つくろう、島の未来

2020年10月29日 木曜日

島で子育てをしているお母さんやお父さんは、子育て環境としての島の魅力や課題、未来をどう展望しているのでしょうか。子育てと地域をかけあわせた活動を展開している大島(おおしま|愛媛県今治市)、屋久島(やくしま|鹿児島県)、与論島(よろんじま|鹿児島県)の3団体と「こうなったらいいな!島の子育て」について語り合いました。

※この記事は『季刊ritokei』32号(2020年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

はじめに皆さんが島で取り組まれていることを教えてください。

那覇市内で出産待機施設を運営しているほかは、「出産お祝いプロジェクト」や「制服リユースプロジェクト」など。与論は小中高ともに制服で経済的負担も大きいため、制服を譲る人と欲しい人の仲立ちをしています。

最近では、コロナの影響でイレギュラーも発生していて、通院・出産で沖縄に渡る妊産婦が安心できるよう、フェリー会社と相談して、2等料金で個室に入れてもらえるようにしました。また、(コロナ患者の発生時は)島の病院が閉鎖され外来がストップしている中で検診が受けられず不安な妊婦さんや産後間もないママさんたちの相談窓口として助産師ホットラインを紹介したり、保健センターが妊産婦や子どもの通院に対してどのような動きをしているかを直接問い合わせてSNSで情報を発信したりしました。

制服リユースのサービス名「attara(あったら)」は与論の方言で「もったいない」を意味。ベビー用品を交換する「M+attara(まったら)」というサービスも

個人ではお願いできそうにないことを交渉してくれるとは心強いですね。屋久島はいかがですか?

僕は普段、自然の家で働いて、休日にNPOを運営しています。主軸は自分の子どもたちを育てることで、月1で親子の学びの場として、自然体験や自然の中でアートをつくる体験をしていて、屋久島と他の島を比べられるよう30〜40人で種子島(たねがしま|鹿児島県)や口永良部島(くちのえらぶじま|鹿児島県)にキャンプに行くこともあります。

きっかけはあるんですか?

「やっくん、公園つくってよ」と言われたことです。移住者の親に「小さな子どもを安全に遊ばせられる場所がない」と言われたのが衝撃でした。

屋久島は自然があふれている印象もありますが、難しいんですね。

そうですね。屋久島には川がたくさんありますが、どこも深いので幼児のうちは遊ばせるリスクもあります。

参加者はどんな方ですか?

移住者も地元の人もいて、父親も母親も参加して楽しんでいます。親の方が楽しんでいますね。

月1で開催されるOYAKOLABOには島の出身者や移住者、父親、母親問わずたくさんの親子が参加。福元さん曰く「特に父親が楽しんでいます」

今治大島はいかがでしょう?

移住した当時、自分の子どもたちと「自然のなかで遊びたい」と思っていたんです。でも、島の子どもたちはゲームで遊んでいるし、親も「山で遊ぶのは怖い」と、想定外だったので、手探りで活動を始めました。

実際、ゲームしていますよね。日本の端々にある島へいっても、ゲームをする子どもの姿を見かけます。

(うなずく)

しまなみ海道はサイクリングも有名ですが、島の子はあまりサイクリングに行かないんです。親が連れて行かないからですが、親に聞けば「誰かが連れて行ってくれるなら」と言うので、参加者を募って始めたら、協力してくれる人も出てきました。他にはキャンプ、花見、餅つきなどをこども組合で引き受けてやっています。

こども組合で開催したしまなみサイクリングの風景。大島から来島海峡大橋を渡り、今治市街地を目指した

運営はおひとりですか?

子どもたちのお母さん、お父さん方にも協力してもらっていますが、基本は1人で企画しています。最初はきちんと組織化しようと思っていましたが、私も子育てしながらの活動なので、経済的にも労力的にもすべてを注ぎ込めません。なので「脱・ちゃんと」でゆるく活動を続けて行けるようバランスをとっていて、そのおかげで、サービスを「受ける側」と「提供する側」の関係ではなく、「何かやるから助けて!」と周囲の人に言える状況ができました。

それはいいですね。では、皆さんの島にある「子育ての良さ」についても教えてください。

島の多くの家庭では、畑をしていたり、ヤギを飼っていたり、土や動物に触れる機会が多いです。近所だけでなくどこに行ってもみんな声をかけてくれ、与論島の人たちは地域で子育てをする意識を持っていると思う。

私は島に嫁いできたので、海の遊び方をよく分からなかったんですが、小さな島なので近くに教えてくれる人がたくさんいます。それと、子どもがぱっと道に飛び出してしまっても、車が少ないのは安心ですね。

屋久島はいかがでしょう?

