奥尻島(おくしりとう|北海道奥尻町)にある奥尻高等学校は2017年度入学生より生徒の全国募集を開始する。2016年度に道立から町立へと移管された同校では、島全体を学び舎と考え、さまざまなカリキュラムが実施されている。
来年度より生徒の全国募集を開始。島外生への補助も充実
北海道奥尻高等学校(以下、奥尻高校)は2,807人(2016年10月31日現在)が暮らす、北海道南西部に浮かぶ奥尻島唯一の高校だ。
同校は、2016年(平成28年)4月に道立から奥尻町立として移管。その背景について、俵谷俊彦校長は「町立となった背景には生徒数の減少があるが、町の高校となったことは、島を挙げて高校を盛り上げようという機運が高まっている現れでもある」と話す。
町立高校となった奥尻高校は2017年度入学生から生徒の全国募集を開始。奥尻町教育委員会の桜花さんは「島の人口が減っていく中で、重要なのは次世代を担う子どもたちへの教育。地元の子だけではなく島で学びたい全国の生徒に門戸を広げた」と全国募集を行う経緯を話す。昨年から準備を進め、今年8月には島外の生徒の下宿先となる民宿も確保した。
島外生に対しては補助制度もある。島外生が生活する民宿の下宿代(月5万円)のうち、毎月町からの補助(月1万円)があるほか、里帰りの際の交通費実費の半額(上限3万円/年4回)や保護者が来島する際の交通費実費の半額(上限3万円/年2回・1人分)についても補助制度がある。また、昼食代の補助や民宿から高校までの通学に使用するバスも無料になるなど、日々の生活に対する補助も充実。島での生活について、桜花さんは「船が止まれば島に生活物資が入ってこなくなります。そんな環境で3年間暮らすうちに、先を見通す力が自然と身につくはずです」と話す。
島をまるごと学校とみなす、「まなびじま奥尻プロジェクト」
奥尻高校が実施する「まなびじま奥尻プロジェクト」は、島全体を学び舎と見立て、地域の人や島の自然を学びの要素として活用するカリキュラムだ。
総合的な学習の時間では「スクーバダイビング」と「奥尻パブリシティ」の2つのカリキュラムから選択する。
普通科高校のカリキュラムとしてはめずらしい「スクーバダイビング」の授業では、3年間かけて「どうやって命を守るのか」という講義から機材の扱い方、プールでの練習、海での実習などを段階的に学んでいく。
一方の「奥尻パブリシティ」は、島にあるさまざまな課題をどのように解決していくか考える探究的な学習。今年度は生徒が「島の広報」の課題について考え、役場職員に向けて提言を行った。
そのほか、奥尻島で仕事をしているなど、島の各分野のプロフェッショナルから講話を聞き、島のさまざまな課題について考える「町おこしワークショップ」や、インターネット環境を活用して首都圏の大学生とテレビ電話をつなぎ、モニター越しに相談や個別指導が受けられる「Wi-Fiニーネー」などさまざまなカリキュラムが用意されている。
俵谷校長先生は「奥尻高校は普通科の高校ですが、島には水産業に携わる人、観光業に携わる人、建設業に携わる人、それぞれの道のプロがいます。そういった島の方々からも学んでほしい」と話す。また、「高校3年間を島で暮らし、学び、島への想いを深めるとともに、地元での貢献の仕方を学んでくれたらうれしい」と期待を寄せる。
今後、11月12日(土)、13日(日)には奥尻島や奥尻高校を知るための学校見学会も予定している。
【お問い合わせ】
北海道奥尻高等学校 TEL:01397-2-2523
北海道奥尻高等学校ホームページ