つくろう、島の未来

2023年01月28日 土曜日

つくろう、島の未来

「リモンチェッロ」というお酒を知っていますか? 

レモンを原料につくられるイタリアの伝統的なリキュールで、地中海に似た温暖な気候の瀬戸内海エリアでもリモンチェッロをつくる作り手がいます。なかでも、しまなみ海道に連なる大三島(おおみしま|愛媛県)の「大三島Limone」(以下、リモーネ)がつくる「大三島リモンチェッロ」は知る人ぞ知る逸品です。

2008年に大三島に移住し、新規就農で有機栽培・無農薬栽培の柑橘を育てるのは、リモーネの山﨑学さんと知子さん。

ふたりが育てるこだわりの柑橘は、サティス製薬「ふるさと元気プロジェクト」が化粧品原料として新たな可能性をひらく原石素材のひとつでもあります。

今回、リトケイはサティス製薬の研究開発担当者と共に大三島を訪れ、山﨑さんご夫妻の仕事について伺いました。リモーネの未利用資源から生まれた化粧品についてのリアルな声とは?

第1回 大三島で新規就農。無農薬レモンを育てる「リモーネ」の苦労とこだわり
第2回 リモーネの「もったいない素材」が人を美しくする化粧品原料になるまで(2023年2月公開)
第3回 島の地力×生産者のこだわり×研究開発者の技術の掛け算で生まれる可能性(2023年3月公開)


「無農薬でレモンをつくりたい」会社員を辞めて大三島で新規就農

ritokei:
山﨑さんご夫妻はどのような経緯で大三島にIターンされたのでしょう?

山崎学さん(以下、学さん):
東京に住んでいた時に立ち寄った就農フェアで、愛媛県のブースに座っていた大三島の方に出会いました。そこでレモンを中心に柑橘をやりたいと伝えたら「大三島でもできるよ」と言われ、何度か泊まりにいったんです。

穏やかな瀬戸内海の風景に彩られる大三島には約5,000人が暮らしています

学さん:
他の地域もまわりましたが、自分たちがやろうとしている有機栽培、無農薬栽培に対してハードルの高い地域もあり、その点、大三島は「(隣に隣接していない)耕作放棄したところなら好きにしなさい」と言われ、おおらかだったんです。

ritokei:
それで会社員を辞められて大三島で新規就農されたんですね。ちなみに瀬戸内海だとどこにいっても柑橘があるイメージですが、山﨑さんのように有機栽培や無農薬栽培をされている方はいるのでしょうか?

学さん:
大三島に来た2008年当時は就農先で1人か2人はいましたが、ほぼいなかったですね。草が伸び放題になったり虫や病気が発生することもあるので「それ(有機栽培)なら貸さない」といわれることもあったり。就農フェアで出会った大三島の方と縁のある方が無農薬栽培をしていたのでその方に教わったり、本を読んだり、お金を払って講師に来てもらったりしていました。

リモーネでは有機・無農薬栽培で柑橘を育て、その素材を活かしたオリジナルを製造・販売しています。今回は大三島のお店におじゃましました

知子さん:
有機農業に対する理解は少なく、当時は農業指導員の指導も普通の慣行栽培でした。なので私たちが実験台になって、毎年試行錯誤していましたね。

学さん:
けれど勉強になったのはやはり、放棄された園地の元園主さんの意見でした。「ここは何月になると西日が強くなるから寒(かん)がたまるよ」とか、そういった意見がとても役に立ちました。

スクーターで島をぐるぐるまわり、少しずつ園地を拡大

さまざまな柑橘が実るリモーネの園地

知子さん:
一般的なことでも園地によって全然違っていて、実るものも違ったり。

ritokei:
園地を代々やってきた人によっても変わってきますか?

知子さん:
変わってきますね。

学さん:
木の形を見るとわかります。剪定などにその人の癖がでますし、収量重視で大きく育てたいか、逆にコンパクトに育てて作業性を重視するかでも樹形が変わってくるのです。今は80〜90歳とかで引退されていますけれども、数年前まで元気でやられていたので「ここは誰々の園地かな」と。

ritokei:
今はたくさんの園地がありますが、どのように園地を広げていかれたんですか?

学さん:
はじめはスクーターで島内をぐるぐる回りながら放棄園地を見つけていました。今は個人情報の観点から厳しいかもしれませんが、当時は見つけた放棄園地について役場に問い合わせて持ち主を教えてもらっていました。そこから地域の農業委員会などに間をとりもってもらい「このような新規就農者がいるのですが貸してもらえませんか」という話をしてもらい、園地をちょっとずつ広げていきました。

園地からは島々をつなぐ橋や多島美を臨むことができました

季節によって異なる味や香りを楽しめる「一点物」の柑橘

ritokei:
お二人が育てられている品種には「リモーネ」というレモンがありますが、栽培について意識されていることはありますか?

