つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

島に限らず、地域づくりの現場では「地域づくりは人づくり」という言葉が語られ、人材育成に力を入れる地域も多い。教育を軸に島づくりを行う島々のなか、瀬戸内海の離島、周防大島町と大崎上島町では、島の子どもたちに対して「実践的な学びを通して子どもたちが自らの将来を見据えることを目的にしたキャリア(=経験)教育」を、学校・地域・私塾の連携により提供。民間の立場から教育島づくりを推進する2人のキーマンを紹介したい。
※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。

大野さんと取釜さんは定期的に情報交換を行いながら、それぞれのプログラムに磨きをかけている。

「離島振興法の父」と呼ばれる民俗学者の宮本常一が生まれ育った山口県の周防大島(屋代島|やしろじま)では、島出身の大野圭司さんが「起業家教育」を推進している。

キャリア教育デザイナーとして活動する大野さんは、自身が通っていた中学校が廃校になり、町内から子どもたちが減っていく現状を前に「島おこしのために何ができるかを考えたとき、行き着いた答えが『子どもたちの教育を変えると島が変わる』ことだったんです」と話す。

そんな大野さんは人口減少だけでない「時代の変化」も強く意識している。「人口知能(AI)が発達し、10〜20年後には日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替えできるというデータ(※)もあります。そんな時代に必要なのは『自分の仕事をつくること』だと思うんです」(大野さん)。

※2015年12月に発表された野村総合研究所(NRI)と英オックスフォード大学の教授らの共同研究。601種の職業ごとにコンピューター技術による代替確率を試算し、日本の労働人口の約49%が技術的には人工知能等へ置き換え可能であるという研究結果が発表された。

大野さんは現在、町内の小中学校で年間130時間以上の「総合的な学習」を担当し、自ら開発した教材を用いて「自分の仕事をつくる」授業を行っている。

中学2年生向けの授業では、生徒が会社をつくり、事業計画を考え、島内の道の駅で販売体験を実施。事業計画は地元で製造販売業などを営む「起業家の先輩」がチェックし、出資者募集の参観日で保護者らに対して事業アイデアを発表。一株500円の出資を募る。

「多くの保護者が参加する」というこの参観日では1日で10万円程度が集まるといい、その資金を元に子どもたちが事業を展開する。子どもたちの事業アイデアは綿菓子や雑貨の販売など。

「子どもたちは実践を通して商売が7〜8掛で行われていることや、利益率などについて学んでいきます。実践の結果、最終的な利益を計算すると、1人あたりの時給が数十円になることもめずらしくありません」(大野さん)。

そんな現実に直面しながら、子どもたちはお金を得ることの現実を学び、自分の将来像を具体化させていく。

「島にUターンしてカフェやレストランを起業すると志している子もいます」と大野さんは、これらの学びで育まれることを「生きる力」とも表現する。

(記事後編に続く)

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