つくろう、島の未来

2025年06月24日 火曜日

つくろう、島の未来

5月に幕を開けた、島から心豊かに生きる力を学ぶ「シマビト大学」。この記事では、7・8月に行われる「沖永良部島でシマ取材を体験しよう」について紹介いたします。

シマビト大学について知る(リトケイ内の特設ページ・トップへ)

出会いと学びに沸いたシマビト大学in奄美大島

第1弾の「奄美大島で学ぶ基本のシマ思考」では、オンライン講座を通して学びと交流を深めた参加者が5月末に奄美大島で大集合!奄美のシティ・名瀬のラジオでの発信を通した地域コミュニティづくりや方言復興の先進事例である「あまみエフエム」、奄美の奥座敷・宇検村で栄雄大さんのおばあおじいの人生が輝く場に取り組む現場を訪ね、最後の夜はシマ唄を聴きながら語り合うというぜいたくな時間を過ごしました。以下はその様子が伝わる動画です。

撮影・編集:田中良洋(株式会社ステキカク)

奄美大島のシマ合宿の参加者の声を紹介します。

「島人」だけでなく「内地在住の普通の旅人」でも楽しめます。日ごろ言語化していないだけで「シマ」は誰もが持っているものです。

自分も島が好きで、島旅を繰り返してきましたが、シマビト大学での経験・学び・出会いは個人旅行では体験する事ができない事ばかりでした。同じ想いを持った人達と一緒に過ごすかけがえのない時間になります。いつもとは違うシマや島旅にぜひ踏み出してみてください

島は違えど、離島に住む私にとっても、刺激的で心震える学びの合宿でした。自分の島に帰ってきてからも、気づきがあったり、深められたりしています。思ってもみなかった新たな心境に立てそうな気持ちと原点に戻った気持ちを抱いた時間は、自分の想像を超えて得るものばかりの合宿でした。

そして、同じ奄美群島の沖永良部島(おきのえらぶじま)でも開催されるシマビト大学。7月22日(水)・29日(水)・8月12日(火)にオンライン講座を開催。そして8月23日(土)には、現地で半日のシマ合宿を予定しています。

本講座はシマビト大学初のコラボであり、リトケイ統括編集長の鯨本あつこに加えて、『奄美群島南三島経済新聞(略称:みなさん新聞)』の記者たちも集合!島と取材を愛してやまないメンバーとの取材を通して学びを深められる、めったにない機会です。

徳之島合宿の流れで徳之島の船漕ぎレースに参加した(記者以外の方はぼかしをかけています)

7月の講座で、石田秀輝東北大学名誉教授が沖永良部島で見出した暮らしの価値や、地域取材のハウツーや心構えを学んだあと、8月に現地で参加者で集合。実際に記者になって取材をします。あなたの書いた記事が、ritokeiや、みなさん新聞に載るかも!?

この記事では、リトケイ副編集長で、みなさん新聞沖永良部支局長という、たまたま2足のわらじを履いている私、ネルソン水嶋が、本講座の見どころについて紹介します。

沖永良部島よりネルソン水嶋がお届けします!

なぜシマビト大学✕奄美群島南三島経済新聞?

みなさん新聞の名前にもある「奄美群島南三島」は、文字通り、奄美群島の南にある、徳之島・沖永良部島・与論島の3つの島を指しています。

個人間で交流はありましたが、「お互いに近い3島で連携しよう」と2021年に立ち上げたウェブメディアが奄美群島南三島経済新聞です。なお、みんなの経済新聞ネットワークという、国内外に139拠点あるグループの1つでもあります(2025年4月時点)。

みなさん新聞は各島に支局があり、基本的に、月曜は沖永良部島、水曜は徳之島、金曜は与論島と、曜日担当制で週に3本の記事を掲載。記者は計10名が在籍し、経営者、役場職員、ツアーガイド、島の何でも屋、ライターなどなどその肩書きはさまざまです。

月1回のオンライン会議の様子、みんなで「南3島」をあらわす3本指のポーズでパシャリ。

ウェブや紙媒体に限らず、ローカル情報誌は島も含めて全国にありますが、みなさん新聞とリトケイの中心メンバーは、実はもともと個人的にも交流のあった人たちばかり。

そうした背景がある中で、ちょうどお互いが島で学ぶプログラムを考えていたことから、「それならいっしょにやろう!」という流れになり、今回のコラボに至りました。

2月に行われたイベント「島祭」で互いの編集長の話から始まった

シマ合宿をする沖永良部島ってどんなところ?