普段、ゲームをしているとしても、やはり島の子のポテンシャルは高いと思います。都会の子は平らな場所しか歩いていなくても、島の子は違う。環境教育の一環で幼児を連れてタイドプール(潮だまり)に魚をつかまえにいったんですが、全然とれないだろうと思っていた年少さんが、年長の子よりも魚をつかまえていたことに、びっくりして。子どもたちの運動能力の高さを目の当たりにしました。

OYAKOLABOのほかにも、役場主催の運動教室、自然体験や文化体験などをゆるい雰囲気で楽しめるイベントを開催している

特集でインタビューした根ケ山先生も「島の環境は子どもの本能を発揮させる」とおっしゃっていました。

僕は大学時代に探検部に入っていたんです。その頃まで「屋久島には何もない」と思っていましたが、仲間から「屋久島はすごいんだ」と聞いて初めて自覚できました。子どもの頃に僕が山に入っていけたのも、身近な大人が連れていてくれたからなので、やはり、子どもと一緒に自然活動ができる「プロの遊び人」としての大人がいることも、島の豊かさではないかなと思います。子どもにとっては親も環境の一部ですし、親が笑顔であるからこそ、子どもも幸せを感じられると思います。

なるほど。確かに人間だって環境の一部ですよね。

島には「足るを知る」ような物質的に豊かでなくても、今、目の前のものに幸せを感じられる感覚がありますが、それが一番の良さだと思います。

本当にそうだと思います。今治大島はどうですか?

私は都会育ちで父もサラリーマンでしたが、島の産業といえば採石に農業、漁業など。親が働く姿を身近に見て育つ子どもたちは、ゆくゆく島外に出て行ったとしても(親の姿が)生涯の芯に残ると感じるので、第一次産業がある地域だということを活かせないかなと感じています。

(島の一次産業を)こども組合でも活用しているんですか?

こども組合は子どものための組織で、組合員もみんな子ども。活動費も自力で稼いでほしいと思っているので、自分たちで稼いでもらうために、子ども組合で柑橘の畑を借りました。子どもたちが収穫や箱づめをして、お礼の手紙も書いて、ネット販売をしたんです。結構売れたので、売上でキャンプ用のタープを買い足したりしました。

お揃いの「みかん帽」で収穫した農作物を販売するこども組合のメンバー。袋詰めやお釣りの計算、セールストークなど活躍して見事完売!

子どもだって社会に参加できると嬉しいですよね。

こども組合が家庭以外のいろんな価値観に触れるための場になったらと思っています。

それでは、「こうなったらいいな。島の子育て」をテーマに、超えたい課題やアイデアがあれば教えてください。

あんまぁ〜ずも家だけではない居場所にもなれたらと思って、子ども食堂までいかずとも、子どもたちの拠り所をつくりたいと話しています。

あんまぁ〜ずでは与論島在住ママ限定の託児付き「ママピラティス」や「ママSUP」も展開。島で暮らすママは島内価格で各サービスを体験できる

与論島には学童もありますが選択肢がないので、それを増やしていきたいですね。目下、資金調達が一番の課題ですが。

子どもの年齢によって悩みも変わり、中高生だと部活動の遠征費もかさむようになりますし、小学生の子どもを持つメンバーからは「島外でしか得られないチャンスにどう触れさせるか?」など、いろんな課題があります。

その資金を稼ぐために、あんまぁ〜ずのサービス価格をあげてしまうと、子育て世代のサポートになれなくなったりしますし、難しいですよね。

ですね。みんながやりたいことを実現させられるよう、ふるさと納税を活用した資金づくりも企画中です。

心強い動きですね。

だけど先日、衝撃的なこともあって…….。高校生が島のことを調べたという発表会で、ある生徒が「島には夢がなく不便でしかない。大企業もないし、夢を持てる仕事が知りたいです」と言っていたんです。私は東京にいた頃には関わることがなかった一次産業の大切さを島で感じられたんですが、その子には、島の大人たちが担っている仕事の良さが見せられていないと感じました。だから私たちも「大人になるのって楽しいよ」と伝えられるよう、ワクワクを大事に活動していきたいと思いました。

私も以前は人材の仕事をしていたので、働くことや将来への目線を育むような活動をしたいですね。仲間とお酒を交わす大人たちも楽しそうですが、それだけでなく、キラキラとカッコいい大人の姿も子どもたちに見せたいです。

あんまぁ〜ずと踊絵師・神田さおりさんとの共同企画「おひさま祭」の開催風景。島の年長クラス全園児(約50人)に無料でアート体験を提供(2016〜17年)

屋久島はいかがですか?

