11月14日、 持続可能な未来を“シマ” からつくる参加型カンファレンス 「未来のシマ共創会議(シマ会議)」(主催: 未来のシマ共創プロジェクト実行委員会、運営:離島経済新聞社)を初開催。当日は、3つのテーマでワークショップも開催されました。
全国の島から「シマ会議」に集まった3人のファシリテーターと、島にゆかりのある参加者、島と関わる企業、島ファンなどが、それぞれのノウハウやアイデアを寄せ合ったワークショップの結果はいかに?「シマ会議」参加者の声もお届けします。
>>前回の記事「競争から共創へ。持続可能な世界をシマからつくる「未来のシマ共創会議」開催レポ(第1弾)」はこちら
島の住民になりきってアイデアを共創するワークショップ
ワークショップでは、シマ(テーブル)ごとに「テーマ島」 を持つ「テーマオーナー」を設定。メンバーと共にテーマ島の「課題」「現状の取り組み」「ありたい姿」を掘り下げた後、「アイデアを共創」する議論を展開。
なお、シマのメンバーはワークショップ中はテーマ島の住民になりきり、解像度高めにアイデアを出し合うのがポイント。「わたしたち○○島の○○における○○の課題は、○○○○で解決する!」というアウトプットを2時間のワークショップで導き出します。
「人材不足を超える!」(桂島・利島・中島・宮古島)
ファシリテーター:勝眞一郎(離島経済新聞社理事、サイバー大学教授、総務省地域情報化アドバイザー 、鹿児島県 DX推進アドバイザー/奄美大島在住)
テーマ島が抱える課題に参加者それぞれが自分ごととして向き合い、「5年後の2029年にどんな姿になっていればよいか」と思考をめぐらせる時間。その後、発表されたアイデアには「桂島のカツラをつくる!」「全国の中島の関係人口をみんな中島家の家族とする!」など、一見びっくりするようなアイデアもありましたが、いずれも人材不足を超えるためのユニークなものばかり。
ワークショップ後には「今後、島に行くね」という話題もしっかり飛び出していました。テーマ島の4島は、桂島が約80人、利島が約300人、中島が約2,000人、宮古島が約55,000人と、人口規模が1桁ずつ異なり、課題解決策の解像度に違いが出ました。
島の誰が誰にどんなことをするのかと、具体的にイメージするには、人口規模が少ない島の方が分かりやすいですね。(勝眞一郎)
「生きるための必要を確保する!」(女木島・答志島・男鹿島・奄美大島)
ファシリテーター:伊藤奨(株式会社 TIAM 代表、一般社団法人アットアイランド代表、『東京都離島区』一丁目一番地在住/三宅島在住)
このワークショップで求めたのは 「普段は思いつかないアイデアの数々」「一緒に島を考える人々との新たな関係性」「どんなに小さくても役割を見出す」「ビールを飲みたくなるような達成感」。
「生きるための必要を確保する」という壮大なテーマを掘り下げるため、交通・住まい・仕事・教育・医療の分野で課題を絞り込み、女木島・答志島・男鹿島・奄美大島の「2029年の未来の姿」「2025年のアクション」について思考しました。
偶然この場に集まったメンバーですが、共通のテーマを多様な視点からワークすることで、テーマオーナーだけでは思いつかない領域の意見やアイデアが生まれていました。なかには早々に具体的な行動宣言が生まれたグループも!共創というプロセスによって、今後も繋がっていける関係性が生まれていました。 (伊藤奨)
「子育て層がやってくる!」(三宅島・小豆島・屋久島・徳之島)
ファシリテーター:鈴木哲也(LINE ヤフー株式会社 サステナビリティ推進統括本部 CSR本部本部長、リトウ部)
テーマ島の三宅島・小豆島・屋久島・徳之島は、それぞれ子育て世代向けの取り組みの先行事例も持っており、これから実施する施策のアイデアを持っていたこともあり、非常に具体的な議論が交わされました。
子育て層に対する支援は多方面に渡ることから、「島にくるきっかけをつくるには?」「教育の魅力化をするには?」などの問いに加え、島の状況に合わせた医療・住居・制度・コミュニティなど幅広い問いについて、ディスカッションが交わされました。