講座は、3回のオンライン講座に加えて、沖永良部島で行われるシマ合宿の全4回。

沖永良部島は南三島の真ん中に位置する島で、知名町・和泊町の2町からなり、11,000人強の人が暮らす、日本の島ではやや規模が大きい島です。主な産業は農業で、エラブユリなどの花きや、日本一早いといわれる新じゃが、サトウキビなどを作っています。

明治の頃にはアメリカやイギリスに球根を輸出したエラブユリ

70万年前にサンゴ礁が隆起してできた島で、地下に200~300の洞窟があるといわれ、そんな洞窟を探検するアクティビティのケイビングが目玉観光の1つです。

地下には網の目のように洞窟がある(提供:沖永良部島ケイビングツアーNEXT
シマ合宿の前後にもおすすめ(提供:沖永良部島ケイビングツアーNEXT

また、歴史的に薩摩と琉球の影響を受けてきたため、文化の随所に鹿児島と沖縄双方の匂いを感じ取れます。

かつての島主の墓は琉球式かと思えば、
島流しを受けて沖永良部島に約2年暮らしたという西郷隆盛を祀る神社がある。

また、脱炭素社会に向けて、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す地方自治体のゼロカーボンシティにも選ばれており、方言「しまむに」はユネスコが発表した消滅危機言語に分類され継承活動が行われるなど、課題への取り組みも盛んな島です。

EVバスが島内を走り、災害時には非常用電源にもなる。

リトケイでもよく登場いただく石田秀輝先生もまた、そんな沖永良部島の暮らしに魅了されて移住したひとり。石田先生が90歳へのヒアリングを通して可視化した「日本の文化を創り上げてきた暮らし方の価値」では44の要素が挙げられ、そのうち30もの要素が沖永良部島に残っていると分かり、それを学ぶために移住を決めたそうです。

石田先生には、第1回目の講座でもお話しいただきます。
石田先生が2014年から毎月開催する学びの場「酔庵塾」の様子

島に学ぶ先生と先生に学ぶ島人の化学反応(前編)【特集|島だから学べること】

オンライン講座とシマ合宿で体験できること

改めて、開催日程は、7月22日(水)・29日(水)・8月12日(火)・23日(土)の全4回。カリキュラムは以下の通りです(講師陣はこちらをご参照ください)。

▼第一回
日時:7月22日(水)19:00-21:00
場所:オンライン(zoom ※後日アーカイブ動画配信あり)
講師:石田秀輝先生×みなさん新聞編集部×リトケイ編集部

【講義】「日本の文化を創り上げてきた暮らし方の価値」を石田秀輝先生に学び、沖永良部島で取材したいシマを検討。
【対話】参加者それぞれが深めたい「豊かさ」を共有

▼第二回
日時:7月29日(水)19:00-21:00 
場所:オンライン(zoom ※後日アーカイブ動画配信あり)
講師:みなさん新聞編集部×リトケイ編集部

【講義】地域の人々とのコミュニケーション方法や、取材テクニックをリトケイ編集部とみなさん新聞編集部がレクチャー。2つの取材先から担当する班に分かれる。
【対話】興味関心をもとにチームに分かれて取材したいポイントを検討

▼第三回
日時:8月12日(火)19:00-21:00
場所:オンライン(zoom ※後日アーカイブ動画配信あり)
講師:みなさん新聞編集部×リトケイ編集部

【講義】シマ合宿に備えて、取材質問事項の作成方法を、みなさん新聞編集部とリトケイ編集部がレクチャー。実際の取材で使うものを作成します。
【対話】チームに分かれて取材質問事項を作成

