7月30日、伊勢湾と熊野灘の境目にある志摩諸島の答志島(とうしじま|三重県鳥羽市)桃取町(ももとりちょう)に焼きたてベーカリー&カフェ「島のパン家 HaNaRe(以下、ハナレ)」がオープンした。同島出身の徳本江里さんと夫・篤司さんがUIターン後、住居兼店舗として古民家を改修し、開業した。
島のニーズに合わせて開業。補助金や創業融資を活用
現在、桃取町には258世帯759人(男性354名・女性405名)が暮らす。漁業が基幹産業で、島の漁師たちの間には出漁時にパンを食べる習慣がある。これまでは本州に寄った際、コンビニエンスストアで菓子パンを購入し、冷凍保存して食べてきた。また、島内には商店と居酒屋しかなく、日中に家族連れで立ち寄れる飲食店がなかった。
「母に島へ戻る話をしていた時、『喫茶店があるといいわよ』『パン屋さんもいいわよ』と聞いていたんです。漁師町なので基本的には和食が中心なんですね。だからか朝食だけはパンを食べている人が多いんですよ」(江里さん)
「この町は、パンを食べる人の数に対してパン屋さんが少なかったんです。わたしは専門学校で調理と製菓を学びました。これまでも飲食業をしてきたので、この町でも何か調理の仕事をしたいと思っていました」(篤司さん)
2015年10月に知人経由で桃取町の古民家を知り、居住を決定。島での創業を相談していた鳥羽商工会議所の薦めもあり、パン屋を始めるため1階の複数部屋を改修して住居兼店舗にした。改修費には鳥羽市が人口減少対策として取り組む移住起業者施設整備事業費補助金や日本政策金融公庫の創業融資なども活用した。
ハナレでは、町民が日常食にする食パンや総菜パンのほか、メカブやアオサ、カキなど島の産物を使ったパンも販売。カフェスペースでイートインもできる。
「漁師のみなさんは、トレー2つに山盛りで買って帰ります。カフェスペースも、お子さん連れの家族やおばさん方がお茶を飲みに来てくれたり、夕方にソフトクリームを食べに来てくれたりもします」(篤司さん)
「『おいしいよ』『ありがとうね』という声を聞くと、始めてよかったなという気持ちになります」(江里さん)
島のパン家 ハナレという名前は、「屋」ではなく「家」になっている。家族のような憩いの場になるようにという思いを込めて2人で名付けた。これからも町民に親しまれ続ける店づくりを目指す。
「地元の人からは、パンだけでなく、『お弁当をつくってほしい』『誕生日ケーキを頼みたい』と聞かれます。今後も自分たちができることは何かを考えていきたいですね」(篤司さん)
【関連サイト】
島のパン家〜HaNaRe〜 facebookページ