特にテーマ島のオーナーが「子どもの時に島をどう感じたか?」「親世代から言われたことなど」の体験談から、「今の子どもたちにはこうしてあげたい」という想いも参加者に伝えられ、「島に昔からある古き良きものを残すこと」と「これからの島に必要な新しいことを始める」という発表が印象的でした。(鈴木哲也)
シマ会議、どうだった?参加者の声
「頭がぱんぱん!」という声があちこちから聞こえてきた「シマ会議」の1日。全国の島々から集まった人や、 島に関わる企業や団体、関係省庁や市町村の職員や首長に、島が大好きな個人や大学生など、「シマ会議」に集まった方々のリアルな声を紹介します。
「シマ」は心を結びつける魔法
事前勉強会も共創会議当日も、活発な意見交換が繰り広げられました。 特に感じたのは、離島の話題が生む 「Linkage (つながり)」の力です。数年ぶりに再会した人とは昨日の続きを話すように親密に、初めて出会う人とは瞬時に「同志」になれる不思議な感覚。「シマ」という言葉が、私たち日本人の心を温かく結びつける魔法だと改めて気づきました。(アミタホールディングス株式会社 取締役兼CGO 岡田健一)
さらにシマが好きになりました
全国から来た仲間がトークセッションやワークショップに参加し、シマの課題や魅力について学び、 話し合うことができました。そして、それぞれが持つ「シマあるある』も出るわ出るわ。それぞれは小さく遠いシマだけど、皆さんのシマに対する想いの大きさを知り、心の距離は顔を合わせてお話しすることでとても近くなったと思います。みんな、さらにシマが好きになりました。(大和リース株式会社 辻大輔)
ワクワクが止まらない1日でした
「ミライの島を共につくろう」の掛け声で全国各地から集まった300人。一人ひとりが日本列島という大船団を未来に運ぶ漕ぎ手で、ただの乗客は一人もいない。そんな、未来への解像度が高まる場に居合わせたことを誇らしく思うとともに、自分もその一員であり続けたい!とワクワクが止まらない1日でした!(広島県庁職員 河内佑真)
「次は島で会いましょう」の言葉通り!
島という共通点だけで、 たくさんの人とつながることができました。「次は島で会いましょう」と合言葉通り、共創会議で知り合った人と島で再会することも学んでよかっただけでなく、次のアクションにつながる場だったと思います。僕はまず、奄美で島の課題について勉強し合える場をつくります!(奄美大島 株式会社ステキカク代表 田中良洋)
自分にできることがはっきりした
島と自分の生き方を模索するなかで、共創会議に参加しました。全国から、それぞれのカタチで島と関わる方が集まっており、人と話せば話すほどに視野が広がっていきました。自身の想いや取り組みを話せて、無碍にせずに聞いてくれる方々のおかげで、自分にできることが少しはっきりした気がします。(桂島 大学院生 内海凛香)
細胞が喜びだすような本物の言葉
ごく個人的な悩みですが、私はここ最近「インプット怖い病」に罹っていました。年に何度も講演だの研修だのに赴き新しい学びをインプットをする機会を得ることで、いつの間にか自分で経験したからこそ紡ぎ出せた言葉で編まれた辞書が、誰かの正解っぽい言葉にすげ変わってしまうのではないかという不安のようなものを抱えていたのです。
だからこそ、濃密なインプットになりそうな未来のシマ共創会議には、どこか似たような不安を抱えながら向かったのだけど…… 結論、心配無用でした。未来のシマ共創会議を舐めてた。
誰かの正解っぽい言葉なんてそこには存在しなく、細胞が喜びだすような本物の言葉で語られる島への敬意と共創への希望に満ちていました。またあんな場が創られるなら何をおいても行きたいです。(認定NPO法人 全国こども食堂支援センター ・むすびえ 末岡マリコ)
「島だからこそできる」 希望と可能性
会場では皆さまのシマへの熱量に圧倒されました。さまざまな立場からシマを想う大勢の方々と繋がれたことは、これからの希望だと感じました。
『島は危機感が共有しやすいから可能性がある』だからこそ、島と島が繋がることで『島だからこそできる』に変えていける様に徳之島でも模索していきたいです。(とくのしま伊仙まちづくり協同組合 事務局長 大保健司)
島好き同士の化学反応が刺激的!
