瀬戸内海は大三島(おおみしま|愛媛県)でレモンやみかんを育て、イタリアの伝統的なリキュール・リモンチェッロなどの人気商品をつくる「リモーネ」。
2008年に大三島に移住し、新規就農で有機栽培・無農薬栽培の柑橘を育てるリモーネの山﨑学さんと知子さんを訪ねるシリーズの2回目では、ふたりが育てるこだわりの柑橘が、食べるだけではない「化粧品」としても活用されることとなったきっかけを伺います。
リモーネの柑橘がサティス製薬「ふるさと元気プロジェクト」の化粧品原料として新たな可能性をひらく原石素材となり、商品が誕生するまでの過程にはどんな物語があったのでしょう? 山﨑さんご夫妻とサティス製薬原料開発担当の小沼さんに話を伺います。
第1回 大三島で新規就農。無農薬レモンを育てる「リモーネ」の苦労とこだわり
第2回 リモーネの「もったいない素材」が人を美しくする化粧品原料になるまで
第3回 島の地力×生産者のこだわり×研究開発者の技術の掛け算で生まれる可能性
ぽつんと出展した東京の催事とリモーネの柑橘に足を止めた開発者
ritokei:
続いては、リモーネの柑橘を化粧品の原料として活用されているサティス製薬との出会いについて伺いたいです。
山崎学さん(以下、学さん):
サティスさんと出会ったのは東京ビックサイトの催事でした。当時、僕たちはこのお店をはじめてお酒をつくっていて、今治市の商工会がブースを出すから「リモーネさんも来ないか」と呼んでもらい、僕らとして取引先を開拓するぞ!というよりは、久しぶりに東京に行けるなという思いで行ったんです。
知子さん:
ブースを出してくれるなら見学に行ってみるかというくらいで、あとにも先にも1度きりでした。そんなところで、精力的にやっているわけではなく、ぽつんとしていた私たちに声をかけてくれたのはすごい。
サティス製薬・小沼さん:
僕たちは「ふるさと元気プロジェクト(以下、FGP)」という名前でプロジェクトをやっているんですが、生産者さんがどれだけこだわりをもっているかを大事にしているんです。あの当時は、プロジェクトそのものが走り出しの時期で、狙いを定めて素材を探すなか、大々的にアピールしてくださる企業さんもいたんですが、そうすると逆に素材そのものへの想いが見えにくいところもあって。そこで出会った山﨑さんたちの素材には想いが強くのっかっていて、そこに弊社も惹かれたんです。
学さん:
ありがとうございます。
知子さん:
私たちの取り組みは本当にぽつんとしていたので、(リモーネの想いや活動を)見てくださっているとか、本当に商品化してくださるとか、そういうことがあると頑張れるんです。たとえ信念を持っていても長く続けていくのは本当に大変で……。
「心が折れそうになることもある」強いこだわりが通じ合う
ritokei:
特に大変なところはどのようなところでしょう?
学さん:
無農薬栽培をすることに信念を持っていても、状況的にどうしても農薬を使わざるを得なくなる方もいますし、新規就農したけれどもう帰っちゃったとかも聞きますね。土砂災害などで苗木を何十本も流されてしまったり。
知子さん:
心が折れるよね。なので、(サティス製薬との関係のように)信念を理解してもらいながら、つながれることはパワーというか励みになりますね。
学さん:
リスクの分散じゃないけど、自分が園地をいっぱい借りているのは、そういった意味合いもありますね。ここは寒さがたまりやすいけれど、その反面、風はうけないとか。そうしたいろんなところを組み合わせて一年を通して栽培をやっています。
小沼さん:
それは効率というよりも、人やものに対しての愛情なのですね。(農薬を使わないように)人に対しても安心なものを提供したいというこだわりを持ってものごとを考えていることは、弊社の思いとも一致するところが大きいです。だって大変ですから。農薬を使ったら草を刈らなくてもよいという選択もあるなかで、自分たちの思いをベースに柑橘を育てられている。そんな姿勢に弊社も身が引き締まります。
ritokei:
そんな風に両者の想いが通じるところがあって、今に至るんですね。
学さん:
最初はここまで世界が広がるとは思ってはいなかったです。うちでいいのかな?と思うこともありますが、サティスさんとの取引きが始まって見られない景色が見れました。
未利用だった「摘果」した素材が化粧品材料として花開く
ritokei:
化粧品の原料には「摘果(てきか ※果実の間引き)」したものを活用されているそうですが、原料にする前はどのように使っていたのでしょうか?