※オンライン講義の内容は一部変更になる可能性があります

▼最終回(シマ合宿)
日時:8月23日(土)13:00-21:00
場所:沖永良部島(知名町/和泊町)
集合場所:和泊港旅客ターミナル
講師:沖永良部島の皆さん×みなさん新聞編集部×リトケイ編集部

【フィールドワーク】沖永良部島に集合。チームに分かれてシマ取材に出かけます。取材後、皆で集まり取材の感想を共有します。
【打ち上げ】参加者それぞれが「ふりかえり」を共有。解散の宴を開催します。

奄美大島のシマ合宿での最後のふりかえり/撮影:田中洋良(奄美大島ステキカク)

シマ合宿は濃密ながらも半日と短い時間になりますが、その前後で島を楽しんでいただくことは大歓迎です!今回の講師は、私を含めて島民が2名おり、島民でもなかなか知らないレアなスポットやグルメ、文化的背景も含めて惜しみなくお伝えします。

与論島と徳之島の記者もいるので、次回の参考に島のことを教わるのもいいでしょう。隣島までは船で千円余りで行けるので、時間があれば島をはしごするのも、大あり!?

奄美大島で、参加者だけによる名瀬のまち歩きの様子。

もっとも、メインはシマ合宿。そもそも参加者は何を取材するのか?説明いたします。

沖永良部島のシマ合宿で体験できること

みなさん新聞でも取り上げた、2か所を取材します。取材は2班に分かれて行いますが、全員で移動するため、取材対象でない班も他班の取材を見学することができます。

国産コーヒー最前線!南の島の可能性を追う

沖永良部島出身の山下さつきさんが手掛ける、コーヒー農園「ノアコーヒー」を取材します。日本で飲まれているコーヒーのほとんどが海外から輸入したものですが、なんとここでは正真正銘の、沖永良部島で育てられたコーヒーから純国産コーヒーをつくっています。

コーヒー農園で来島者に説明する山下さん

世界のコーヒー生産地は、「コーヒーベルト」といわれる赤道を挟んで北緯25度から南緯25度のエリアに集中しており、気候や土壌の関係から、これまでその外側でコーヒーは作ることができないと言われてきました。

島で収穫できるからこそ、果肉を生かした焙煎を行う。

しかし、昨今の気候変動の影響でコーヒーの収穫量が大幅に減少。「2050年までにコーヒーの適作地域が半減する」ともいわれています。そんな中、2008年から長い月日をかけて島生まれの国産コーヒーを生み出したノアコーヒーさんにお話を伺います。

▼奄美群島南三島経済新聞の記事はこちら
沖永良部島のコーヒー農園を焙煎業者ら視察 国産コーヒーの生産体制を学ぶ

字からはじまる自治の力 ともに描くシマの未来

「字(あざ)」とは集落の呼称で、地域コミュニティ活動や伝統行事の担い手となっています。

住吉(すみよし)字は知名町の西部に位置する、町内でも比較的大きな字です。かつて生活用水をくみ上げるために住民が通った洞窟「住吉暗川(すみよし・くらごう)」が残り、島のウヤホ(先人)たちの暮らしの知恵と苦労を今に伝えています。

住吉暗川入口。大きな入口に圧倒されるが、これは後年火薬で拡張したもの。

この字では近年、集落散策マップの作成や字振興計画の策定など、地域資源を活かしたまちづくりの取り組みが進められています。その中心人物が、字の役員であり、知名町議会議長でもある外山利章さんです。

集落歩きの様子
後列左端が外山さん

「町づくりの原点は、足元にある“字”にある」。そう語る外山さんの視点は、議会の場にとどまらず、地域の現場で住民とともに考え、動く姿勢に貫かれています。字という小さな単位からはじまる自治の力が、今、島の未来を静かに形づくろうとしています。

▼奄美群島南三島経済新聞の記事はこちら
沖永良部島・知名町で「住吉字プロジェクト」 多世代で「字」の未来考える

打ち上げ(BBQを予定)

取材を終えても、シマ合宿は終わりません!お楽しみの打ち上げです。沖永良部島の島民でもある、みなさん新聞副編集長のお庭で、大海原を眺めながらBBQと洒落込む予定。耳を澄ますと、どこからともなく三味線の音色が聴こえてくるかもしれません…。

こんな場所です、素敵でしょう?
(左から)沖永良部支局長のネルソン水嶋と副編集長の古村英次郎、ある夕暮れの乾杯。

取材を振り返り、濃密な経験をともに過ごした仲間たちと、大いに語り合いましょう!

