つくろう、島の未来

2024年05月02日 木曜日

つくろう、島の未来

2021年にユネスコの世界自然遺産に登録された、徳之島(とくのしま|鹿児島県)。長寿と子宝の島としても知られるこの島に自生する野生の島みかん「シークニン」は、島人たちの間で薬の代わりに利用されてきました。

近年、このシークニンに、認知症の予防や抗アレルギー作用など、さまざまな健康効果がある成分が豊富に含まれることが分かってきました。サティス製薬「ふるさと元気プロジェクト」では、シークニンのアンチエイジングや美白の効果に着目し、きらりと光る化粧品の原石素材として新たな可能性をひらいていきます。

サティス製薬原料開発担当の小沼さんとリトケイがシークニンの産地・徳之島を訪ねるシリーズの3回目では、「ヤマ・シークニン果汁」製造元のダイキチ食品株式会社が自社栽培に取り組むシークニン畑を訪ね、20年来シークニンに携わる大橋カツミさんにお話を伺います。

第1回 世界自然遺産・徳之島で育つ「シークニン」。野生のパワーを化粧品原料に
第2回 皮ごとしぼった徳之島シークニンが化粧品に変身。生産者も驚く美容効果
第3回 徳之島のシークニンを天敵から守りたい。自社栽培の畑で語られた想い

島の柑橘をおびやかす、カミキリムシ被害

大橋さん:
いま頭を悩ませているのが、カミキリムシの被害です。島のみかんにカミキリムシがつくようになって、木の根元に大きな穴を開けて枯らしてしまうんです。私がシークニンを集め始めたときは、なかったんですよ。

リトケイ:
カミキリムシはいつごろから現れたのでしょうか。

大橋さん:
12、3年くらい前からかね。島で栽培されているタンカンなどに被害が出ています。カミキリムシが増えて、あっちの木も枯れ、こっちの木も枯れて、山に自生していたシークニンにも変化が現れています。

樹齢100年のシークニンも、カミキリムシにやられてしまいました。

カミキリムシ対策をしながら、自社の畑でシークニンの栽培に取り組む大橋さん

大橋さん:
先日、沖縄から人が来て話を聞いたのですが、沖縄にも樹齢何百年というシークワーサーの木があって、それもカミキリムシにやられてしまったそうです。

沖縄では、シークワーサーの防虫のために6回くらい消毒するそうです。シークニンに比べて実が大きくなって皮も薄いから、果汁を搾っても、うちの倍とれるのだとか。

柑橘類の根元に穴を開け、枯らしてしまうカミキリムシ。シークニンにも被害が出ています

リトケイ:
大橋さんのところは農薬が使えませんから、害虫は困りますね。

大橋さん:
農薬を使わない場合、カミキリムシは手で捕るしかないんです。最初の頃は役場が50円でカミキリムシを買い取っていて、小遣い稼ぎになるので子どもたちがいっぱい捕っていたのですが、予算がなくなったということで捕らなくなってしまいました。

私も歳で山を回る元気がないので、畑に20本くらい苗を植えて育てているのですが。実がつくまで9年かかる木ですから、新しく植えた木は私が生きているうちに実がなるか、いつになるかと、気を揉みながら世話をしています。

お伺いしたのは3月半ば。シークニンの白い花が咲きこぼれ、木になった実が黄色く熟していました

シークニンを守りたい。自社栽培の畑で語った思い

リトケイ:
シークニンの価値を知って、大切に守ってくれる人が島の中に増えるといいですよね。

大橋さん:
島の中でもシークニンをシークワーサーと呼ぶ人もいるくらいで、まだまだ知られていないと感じます。そこで、シークニンのゼリーをつくって学校給食で出してもらっています。

シークニンの苗をつくって、自分の母校に植えてもらうこともしました。実がなればお金になるし、体にもいいみかんだからと教えて、6本ほど植えて子どもたちに世話をしてもらっていたのですが、カミキリムシにやられてしまいました。今残っているのは、1本だけです。

部活で島外の大会に参加する子どもたちの遠征費にしてもらうために、子どもたちが集めたシークニンを買い取る活動もしています。先生が集まった実を軽トラックで運んできて。

子どもたちの活動だから、少しでも高く買ってあげたいじゃないですか。そしたら最敬礼して「ありがとうございます」と言われて、うれしかったですね。

20年来シークニンに携わるダイキチ食品の大橋さん。自社栽培のシークニン畑にて

リトケイ:
徳之島町のふるさと納税の返礼品でも、シークニン果汁に加えて果汁をつかったポン酢やドレッシングなどの加工品が出されていますね。

大橋さん:
ポン酢やドレッシングを商品化する以前は、シークニン果汁の活用法を知ってもらうために、お客さんにレシピと黒砂糖のエキスや水を送って、ご自分でつくってもらったりしていました。

島内でも、お祝い事があるときにポン酢とドレッシングのセットがよく出るんですよ。ふるさと納税では、シークニン果汁とのセットで冬になったらポン酢、夏になったらドレッシングと、年間を通じて注文が入ります。加工品は外注してつくっているため、売れてもあまり儲けはないのですが、町のためにも生産をやめるわけにはいかなくなりました(笑)。

