口402人という小さな自治体だからこその強みとして、島に住んでいるお互いのことを知っているということが挙げられる。たとえば、『これをやるなら、あの人に話したら協力してくれそう』と、相手の性格も分かるので、そこは強みだと思います」(桃原望さん)
初開催を終え、参加者からは「今後も住民同士で渡名喜島の未来について話し合いたい」と、期待する声が挙がっている。吉田さんは「今後にどうつなげていくか、運営メンバーで作戦を練り始めているところです」と意気込む。
住民主導で島の未来を考える場がつくられ、住民一人ひとりが暮らしやすい島が続いていくことが願われる。
(離島経済新聞社 編集部)