つくろう、島の未来

2022年09月26日 月曜日

つくろう、島の未来

たとえそのごみが何処から流れ出していたとしても、美しい島を汚すものは拾うほかない。人口数人から数万人の離島地域に容赦なく流れ着く、膨大な海ごみに対峙するならひとりよりも「みんな」が心強い。全国の離島地域で海岸清掃を行う団体に話を聞いた。(文・写真 水野暁子)

3時間でペットボトル8,600本を回収。石垣島の美しい海を守る海Loveネットワーク

4月7日、石垣島最北端の平野海岸で、2トントラック7台分にのぼる漂着ごみが回収された。

海岸清掃は石垣島のボランティア団体「海Loveネットワーク」が主催する「海Loveビーチクリーン」として行われ、大人と子ども合わせて131人が参加。

4月7日のビーチクリーンで回収された海ごみ

3時間の清掃活動で回収されたごみはペットボトルだけでも203袋(8,631本)あり、発泡スチロール119袋、ロープの塊など263キログラム、燃やさないゴミ138袋、漁具24袋、ロープ7袋、ブイ116個、燃やすゴミ4袋、瓶27袋、缶5袋、電球や蛍光灯9袋、注射器16本やライター23本などが、全長450メートルの範囲で回収された。

3時間の清掃活動で集まったペットボトルはなんと8,631本!

「海Loveネットワーク」は、石垣島の美しい海でサーフィンを楽しんでいた女性らが2003年頃に「自分たちが波乗りする海岸は自分たちで清掃しよう」と始めた「石垣ビーチクリーンクラブ(IBCC)」を前身に、IBCCの活動に共感した中川久美子さんが2009年に立ち上げた。

一般住民にも海岸清掃活動への関心を持ってもらえるよう、同年に「海Loveフェスタin石垣島」を開催し、音楽ライブや食事が楽しめる海岸清掃イベントとしたことで、多くの住民や来島者が海岸清掃に参加。

2016年までの8年間に開催された「海Loveフェスタin石垣島」では、運営側の予想を超え1回のイベントに700人を超える参加者が集う年もあったという。

4月7日のビーチクリーンには大人から子どもまで131人が参加

参加者が増える一方、中心メンバーには違和感も生まれていた。お祭りに参加することが目的になり、本来の目的である「ごみ問題への意識改革」が二の次になってしまっていると感じたのだ。そこで「海Loveフェスタin石垣島」は2016年を最後にお祭り型の海岸清掃から意識改革型の活動にシフト。

2017年からは「海Loveビーチクリーン」として、「意識を持って海岸清掃に取り組む人」を増やすことを目的に活動を続けている。4月に行われた「海Loveビーチクリーン」もそのひとつだが、石垣島の市街地から車で1時間以上離れた場所にある平野海岸で開催した背景には、企画者なりの目論見があった。

「ごみを拾うためだけにわざわざ街から離れた場所まで来る人は、ごみ問題にある程度の関心と意識を持っている人だと思う。冬の間に流れ着く海岸ごみの量を見たら、誰でも絶望感を感じるはず。その現実を体感する参加者には、危機感を発信するメッセンジャーとなってほしい」。

海岸から輸送トラックまではバケツリレーでごみを搬出

ごみで埋め尽くされた海岸を見れば、より多くのごみをできるだけ早く回収することが最も重要だとも考えられるが、「そうではない」とメンバーは語る。

「海岸清掃をすれば、その日の海岸はきれいになります。しかし海から流れ着くごみは果てしなく、数日もすればまたごみに埋め尽くされた浜に戻ってしまう。海岸清掃で一番重要なのは、圧倒的なごみの量を前にして、一人ひとりが今後どのような暮らしを選択すればごみを減らしていけるかを考えることです」。

漂着ごみの中には危険なごみも少なくない

そのため「海Loveビーチクリーン」では回収したごみの分別にもこだわっている。漂着ごみの集計データを残すことも目的にあるが、ごみの分別作業を参加者自身が行えば、ごみと向き合いながら、どのようなごみが流れ着いているかを視覚的に理解することができる。

膨大なペットボトルごみを分別した参加者であれば、日々の暮らしのなかでペットボトル商品とどのように付き合っていくかを考えるきっかけが得られるのだ。

清掃前の平野海岸と漂着した海ごみ

「海Loveネットワーク」の地道な活動は共感を呼び、島内外に海岸清掃の輪を広げている。宮古島や台湾で「海Loveビーチクリーンin宮古島」、「海Loveフェスタin台湾」が開催されるようになり、地元石垣島でも「白保魚湧く海保全協議会」のメンバーが地元白保海岸の清掃を2018年6月からスタート。

同年11月には「海Loveネットワーク」のメンバー6人がハワイに渡り、現地の海岸清掃団体「サステイナブルコーストラインズハワイ」と共同でハワイの海岸清掃を行った。

「ハワイに日本のごみが流れ着いていることは知っていたが、実際にそれを拾ってみて改めて海は繋がっていると実感した」と中川さん。小さな島から放たれるメッセージがいつか大きな波に変わり、世界中のごみが減っていくことが願われる。

清掃後、美しさを取り戻した海岸

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