※天候状況により屋内での開催になります
※記事作成は後日の宿題となりますが、こちらは自由参加となります。

奄美群島南三島経済新聞の記者からあなたへ

最後に、みなさん新聞の記者から記事をお読みのあなたへのメッセージです。

各人のプロフィールはこちらの記事をお読みください。

村上 竜雄(奄美群島南三島経済新聞 編集長):
「旅先としての“島”ではなく、そこで生きる人の時間を体感してみたい。ローカルメディアだからこそ出会えるのは、観光では通りすぎてしまう暮らしのリズムや、ふとした会話の奥にある日々の営みです。今回のツアーでは、島の空気に身をあずけ、人と向き合い、感性をかたちにしていく体験が待っています。交わされる言葉やまなざしが、かけがえのない人との縁を育くんでくれることでしょう。新しい出会いを楽しみにしています。」

古村 英次郎(奄美群島南三島経済新聞 副編集長):
「沖永良部島の日々の暮らしを感じていただけ、日本の文化を創り上げてきた44の要素が未だ色濃く残るこの島で、島民とのコミュニケーションを通して『ふっ』と心地よい空気を感じられるような時間にコーディネートさせていただきます。皆さまとお会いできるのを現地でお待ちしています!むーるまちゅんどー!」

江藤 善真(与論支局 支局長):
「与論島に移住して4年、縁あって、これまでまったくの未経験だった私が記者として活動を始めました。記事が劇的な変化をもたらすことはなくとも、地域を温かく育み、人々をゆるやかにつなぐ力となることを願って取材しています。そして、結局は取材を通して私自身が地域に育まれていると感じています。今回、この講座のシマ取材体験で、そんな育み、育まれる感覚を少しでも感じてもらえれば嬉しいです。」

松岡由紀(徳之島支局・記者):
「沖永良部島を舞台に、地域に根ざし、島の未来を切り拓く“キーパーソン”たちを訪ね、島の空気を体感しながら御自身の言葉で島の物語を綴る経験を提供します。海と大地に、個性あふれる島人たち。五感を研ぎ澄まして取材する時間は、非日常であり、もう一つの世界観に出会う時間かもしれません。書くことが好きな人、島が好きな人、日常とは違うリズムに身をゆだねたい方。南の島でお待ちしています。」

ネルソン水嶋(沖永良部支局 支局長):
「もし、いつか沖永良部島や南の島に行ってみたいと少しでも思っているなら、現地を深く知ることができ、将来にわたって大切なつながりができるかもしれない、今回が最高の機会です。私たちと、沖永良部島のシマビトたちが、あなたを待っています。」

沖永良部島の紹介動画です、島の雰囲気を知る参考にご覧ください。

参加費

参加費:43,780円(税込)

お申し込み:こちらの「リトケイストア」よりチケットをお求めください。
※お申し込み時に登録いただいたメールアドレス宛に後日、
講座の手引きや受講生コミュニティのご案内をお届けいたします。

参加費に含まれるもの:
・オンライン講座全3回+シマ合宿受講料
・書籍『世界がかわるシマ思考』1冊
・創立記念講座ノベルティ「スクールバッグ」
・合宿時の夕食(解散の宴・軽食飲み物つき)
※宴の二次会以降は有志のみ・実費負担でのご参加となります

参加費に含まれないもの:
・シマ合宿の集合場所までの交通費
・シマ合宿時の宿泊滞在費
※合宿地の集合場所までの交通と宿泊は、ご自身でのご手配をお願いします

沖永良部島のアクセス・滞在情報

沖永良部島までの交通・島内宿泊は、各自にてご手配をお願いいたします。行き方については、おきのえらぶ観光協会のホームページをご覧ください。

沖永良部島へのアクセス | 特集 | 【公式】沖永良部島観光サイト「おきのえらぶ島の旅」

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主催:認定NPO法人離島経済新聞社
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