つくろう、島の未来

2024年11月25日 月曜日

つくろう、島の未来

長寿の薬草として知られる「長命草(ちょうめいそう)」の産地、与那国島(よなぐにじま|沖縄県)で、新たな特産品「長命草酒」が誕生し、与那国島・石垣島での限定販売を経て、全国展開される。長命草の利活用について、生産者や酒の造り手に話を聞いた。

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画像提供:合名会社崎元酒造所

いにしえから利用されてきた健康食材、長命草

長命草はセリ科の植物で、関東以西の本州から九州、奄美群島、沖縄、台湾まで広く分布している(和名:ボタンボウフウ)。日本最西端の島・与那国島では、古くから祭祀などの儀礼食や日常の食事に利用されてきた。

与那国島の長命草は海風の吹き付ける岸壁に自生し、強い日光と潮風にさらされる環境で生き延びることから、ポリフェノールやミネラルを豊富に含む。「クロロゲン酸」「ルチン」など抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富で、キャベツの5倍以上の食物繊維、プルーンの約6倍の鉄分、ビタミン、カルシウムなどを含む事が成分分析により分かっている。長命草の健康効果に注目が集まり、近年では、健康補助食品の原料として栽培されている。

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海岸の岩場に自生する長命草(画像提供:与那国薬草園)

与那国島では「長命草を一株食べれば1日長生きする」と言い伝えられ、大葉の代わりに刺身に添えたり、天ぷらにしたり、葉野菜の代わりに食べるなど、長命草の栄養素の高さや殺菌効果を経験的に知っていた島の人々は、古来より生活の知恵として長命草を取り入れてきた。与那国島で長命草を生産する杉本和信さんによると、古くから長命草を食用していたのは与那国島と奄美群島の一部だけだという。

「海に囲まれた環境の与那国島では、塩害に弱い葉野菜の代わりに500年以上前から長命草などの野草が利用され、日々の食材や薬代わり、行事の伝統食などとして伝えられてきました。長命草は海岸の岩場などに自生し、紫外線の強い環境を生き抜くためにポリフェノールを増やし、海風が運ぶ海水のミネラルを栄養にして育つ、島の環境に適応してきた植物なのです」と杉本さんは語る。

杉本さんの薬草園では、琉球石灰岩を含んだ土で農薬を一切使わず、時折海水を散布するなど、自然環境を再現した畑で長命草が栽培されている。収穫した長命草は青汁やサプリメントなどに加工され、全国に流通している。

与那国特産「花酒」の製法を活かし蒸留酒に

2016年1月、与那国島の新たな特産品として「長命草酒」が誕生した。

開発したのは、泡盛を製造する合名会社酒造崎元酒造所。「長命草酒」は、全国で与那国島だけに製造が許されている特産品「花酒(はなさけ)」をベースにした製法で造られ、現在製法特許を出願中。沖縄県工業技術センターや食品研究開発の会社に協力を得て、小仕込みで試験醸造を行い開発した。

タイ米を黒麹造りし、泡盛酵母を仕込んだもろみに、与那国薬草園で栽培・収穫した長命草を刻んだものを加えて発酵させ、常圧蒸留し、原酒の中でも香味成分の豊富な初留(しょりゅう)を抜き取り、飲みやすい25度に割り水した。パッケージは、沖縄県外の健康への意識が高い女性を意識し、これまでの泡盛にない明るいイメージでデザインした。

「長命草酒」を発売した合名会社崎元酒造所の崎元俊男(さきもと・としお)さんは「与那国島伝統の長命草をお酒にすることで島外に発信したいと考え、構想から2年をかけて商品化しました。長命草酒を造っている最中は、蔵にハーブのような甘い香りが立ち込め、落ち着いた気分になります」と話す。

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崎元さん(2列目右)と造り手の皆さん(画像提供:崎元酒造所)

崎元さんがおすすめする飲み方は、すっきり飲めるオンザロック。また、お湯割りすると香りがよく立つという。「お酒の苦手な方には、温かいコーヒーや紅茶に少し垂らしていただくのもおすすめです」(崎元さん)

与那国島・石垣島での限定販売時には、地元の評判も上々。11月25~27日、沖縄セルラーパーク那覇(那覇市奥武山)にて開催された「離島フェア2016」では、優良特産品「特別賞」にも選ばれ、2016年12月、満を持しての全国販売を開始する。


【関連サイト】
与那国薬草園
合名会社崎元酒造所

     

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