僕は「住み続けたくなる島」をつくりたいと思って活動していますが、最近は「将来的に島に住むか?」という決定権を子どもたちになすりつけるのではなく、本当に「住み続けたい!」と思ってもらえる島をつくることを意識しています。そこで最近、島らしさとは何かを語り、体現する「イマジン屋久島」という取り組みを始め高校生も含めて島の豊かさを見直しています。

「イマジン屋久島」では島だからこそ感じられる持続可能性を島の豊かさとして、自然遺産登録から約30年となる現在を起点に次の30年を展望中

面白そうな取り組みですよね。

今の子どもたちは、不確実性を増していく社会で生きていかなければいけません。そんな中「どうやって生きる力を身に付けてもらうか?」という点では、学校教育のふるさと学習やキャリア教育も必要になると思います。一方、子どもを学校に押し込めて社会から分断するよりも、もっと大人も子どもに関わる島にしたいので、行政まかせではなく、住民が勝手に島づくりしちゃうのも大事だなと思います。島の価値を形づくる「人」をもっともっと大切にしたいですね。

子育てと地域づくりはつながりますよね。

一湊(屋久島北部の集落)は昔、屋久島で一番栄えていましたが、人口減少が続いていました。そこに若者が戻ってきて、地域行事を楽しみ、地元愛を語っている。そんな大人を見て育った子どもたちが集落に帰ってくる状況が生まれています。

親の背中を見て子どもたちが戻ってくるのは理想的ですよね。今治大島はいかがですか?

私自身は、私がいなくてもみんなが勝手に遊んでくれるのが理想ですね。放っておいてもお互いに刺激しあいながら、生きている実感を感じてもらえたら。大事なのは、どこにいてもその場所で自分の役割をつくって、良さを見いだせることだと思います。

こども組合の初キャンプは子ども22人、大人9人の大所帯に。アウトドアクッキングに野外シアターでの映画鑑賞、テント泊などをみんなで体験

その力は言い換えると、教育分野でよく求められる「人間力」のひとつかもしれません。

「どこに行っても大丈夫」という感覚を養うのに、島はうってつけの場所だと思います。都会は活気があるものの、大きな流れはできあがっているので、コミットするのが難しい。でも、過疎化した島はコミットのハードルが低く、どこからでも関わっていけるポテンシャルがある。そして、そんな島をどうにかできる人は、日本の未来もどうにかできる人になるはず。

(納得)

高度成長期の頃は、才能のある人が世の中を引っ張っていき、普通の人にも富が回っていましたが、今は人を蹴落として上に上がらないといけない社会になっています。だけど島の場合は、ひとりで勝ち抜くというよりも「皆んなで生きていこう」という感覚が必要になると思うんです。どこのコミュニティでも幸せを感じ、満足を得られること。トップランナーの人も、その下にいる人も「みんなで幸せになりたい」という感覚を持ってくれたら、高度成長期とは違う形で幸福を求めていける。そういう力も、島なら養えると思います。

改めて「子育て環境としての島の可能性」が見えたのと同時に、理想の子育て環境の追求が人類普遍のテーマであるように感じました。皆さん、ありがとうございました。


座談会参加者

久保田茜(大島|愛媛県今治市)
KAIこども組合
東京出身。大阪での出産育児を経て、自然の中での子育てを展望し、2015年に今治大島へ移住。地域づくりを行う団体「KAI」で活動するなか、2019年3月に「こども組合」を設立。組合員は島の子どもたち。久保田さんは子どもたちのお手本となる「ガキ大将」的存在になりたいと活動を推進中

福元豪士(屋久島|鹿児島県)
特定非営利活動法人HUB&LABOYakushima
屋久島出身の「屋久島くん」が転じて「やっくん」の愛称で親しまれる福元さん。自然の家を拠点にした環境教育を中心に2015年からは親子で自然体験を楽しめるOYAKOLABOなどを展開するNPOを運営。2020年に30年先の屋久島を描く「イマジン屋久島」を立ち上げ、島のより良い未来を追求

村上由季&沖朱理(与論島|鹿児島県)
よろん出産子育て応援隊あんまぁ〜ず
2016年活動開始。副代表の村上さんと、新メンバーの沖さんは共に島外出身(総勢5名で活動中)。与論島では沖縄本島の産院で出産する女性が多いことから、那覇市内で出産待機施設の運営するほか、さまざまな育児サポート企画を精力的に展開。2019年「よみうり子育て応援団大賞奨励賞」受賞

鯨本あつこ
離島経済新聞社
2010年に離島経済新聞社設立。有人離島専門メディア『ritokei』の統括編集長として活動する傍ら、2015年に長女を出産し、現在は2児の母に。夫婦のふるさとである沖縄と大分を生活・育児の拠点に、子どもたちと一緒に日本中の島々へ出掛けながら、密かに子どもたちの離島留学先を探している

特集記事 目次

子どもは島で育てたい

島ではよく聞くのに都会では聞こえてこない言葉があります。それは「子どもはみんなで育てる」こと。
核家族化や地域コミュニティの衰退から、日本の子育てが「孤育て」と呼ばれる現代。この特集では島に暮らす読者や専門家など共に、島での子育ての価値と課題、可能性を探ります。

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