つくろう、島の未来

2024年05月02日 木曜日

つくろう、島の未来

瀬戸内海は大三島(おおみしま|愛媛県)でレモンやみかんを育て、イタリアの伝統的なリキュール・リモンチェッロなどの人気商品をつくる「リモーネ」。

2008年に大三島に移住し、新規就農で有機栽培・無農薬栽培の柑橘を育てるリモーネの山﨑学さんと知子さんを訪ねるシリーズの3回目では、リモーネの育てる柑橘の未利用資源が化粧品の原料としても”優秀”と分かった時のよろこびを、開発担当者が語ります。

地域に存在する原石素材が、サティス製薬「ふるさと元気プロジェクト」の手がける化粧品原料として新たな可能性をひらいた背景にある、開発者ならではの視点と生産者ならではの感覚とは?

第1回 大三島で新規就農。無農薬レモンを育てる「リモーネ」の苦労とこだわり
第2回 リモーネの「もったいない素材」が人を美しくする化粧品原料になるまで
第3回 島の地力×生産者のこだわり×研究開発者の技術の掛け算で生まれる可能性

島の原石素材が化粧品になるのに必要なことは?

ritokei:
島の原石素材から化粧品が誕生するというとワクワクしますが、どのくらいの量を使われるのか想像がつかないです。実際、どのくらいの量があれば良いのでしょう?

小沼さん:
まずはサンプルを頂いてエキス化を行い、その後、化粧品に配合することが決まった段階で必要な量を算出します。

なので、エキス化をする段階では決まった量はなく、できたエキスが化粧品に採用された後で、その製品にどの程度エキスを配合するかが決まり、1年間の製品製造数に対して必要なエキスを作るのにどの程度の素材量が必要かが決まるんです。

この流れのなかで、弊社が地域の生産者様の栽培状況や提供いただける素材の量をヒアリングしながら、実際に化粧品を販売するブランド側とすり合わせを行なっていきます。

リモーネの店内では「大三島リモンチェッロ」などの食品のほか、サティス製薬「ふるさと元気プロジェクト」から生まれた化粧品も販売されています

知子さん:
含有率を増やすことによって効能があがることはないですか?

小沼さん;
効能が上がることはありますが、多すぎると逆に肌への悪影響がでたり、テクスチャーのバランスが崩れてしまったりします。バランスの計算が大事なんです。

知子さん:
なるほどバランスなんですね。

小沼さん:
なので今現在、リモーネさんから買わせていただいている量は、けして多いと言えず申し訳ないのですが、せっかく素晴らしい素材を使わせてもらっているので、より多くのことを還元できるようにするのが「ふるさと元気プロジェクト」の主題です。

開発研究担当者というプロの視点で地域素材の可能性を語るサティス製薬の小沼さん

化粧品をつくるだけでなく、地域の未来にも貢献したい

ritokei:
たとえばどのようなことが還元できると良いでしょう?

小沼さん:
(具体的な方策は)やりながら出てくることかなと思いますが、例えば後継者問題などで、こだわりを持っている生産者さんがいなくなり途切れてしまうのは心苦しいです。

他の地域の生産者さんをみて目の当たりにする部分もあるので、つくる者の責任として資源を使うだけでなく、保護していける活動もできたらと考えています。

知子さん:
後継者不足というのは、そこに社員を送り込んでいるわけではないですよね?

小沼さん:
はい。僕たちが直接後継者を連れてくるわけではありませんが、化粧品などの事業を通して地域の素材をPRをすることによって、いろいろな人たちにその魅力や生産者さんの想いを知ってもらったり、その土地や栽培方法などに興味を持ってもらうことで「自分もやってみよう」というような人が生まれるきっかけになれたらと思い、模索しながら動いています。

農業の担い手不足を解消する一助となり、豊かな島が未来にも続いていくことも「ふるさと元気プロジェクト」の願いです

ritokei:
離島地域には、素材でも歴史文化でもたくさんのすばらしいものがありますが、ほとんどが人口減少による地域の担い手不足に悩んでいます。こうしたプロジェクトに、担い手不足の解決にもつながる展望が含まれているのは心強く感じます。

ちなみに、大三島の素材を扱うことになった段階では、どのような期待がありましたか?