知子さん:
緑肥(りょくひ ※植物を肥料として利用する方法)ですね。落とすだけみたいな感じです。もったいないなと思うことはありました。今はSDGsとして再利用するなどもできるかもしれませんが、自分たちのものづくりだけで手一杯の状態だったので難しくて。でも、サティス製薬さんにその部分を吸い上げてもらって、破棄しているけど使いそうな素材がないかと聞いてくれました。
ritokei:
いいですね。
知子さん:
今、まだまだもったいないと感じているのは、お酒を漬けたあとのアルコールと皮の部分。そこにある天然のレモンオイルを再抽出して何かに使えないかなと。
学さん:
アロマオイルとかには使えるかな? とか。
小沼さん:
弊社でも何かご提案もできたらなと思います。
知子さん:
ネロリのようなすごく良い香りのよい柑橘もあるんですよ。果実自体にはあまり香りがなくても、新芽の時だけすごく芳醇な香りがするんです。
学さん:
いい香りするので、(害虫となる)アゲハ蝶とか虫が飛んできて…….。
知子さん
だから新芽に農薬をかける方も多いんです。
柑橘をみつめる生産者の感覚と成分をみつめる開発者の知見
小沼さん:
そうした新芽を使おうとなった時、新芽をとってしまうとその木自体は弱ってしまうのでしょうか?
山崎学さん
逆に「芽かき(めかき※不要な芽を取り除く作業)」で芽をかいてしまい、育てたい新芽だけ残して伸ばしてあげることをします。
小沼さん:
生産者としてじっくり見ているから気づける感覚ですね。
ritokei:
そんな生産者さんの感覚と、開発者側の知見が組み合わさって化粧品が生まれるわけですね。
知子さん:
うちも素材から製品まで一貫した6次産業なので、一番大切な素材のことを知っているのはすごいなと思います。
学さん:
「レモンをしぼった果汁を●●くらいほしい」といったお問い合わせはよくあるのですが、素材を「根っこの方からほしい」という方は今でも少ないかな。
小沼さん:
加工したものを送ってくださいというと、生産者さんの負担になってしまわないかと……。
ritokei:
化粧品の原料となる素材は、ある程度まとめてシーズンごとに送るんですか?
学さん:
柑橘はみかんもレモンも、だいたい時期が決まっているので、そのときに送っています。
小沼さん:
届いた箱を開封するその瞬間いい香りがして、一同、癒されていますね。
ritokei:
島から届いた新鮮な香り……良いですね。
小沼さん:
化粧品製造では素材ごとに果皮や実、葉などから有効成分が一番多く含まれている部位を選択して使用しており、それぞれの有効性が更に引き出せるよう抽出法にもこだわっています。ちなみに、未熟なときの果実は中の種子や果実を紫外線などの外的刺激から保護するための成分が多いんです。逆に、成熟すると種子を守るのではなく種の繁栄のため遠くに拡散させようとするので、動物が食べたくなるように糖分を増やしたり香りや色の成分が多くなります。
ritokei:
そう考えると収穫の時期ごとに異なる味や香りにこだわられているリモーネさんが生産する柑橘は、化粧品原料としてもぴったりなんですね。
小沼さん:
時期やタイミングもぴったりで本当に助かっています。
ritokei:
化粧品の原料として出荷する時の苦労やお悩みはありますか?
学さん:
6月に摘果したものを置いていた時、なかなか手が回らなくて……。いざ送ろうと思った時にカビが入ってしまい送り損ねてしまったことがありました。それ以降は、送ることのできるタイミングに収穫するようにしています。
知子さん:
全部がカビることはないのですが……。殺菌剤などを使用してカビないようにすることもできますが、うちでは使用していないのでカビたり腐ったりしてしまうんです。
ritokei:
それも無農薬栽培だからこそですよね。
<第3回目「島の地力×生産者のこだわり×研究開発者の技術の掛け算で生まれる可能性」に続く>
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