離島の課題と可能性を学ぶオンライン勉強会開催中
11月14日(木)、東京ミッドタウン八重洲カンファレンスで「未来のシマ共創会議」が開催されます。
国内417島の有人離島は、人口減少・高齢化・地球沸騰化等の課題に対し、新旧の知恵とテクノロジーを活用した取り組みが展開される「日本の未来の先進地」。そんな離島を舞台に持続可能な世界をつくる共創を生み出す参加型イベントです。詳細は特設ページをご覧ください。
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当日まで、毎週木曜20~21時半に、共創会議の参加者を対象に、実践者や有識者から離島の課題と可能性について事前にインプットできるのオンライン勉強会を開催しております。テーマは、インフラ、資源の活用、医療、子育て魅力化、お金の話など……離島の持続可能な社会において直面するものばかり。
島々で現実に起こっている状況や取り組みを知っていただくことで、当日のセッションやワークショップがより立体的なものになるかと思います。そこで、勉強会の様子が分かる短めのレポートをご紹介。勉強会は共創会議終了前後までアーカイヴ視聴できますので、安心してご参加ください。
ここからは、リトケイのプロボノチーム「うみねこ組」の鈴木良壽さんが、事前勉強会Vol.7「島の課題と可能性×防災」レポートをお届けします。
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はじめまして。うみねこ組のシティーボーズ鈴木です。
千葉県在住の私ですが、沖縄にある南大東島で3か月キビ刈りのお手伝いをしていたことがありました。また、三線の音色を聞きながら、島酒が飲みたいなと日々妄想中です。
第6回目の勉強会のテーマは、「島の課題と可能性×子育て教育環境」。
与路島で離島留学生が暮らす「与路グリーンハウス」の里親をしていらっしゃる藤田誉亮さんと、東隣の請島で池地小中学校存続委員会の事務局を勤めていらっしゃる林和樹さん。そして、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえのプロジェクトリーダー森谷哲さんと、NPO法人HUB&LABO Yakushima代表理事の福元豪士さんの4名をお迎えして、シマぐるみの子育てや教育環境づくりについてお話しいただきました。
何もない、から創られるシマ。与路島・請島で豊かさを育む
もともと千葉県千葉市に住んでいた藤田さんは、ご自身のお子さんを「海の子留学」に通わせたい!などの理由から、2024年4月に家族で与路島に移住。
「海の子留学」とは、町外から小中学生を迎えて、住居施設の「与路グリーンハウス」で共同生活を送りながら、与路小中学校へ通うプログラムになります。
現在、与路小中学校は全校生徒6名で、全員が海の子留学で来た子どもたちという状況なんだそう。
生徒6名に対して教員10名の体制は、非常に濃密な教育環境だと話す藤田さん。ほぼワンツーマンの指導が実現することで、基礎学力も向上し、学習に対する姿勢や態度が変わってきた子もいるようです。
与路島で学んでいるからこそできるようになることがあり、できることが増えると積極的にものごとに関わろうとする子どもたち。そんな子どもたちが増えていけば、ないものではなく、あるものに目を向けて、どうやって心豊かな暮らしを創り出せるか考える文化も芽生えていくのかもしれませんね。
次にお話しいただいたのは、奄美市出身で、請島に暮らす林さん。島暮らしは2004年に島内の池地郵便局へ配属になったことがきっかけ。お子さんが卒業後、2014年に生徒児童数がゼロになり、休校になった池地小中学校のことを語ります。
事態を受けて「このままではいずれ無人島になってしまうのでは?」と感じたと、林さん。学校行事がそのまま地域行事として実施されていたこともあり、急に地域に元気がなくなったと感じたのでした。
そこで、林さんは池地小中学校存続委員会を立ち上げ。子どもがいる里帰り中の出身者に声を掛け、子育て環境のよさを語り、仕事や住居のサポートを約束などを行った甲斐もあり、小中学校は2017年に再開。現在の児童生徒数は、中学2年と小学6年が1名ずつの計2名、教員が7名の体制で運営されており、今後も継続した取り組みを訴えます。。
なお、池地小中学校は、水泳の授業は実際の海で行うなどの自然環境に溶け込んだ授業が魅力と話す林さん。インターネット環境は今年整備されたスターリンクによって、与路島と同様にオンライン授業も充実しているそうです。
地域にとって学校がどんな役割をもっているのか、非常に考えさせられるお話しでした。
地域の交流拠点として高齢者が活躍する島のこども食堂
3人目にお話しいただいたのは、むすびえのプロジェクトリーダーの森谷さん。
こども食堂の第一目的とは、子どもの貧困対策ではなく、地域の交流拠点だと考えている、と森谷さん。
こども食堂という場は、子どもも大人も含めて、多様な人とのつながりを生み出し、地域に安心して子育てできる環境をつくります。それは、大人がホッと一息つける環境であり、かつ子どもたちがさまざまな人と触れ合い、豊かに育つ環境でもあるのかなと感じます。
森谷さんは、実際に島で行われているこども食堂についても紹介。東京の伊豆大島では、コロナ禍などもあり交流が減っていたことを背景に、高齢者が活躍する「大島食堂」がスタート。お母さんたちは料理をつくり、お父さんたちは子どもの遊び相手をするなど、多世代での交流の場が生まれているそうです。
観光地としてだけでない、人類の宝としての屋久島を伝える
最後にお話しいただいたのは、やっくんこと福元豪士さん。
ある日、お子さんがつぶやいた「屋久島から地球が見える」という一言を体現するため、屋久島という小さな島の大きな世界を教材に、どのような気づきや学びを深めていくか、問い続けながら取り組みを進めていらっしゃいます。
屋久島の子どもたちは、口を揃えて「屋久島にはなにもない」と言うそうです。しかし、中学や高校を卒業して、屋久島を出ていく前から、ここにある大きな世界に気づけないか?と問いながら、さらに考えを深める福元さん。
現在は、屋久島型ESD(※)をつくりあげるため、教育委員会の伴走支援をしています。小中高それぞれの間にあるギャップを埋めることに重点を置きながら、キャリア教育のガイドラインを作成。勉強会では実際にその資料を見せてくれました。
※持続可能な開発のための教育
福元さんからは、「地域づくり=教育の本質」では?という考えも共有いただきました。地域をベースにものごとを捉えられる人が増えることが、その地域の持続可能性を高めることにつながるのかもなぁ…などと考えたお話でした。
文:鈴木良壽(うみねこ組)
未来のシマ共創会議、参加受付中です。
未来のシマ共創会議への参加チケットは、イベント前日の11月13日23:59まで販売中です(オンライン参加は上限なし、会場参加は完売し次第終了)。繰り返しになりますが、すでに終了した勉強会についても、共創会議の終了前後までアーカイヴ視聴が可能となります。
離島経済新聞社が、「なつかしくて あたらしい ミライの島を 共につくろう」をテーマに、産学官などの垣根を越えて語り合い共創するまたとないイベントです。オンラインでの参加や後日視聴も大歓迎。奮ってご参加ください。
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