【#02 定住対策課・八幡さんの“新しい地域のつくり方”】廃校を利用して、若者を誘致する「学校」を作ろう…。地元の方にとっても、大きな挑戦であったに違いない「隠岐の島ものづくり学校」の開校。メインの担当者として奮闘しているのは、隠岐の島定住対策課の八幡さん。4年の歳月をかけ、準備を進めてきた八幡さんに、これまでの経緯をお聞きしました。
廃校を利用し、クリエイターや地域の経済の担い手になる人たちの受け皿として
7月に本格始動した「隠岐の島ものづくり学校」。
隠岐の島町で設立の話が持ち上がったのは、3年前のこと。
そこから、地元の方の協力のもと、場所を選び、内容を決め、改修工事をして…と
準備を重ねてきた「隠岐の島ものづくり学校」ですが、
なぜ、隠岐の島町にこの施設を作ろうと思い立ったのでしょうか?
隠岐の島定住対策課の八幡哲さんに、お話を伺いました。
2年越しの計画。採用されたのは昭和33年建築の木造校舎
リトケイ:
「隠岐の島ものづくり学校」を作る、最初のきっかけはなんだったのでしょうか?
八幡さん:
隠岐の島にはもともと小学校11校・中学校6校ありましたが、年々人口が減少すると共に、児童・生徒数も減少し、学校の統廃合を検討せざるを得なくなりました。
さまざまな立場から反対意見もありましたが、子供たちの教育環境を考え、複式学級を廃止し、1学年20人程度にして、統廃合することになりました。平成22年3月には小学校4校、中学校2校が廃校となりました。
リトケイ:
なるほど。それで跡地の活用方法を考えられていた?
八幡さん:
はい。統廃合が決まった頃、比較的使用可能な4つの校舎の跡利用の方法を考えていたのですが、その時、世田谷で廃校利用で成功している「世田谷ものづくり学校(以下IID)」の存在をネットで知りました。知り合いのつてをたどって、IIDの運営主体である「株式会社ものづくり学校」の関係者に会うことができ、隠岐の島町の廃校活用の協力をお願いしたところから、始まりました。
リトケイ:
それから「隠岐の島ものづくり学校」ができるまでの経緯を簡単に教えて下さい。
八幡さん:
平成21年2月に、IIDのクリエーターの皆さんにお越しいただき、遊休施設活用シンポジュウムを開催し、その後、閉校が決定していた中村小学校の跡利用検討委員会に出席し、5回に渡り、協議を行いました。
その後具体的な進め方を地域の区長さんと22年3月29日に話し合い、各地区から委員を選出し、地元調整会議を立ち上げ、そこから4回開催しました。(詳しくは「隠岐の島ものづくり学校ができるまで」をご覧ください)
その間に校舎の施設整備を行い、23年4月からは、次年度に施設がスムーズにオープンするよう、総務省の過疎地域等自立活性化推進交付金事業に取り組みました。
リトケイ:
なるほど。ということは21年の初めに株式会社ものづくり学校と一緒にやっていこうと考え始め、2年越しで計画を進めていったということですね。
4つの廃校のうち、「隠岐の島ものづくり学校」に選ばれた旧中村小学校の校舎はどんな特徴のある場所なんですか?
八幡さん:
利用可能な4つのうち、株式会社ものづくり学校の皆さんは一番古い校舎を選ばれました。昭和33年に建設された木造校舎です。
リトケイ:
昭和33年!すごく長い間使われていた場所なんですね。地元の方も思い入れのある場所なんじゃないでしょうか。
八幡さん:
学校の前が祭り場になっており、2年に1度祭りが開催されます。そこに大きな傘の姿をした唐傘の松というのがあって、これもよかったみたいです。
私たちからすると校舎は古いし、交通の便も悪いので心配でしたが、ここなら運営してみたいとおっしゃっていたので、運営主体を「株式会社ものづくり学校」として、地域には話を進めました。
「定住+起業」の土台に。入居者と地域で一緒に町を盛り上げる
リトケイ:
地域の反応はいかがでしたか?
八幡さん:
地域はと言うと、「ものづくり学校」がどういうものかは分からないが、空き施設が活用されるなら、と非常に協力的でしたので、会議も順調に進んだと思います。
リトケイ:
「隠岐の島ものづくり学校」ができるまでは、幾度も調整するべきことがあったかと思います。一番苦労されたことを教えて下さい。
八幡さん:
特に苦労したことはありません。ただ、東京と隠岐の島は距離が非常に遠いので、ものづくり学校との連絡調整が、メールと電話が主体となり、実際に話して調整することが多くとれず、これが一番の苦労かもしれません。
リトケイ:
「隠岐の島ものづくり学校」にこれからどのような入居者が来てほしいですか?
八幡さん:
隠岐はネット環境が整備してあるので、ビジネスにも十分に適した場所です。ですので、“離島の隠岐に住むこと”と、“隠岐で起業をすること”をセットで考えられる人に来て欲しいと思います。
リトケイ:
「定住+起業」というイメージですね。
八幡さん:
人口減少が続く隠岐の島町にとって、Iターン者は非常に重要です。
ですので、自分で仕事を作って、尚且つ隠岐の島町に住むといった隠岐の島ものづくり学校の入居者は、新たなスタイルとして非常に期待しています。
業種の希望は特にないので、隠岐に住んで生活をするという一種の覚悟を持った人に来て頂きたいと思います。
空き家も、現在貸し出せるものは非常に少ないので、次年度には、古い民宿をシェアハウスに改修し、住むところを確保して入居者を受け入れたいと考えています。
リトケイ:
これから受け入れ準備をどんどん進めていく予定なんですね。そういった「これから感」も含めて、ゼロを1にすることを楽しめる人に来てもらえるといいですよね。ありがとうございました。
2012年7月より、株式会社ものづくり学校が運営を開始した来年4月には、「隠岐の島ものづくり学校」を多くの方にお披露目するオープニングイベントが開催されます。
今後も「隠岐の島ものづくり学校」の特設サイトから情報を発信してゆきますので、ぜひお見逃しなく!