学さん:
栽培しているのはレモンのような香酸柑橘が中心ですが、みかんもあります。最初は「レモンくらいしかやらないぞ」という頑なな気持ちもあったんですが、「せとかの畑もやらないか?」と声をかけてもらって栽培をはじめて、大三島に来て初めて知った種類のみかんも多くて、栽培してみて後付けでおいしいと分かった品種もあったりして、奥が深いですね。

知子さん:
やってみて「これはそんなではなかったな」という品種もあったり(笑)。香りはすごくいいけれど思っていたのと違う。けれど、別の品種と掛け合わせた時に良いハーモニーがでることもあって、単体だと個性が強すぎるけど掛け合わせるとスマッシュヒットになったり。柑橘はブレンド率や収穫時期によっても全然違ってくるので、逆に一点物として楽しんでもらっています。

リモーネの店内に並ぶオリジナル商品やこだわりの商品。商品は実店舗のほかネットショップでも購入できます

ritokei:
一点物の柑橘とは魅力的ですね。

知子さん:
同じ品種でも季節によって全然変わってくるんです。だからうちでは、秋口のレモン、冬のレモン、春のレモン、夏のレモンと変えて、味と香りの余韻の違いを楽しんでもらいたい。たとえば八朔(はっさく)でも、うちは無農薬なので皮ごと絞って使っていて、それも時期によって「早摘み」「普通の春」「完熟」と分けています。完熟したはっさくの甘さや、早摘みのキリッとした味わいなど、時期の柑橘を楽しんでもらえるようにやっているので、栽培していても「すごいな」という発見が多いんです。

季節によって異なる味や香りを楽しめる柑橘はまさに「一点物の柑橘」

ritokei:
どのくらいの品種を育てているのですか?

学さん:
もう十数種類ですね。

ritokei:
改めて無農薬、有機栽培のこだわりを感じているのですが、そもそもどうして無農薬へのこだわりが生まれたのでしょう?

知子さん:
お酒づくりに使おうと思っていたので、皮から香りエキスを抽出するためには絶対に無農薬がいいなと思っていました。でも、当時は農薬のことも全然わかっていなかったので、(大三島に)来てから研修みたいなものを受けました。

学さん:
無農薬栽培を行うとはいえ知識や経験として農薬について知っておいた方がよいとのことで、農薬の散布などを研修で学びました。その時、妻も一緒に参加していたんですが「子どもを産む前の人は離れてください」と言われておどろきました。とはいえ実際に栽培をしていると、市場に出た時に皮がきれいじゃないと売れないとか、価値を高めるために農薬散布が必要なことは理解をしているので、農薬=悪という気持ちはないです。

知子さん:
きれいはきれいで素晴らしいと思いますし。

有機・無農薬栽培へのこだわりを説明してくださる山﨑学さん

ritokei:
無農薬のものがいいなと思いつつも、スーパーではきれいなものを選んでしまうこともあり、矛盾しますね。

知子さん:
逆に、うちを常連にしてくださっているお客さんにきれいなレモンを提供すると「本当に無農薬ですか」と言われることもあります。お菓子の材料として使う方も多く、傷が多いと切り落とさなければいけない部分が増えるからよかれと思ってきれいなものだけお出しすると疑われてしまったり。1個くらい傷がついたものを入れてみようかと思ったりします(笑)。

学さん:
余談ですが生果としてお客様に販売できるのは1〜2割です。先日もレモンを百数十キロ収穫しましたが、販売にまわせたのは15キロほどでした。無農薬でも、枯れ枝の徹底除去などで成品率は向上するので、私の至らなさと反省しています。

ritokei:
そんな栽培のご苦労を想像すると、レモンの一つひとつを余すことなく大事にいただきたいと感じてきます。

豪雨災害からの復興と化粧品原料としての可能性

ritokei:
平成30年7月の豪雨災害では大きな被害を受けられたとのことですが、どのような状況でしたか?

知子さん:
大三島は全体的な被害というよりは局地的でしたが、うちは被害が大きくて当時の写真を見るとびっくりするくらいでした。

平成30年7月の豪雨災害ではリモーネの園地も多大な被害を受けました(画像提供・大三島リモーネ)

学さん:
2年前にも台風があって、そのときにも園地が2カ所被害を受けて、そのうち1カ所はダメになったので手放して(地権者に)お返ししました。

知子さん:
そこは自分たちが移住して最初に貸してもらって、10年くらい毎日通いながらそこにしかない柑橘を育てたりした思い入れのある園地だったんです。貸してくださっていたおばあさまも今は亡くなってしまったのですが「草はこうするのだよ」と教えてくださったり……。ショックでしたね。

学さん:
そこで主に扱っていたのがネーブルで、そこだけで9割くらいつくっていたので、それもなくなってしまいました。

知子さん
土地を知らない方がたまに「まだ土地があるなら植えられるのではないか」と言われますが、植えられないんです。山の土が流れてしまい、海の土みたいに昔の状態になっていて、子どもと化石があるかな? と掘りに行くくらい土が違っているんです。

ritokei:
畑はどのように復旧されたんですか?

学さん:
谷に埋もれたときは、今治から借りてきた小さいユンボでちょっとやったけれど、株のまわりとか、スコップで、人力でどかせるところはどかして。それを延々とやりました。

豪雨災害で甚大な被害に見舞われたリモーネ。その復興の一助にサティス製薬の「ふるさと元気プロジェクト」がありました

ritokei:
気が遠くなる作業ですよね……。その復興にサティス製薬の「ふるさと元気プロジェクト」も一助となったそうですが、続いて、サティス製薬との出会いや石けんづくりのプロジェクトについて伺いたいです。

学さん、知子さん:
はい。

<第2回目「リモーネの『もったいない素材』が人を美しくする化粧品原料になるまで」に続く>
(2023年2月公開)


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