つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

奄美市(あまみし|鹿児島県)では、2020年までに200人のフリーランス育成と50名以上の移住者誘致を目指し「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を推進する。2017年2月には新たにオンライン動画学習サービス「Schoo」と提携し、奄美市の住民や市に本籍地を置く出身者に対して教育機会を提供している。

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フリーランスが最も働きやすい島へ向けて

奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)は、世界自然遺産登録の候補地として推薦された豊かな自然に恵まれ、本場奄美大島紬やシマ唄など、魅力的な独自の文化を誇る。一方、本土の経済圏から遠く、若年層の働き口が少ないことが課題に挙げられている。

奄美市では、若年層の定住を増やすための雇用の受け皿として、本土との距離を克服しやすいIT(情報技術)関連産業に着目し、産業育成を進めてきた。2012年にはIT企業誘致や地元企業のビジネスを支援するインキュベーションオフィスを整備し、実力あるエンジニアがUIターンするなど成果が現れている。

市は、この流れに乗り2015年に「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を策定。2020年までに200人のフリーランス育成と50名以上の移住者誘致を目指し、ICT(情報通信技術)を活用した新しい働き方を支援している。

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フリーランスを対象とした無料講座の様子

2015年には、市役所内にフリーランス支援窓口を設置。市民からの問い合わせや相談に応じながら、連携協定を締結したランサーズ株式会社によるクラウドソーシング(※)の実地研修や、未経験者でも比較的参入しやすい記事制作の無料講座を実施してきた。

※群衆(クラウド)と業務委託(ソーシング)を組み合わせた造語で、企業などが社外の不特定多数の人に業務を委託すること

また、税務署の協力を得て、フリーランスで働く場合に欠かせない確定申告の税務講座も開講し、個人事業主をサポートしている。

2016年にはICTを活用したさらなる仕事創出を目指し、ストックフォト大手のピクスタ株式会社や、ハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」などを運営するGMOペパポ株式会社と連携協定を締結。写真撮影やハンドメイドなどのスキルを活かして、市民が島外の市場に作品を販売できる販路を紹介し、提携先企業から派遣されたプロの講師による無料講座も実施した。一連の活動を集約して広報できるよう、公式ウェブサイトも開設した。

フリーランス島化計画サイト

「フリーランスが最も働きやすい島化計画」公式サイト

「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を進める奄美市商水情報課の稲田一史さんは、「講座の受講生は30〜40代の女性が中心。世界自然遺産登録を見据え、需要の増加が見込まれるストックフォトの講座では、副業を希望する男性の姿も見られます。島にいながらプロの指導を無料で受けられるということで、受講生の皆さんも大いに刺激になるようです。今後も島内のクリエーターのスキルアップを支援していきたい」と話す。

一方、奄美市内では光ブロードバンド環境が未整備の地域もあることから、環境整備が進められている。奄美空港から近く、島外からのビジネス客も多い市北部の笠利地区は光ブロードバンド環境の整備が遅れていたが、2016年10月にコワーキングスペース(※)を整備。地元のフリーランサーはもちろん、ビジネス客も安価に利用できる仕事場として活用されている。

※異なる職業や仕事を持った人が集まり、施設を共有する仕事場

島外の出身者も利用できる無料動画授業

「Schoo」の講座を受講する場合、オンライン授業にログインし、「着席ボタン」をクリックすると「着席しました!」という表示が画面に現れる。そこで、講座の活用を促すため「奄美だよ!全員着席!」のキャッチコピーを用いたキャンペーンが実施されている。

「Uターンに興味のある出身者に『奄美で面白いことをやっているぞ』と伝われば」と稲田さんは話す。楽しげな名付けに、奄美のシマッチュ(島人)のユーモア精神が見え隠れしている。

「動画授業は、第一線で活躍する講師陣の生の声を聞くことができるのが魅力です。話題の新商品の開発企業の社員から直接話が聞けるなど、活用次第で普段なかなか得難い貴重な経験ができると思います」(稲田さん)。

キャンペーンの詳細は、「フリーランスが最も働きやすい島化計画」公式ウェブサイトで確認できる。


【関連サイト】

フリーランスが最も働きやすい島化計画

     

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