小沼さん:
最初は強い想いをもって作物を栽培している生産者さんを探すところから漠然と始まったので、(リモーネさんが)素材そのものへの強い愛情を持たれているのがいいなと思いました。

その上で、柑橘は化粧品の効能に使われていて、みかんの陳皮なら漢方としても効能が良いといわれるものなので、肌の悩みを抱えて困っている人を助けられる原料になるのではと期待しました。

分析して分かったおどろきの「効能」

小沼さん:
ただ、そもそもリモーネさんは大事に育てた素材をお酒や食べ物としてお客様に届けているわけです。

僕たちは化粧品の素材を探していますが、化粧品として引っ張ることで、生産者さんが食べ物として届けるという本来の意図を邪魔したくはありません。

そこで、リモーネさんと話を進めていくと摘果して余ってしまう果実があることが分かり、使われていないものを活用することができれば、本来の食品分野の事業の邪魔をせずに弊社の事業でも使わせてもらえるのではないか?と考えました。

ritokei:
それから商品が完成したんですね。手応えはいかがでしたか?

小沼さん:
(摘果した果実を)分析を進めると、他の柑橘にはない有効成分が桁外れに多いことが分かり、しかも、その成分は肌への吸収性が良く、炎症を鎮めたり、美白効果が期待できるものでありました。

やはり、化粧品という観点でみると食の分野では使われずに捨てられてしまうものでも十分使える可能性があり、むしろその方がよい場合もあるのだなと学ばせていただきました。

サティス製薬の小沼さんとリモーネの山﨑学さん。それぞれのこだわりが交わることで新たな可能性が生まれました

ritokei:
おもしろいですね。改めて生産者と開発者という異業種がコラボしたことで生まれた可能性だと感じます。他に心に残っていることはありますか?

小沼さん:
一番嬉しかったのは、いただいた素材を分析にかけた際に他の比較品には含まれなかった有効成分がピコンと出てきた時ですね。それを調べて肌に良いものだと分かった時は嬉しかったですね。

知子さん:
調べられるといいですね。新芽は伸びる力や虫を寄せる香りもあるので、何かのパワーがあると思うけれど私たちだけでは調べられないので。

小沼さん:
素材の魅力を引き出すことでもお手伝いができれば嬉しいです。

知子さん:
そういうのが広がっていったら絶対に面白いと思う。

ritokei:
さらにリモーネさんの場合、未利用資源でもあったのでSDGsの観点でもすばらしい取り組みですよね。

小沼さん:
弊社はもともと未利用資源に注目していたわけではなくて、生産者さんの想いがあり、効能のあるすごいものを探していました。

それがリモーネさんのみかんとレモンでは、未利用であるところも噛み合ったので「未利用かつ一番効能が良い」というすばらしい取り組みになりました。

知子さん:
可能性は無限ですね。

「可能性は無限」。この先にどんな可能性が花開くのか楽しみです

ritokei:
さらに無農薬でもありますし。

小沼さん:
農薬でいうと、(リモーネさんでは)お酒づくりに皮を使うので農薬は使わないほうがいいというお話がありましたが、化粧品も肌に直接塗るものなので、農薬を使用していると化粧品原料として使用できないことがあります。

そのため、無農薬に強いこだわりを持っていらっしゃるリモーネさんのレモンやみかんは安心。特に柑橘の皮は最も多くの成分が詰まっている部分なので、皮を抽出するにあたっても、農薬が含まれていないレモンやみかんは扱いやすく、安心安全なんです。

山﨑さんご夫妻のこだわりを受けて育つリモーネの柑橘は、食べ物としても、化粧品としても安心安全

島や生産者の想いや物語が「良い化粧品」に価値を添える

ritokei:
リモーネさんのような素材はどれほど貴重なんでしょうか?

小沼さん:
みかんでもきれいに売るためには農薬が必須になってきたりしています。レモンは特に海外からの輸入が多く、輸送に時間がかかるので必ず農薬や防腐剤で処理されています。

その分、国産でかつ安全なレモンやみかんを使わせていただけているのは、本当に貴重だなといつも思っています。

知子さん:
自然が一番ですよね。

小沼さん:
化粧品の場合どうしても有効性を追い求めなければいけないんですが、効能だけが良ければいいかといえばそうではなく、その効能を生み出すストーリーも添えて、最終的にはユーザーさんが納得感をもって使えることが重要なのです。

ですので、有効性にストーリーや想いが紐づくことで良い化粧品ができると考えています。

知子さん:
「食べられる化粧水」とか「食べられる石鹸」とかもあるといいですよね。

小沼さん:
今は「口に入っても安全な●●」とかありますよね。食べられるまでにはいかなくとも、そうしたアイデアは面白いですね。

語り合いの中からさらに新たな可能性が生まれる予感もした今回のインタビュー。山﨑学さん、知子さんありがとうございました!

知子さん:
そうなると一気に安心感が増しますね。

小沼さん:
こうやってお話をさせていただくと、弊社も気づいていない部分や素材がまだまだあるんだなと気づきます。定期的にこんな風にお話できるとうれしいです。

ritokei:
今後も新しい可能性が生まれていきそうですね。

<完>


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