シークニンのポン酢やドレッシングは、徳之島町のふるさと納税でも人気の返礼品です

シークニンの花に集まるみつばちの姿に見つけた希望

リトケイ:
この畑では、カミキリムシの対策はどうされているんですか。

大橋さん:
カミキリムシは柑橘の根っこに卵を産みます。その卵が孵化して、クワガタムシの雌くらいの大きさで木にひっついているのを、一本ずつ目で見て人の手で駆除するんです。予めネットを張っておく方法もあると思いますが、木は大きくなるから難しいですね。

リトケイ:
その方法ですと、山中に自生しているものは難しいですね。

大橋さん:
山にはハブ(※)もいるので、自生している木をちゃんと管理するのはなかなか難しいです。枯れるだけ枯れたら、種をまいて増やしていくしかないのかなと思っています。

※クサリヘビ科マムシ亜科ハブ属の毒蛇で、出血毒を持ち、咬まれると激痛と腫れが広がり、ひどい場合は死に至る。活動の盛んな時期は、4~6月とシークニンの収穫時期にも重なる9~10月。奄美群島では奄美大島・加計呂麻島・請島・与路島・徳之島に生息する。

南国の光あふれるシークニン畑。熟した実をその場でもいでいただきました

リトケイ:
何とかシークニンを守るために、もっと多くの人が栽培してくれるといいのですが。

大橋さん:
ジャガイモやサトウキビみたいに、今年植えて来年お金になればいいけれど、植えてから9年も10年もかけてお金になるか分からないという現状では、植える人もつくる人もいませんよ。

タンカンだって他のみかんだって、鹿児島から苗木を買って植えれば、2年や3年で実をつけて出荷できます。シークニンは、そういう訳にはいきませんから。

リトケイ:
自生しているものを誰かが食べて、吐き出した種が芽を出して。そうやって自然に増えてきた植物ですもんね。

大橋さん:
鳥も食べて糞をしますでしょう。山にあるシークニンは、鳥が種を運んだものですね。

リトケイ:
シークニンは、徳之島の自然のサイクルの一部なんですね。

いただいたシークニンの実は甘酸っぱくて少し苦味があり、とても良い香りがしました

大橋さん:
カミキリムシは最初、木の柔らかいタンカンに被害が出ていたんです。シークニンの木は固いので、カミキリムシはつかないだろうと言われていたんですが……。

栽培品種のタンカンや他のみかんには補助金が出ますが、シークニンには出ません。栽培も防虫も、全て自分の力で何とかするしかないから、私だけの力ではこの畑と事業を回していくだけで精一杯です。

サティス製薬 小沼さん:
素晴らしい成分をもっているのに、そういうのに負けてしまうのは、もったいないです。

畑の中は満開を迎えたシークニンの白い花の香りに包まれ、花にたくさんのミツバチが集まっていました

大橋さん:
この木はあまり元気がないけど、今は花がついていますね。

リトケイ:
シークニンの花を初めて見ましたが、良い香りですね。あっ、花にミツバチが来ていますよ。

大橋さん:
ああ、本当だ。ミツバチが花を受粉させてくれるんです。ほら、花の根元のところに小さな実がついているでしょう。これが大きくなるんですよ。

この木はどうなるかなと心配していましたが、秋には実がつきそうです。良かった、良かった。

シークニンの花に集まるみつばちの姿に、「秋には実がつきそう」と笑顔がこぼれる大橋さん

リトケイ:
徳之島に伺って、シークニンはまさに宝の原石だと実感しました。

サティス製薬 小沼さん:
「ふるさと元気プロジェクト」では、地域の方の思いが込もった特産品から化粧品の原料をつくることで、化粧品を通じて素材の魅力や地域の魅力を世の中に発信していきたいと思っています。

大橋さん:
シークニンと徳之島の魅力を発信してください。これからもどうぞよろしくお願いします。

大橋さんと、サティス製薬小沼さん、リトケイ取材チーム。ダイキチ食品のシークニン畑にて

徳之島に眠る原石素材を探して。フィールドワークを実施

徳之島での取材時には、「ふるさと元気プロジェクト」の新たな原石素材を探すフィールドワークも実施しました。

地元の皆さんによる温かなご協力のもと、島内各地でさまざまなサンプルを採取。身近な植物を利用する暮らしの知恵や文化など、たくさんの情報をいただきました。

新たな原石素材を探す徳之島フィールドワークの様子

徳之島調査を振り返って(サティス製薬 小沼さん)

徳之島調査では、島の方たちがどんどん声をかけて人を集めるなど協力してくださり、島ならではの温かさを感じました。

徳之島には伝統的に利用されてきた植物が多くあるものの、地元では当たり前すぎてあまり注目されていないようです。

また、生産者にとっては、育てやすく味の良い園芸品種と比べて、あえて栽培の難しい野生種を扱うことへのハードルがあることも分かりました。

一方、地域の方々へのヒアリングを通して、昔からある身近な植物が消えていくことへの悲しみも感じられました。

島の伝統素材は、その機能もさることながら、人々の思い出や記憶とも密接に関わっています。

地域に埋もれている原石素材を探しだし、利用するとともに価値を伝えていくことの大切さを実感しました。

「ふるさと元気プロジェクト」では、人と地球の”綺麗”を守れるよう、ナチュラルで高性能な化粧品原料の開発と情報発信を行っていきます。今後もご注目ください。


こだわりの植物から化粧品をつくりませんか?

サティス製薬では、地域の農産物やこだわりの植物から化粧品の原料をオーダーメイド開発しています。まずはお気軽にお問い合わせください。


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