いくら自然が豊かでも、その魅力を伝える教育研究機関は限られた島にしかありません。博物館で鳥を研究する私の立場や経験を、未来のシマ創りに活かせたらと思い参加しました。
異なる得意分野を持つ島好きが集まり、お互いに知らない世界を語り合う化学反応は超刺激的。島の酒や肴が最高の触媒でした。(千葉県立中央博物館分館 海の博物館 研究員 平田和彦)
同志と呼べる人と出会えた
シマに対しての関わり方は様々あるけれど、課題や熱意は近いものがあり、同志と呼べる方たちと出会えました。「今度島に行くね」、「その課題を一緒に解決したい」といった言葉が会場内では聞こえ、未来のシマ共創会議から全国の離島で新たな動きが生まれる、そんなワクワクがあふれるイベントでした。(利島村役場 中川晃介)
背中を押されました!
島にはコスモが存在していて、流行り廃りとは無縁の普遍性がより多く残っていると感じて暮らして来ました。今回、哲学者の方からローカルゼブラの方まで、異なる島でそれぞれのやり方で島に生き、関わる人たちの珠玉の言葉に背中を押されました!(徳之島 伊仙町 松岡由紀)
「シマ会議」を動画でチェック!
リアル会場の様子はこちらの動画でもご覧いただけます。次回の「シマ会議」もどうぞお楽しみに!
「未来のシマ共創会議」とは?
国内417島・約170市町村 総勢約90万人が生きる、離島地域から世界をかえる実践者が集い、日本が誇る産官学民の叡智と熱量が交わる参加型カンファレンス。 初開催となった今年は『ritokei』 や 『世界がかわるシマ思考一離島に学ぶ、生きるすべ』の登場人物がリアルに集結し、5つのテーマでトークセッションを展開。 その他、ワークショップ 展示・物販・交流ブースなど「学び」と「出会い」 を来場者が楽しみました。
5つのテーマで展開したトークセッションの様子は、動画でご覧いただけます。
「未来のシマ共創会議2024」概要
日時:2024年11月14日(木)10-18時(18-20時アフターパーティ)
場所:東京ミッドタウン八重洲カンファレンス 5階(東京駅直結)+オンライン
参加人数:約300人
【協賛】
大和リース株式会社
株式会社エンデバー
アミタホールディングス株式会社
リファインホールディングス株式会社
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
AMAホールディングス株式会社
株式会社雨風太陽
一般社団法人ツギノバ
【物品協賛】
株式会社宮古島の雪塩
https://www.yukishio.com
農業生産法人株式会社西表島フルーツ
https://www.iriomotejima-fruits.net
ごと株式会社
https://nagasakigoto.co.jp
後藤緋扇貝
https://hiougigai.com
株式会社オイシーフーズ
http://www.oisea.com/
有限会社八重泉酒造
https://yaesen.com
株式会社奄美大島開運酒造
https://lento.co.jp
八丈興発株式会社
http://www.hachijo-oni.co.jp/
尾畑酒造株式会社
https://www.obata-shuzo.com/home
干場洋介 (北海道奥尻島)
【協力】
環境省
https://www.env.go.jp/index.html
POTLUCK YAESU
https://www.potluck-yaesu.com
利島村
https://www.toshimamura.org
知名町
https://www.town.china.lg.jp
アイランデクス
https://car-okinawa.com/
【後援】
国土交通省
内閣府総合海洋政策推進事務局
【主催】
未来のシマ共創プロジェクト実行委員会
【運営】
特定非営利活動法人離島経済新聞社
東京在住、2014年より『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。鹿児島県酒造組合 奄美支部が認定する「奄美黒糖焼酎語り部」第7号。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。ここ数年、徳之島で出会った巨石の線刻画と沖縄・奄美にかつてあった刺青「ハジチ」の文化が気になっている。