「人と地球をもっと綺麗に、ずっと綺麗に」をスローガンに、「植物」を独特に活用した化粧品の開発とOEM製造を行うサティス製薬。
そんなサティス製薬が手がける「ふるさと元気プロジェクト」では、離島地域を含む日本全国に眠る宝の原石素材を発掘中。
その背景や想いについて、株式会社サティス製薬代表取締役の山﨑智士さんと、研究開発担当の郡司さんに伺いました。
※Original Equipment Manufacturing(相手先ブランド製造)の略。製造メーカーが他社ブランドの製品をつくること、もしくはその企業
日本各地に存在する”綺麗”をつくる”宝”を探して
ritokei:
こんにちは。サティス製薬では島を含めた多くの地域に眠る素材を原料に、化粧品をつくられているとのこと。その背景を教えてください。
山﨑:
一人でも多くの方が綺麗になっていく未来を技術でお手伝いするため、モノづくりを中心に、原材料の開発から、市場調査や製品のモニター調査、商品をユーザーにお届けする物流サービスまで手がけています。
ritokei:
その原材料になる素材探しを日本中で行なっているのですね。
山﨑:
皮膚が抱える問題に対し、ベストな解決策と最適な素材は何かと考え、日本全国から妥協なくナンバーワンといえる素材を見つけ出しています。この土地の環境だからできた、この育て方をしているからできた、この植物だからできた、という素材の掛け合わせで唯一をつくり出しているんです。
ritokei:
宝探しのようですね。
山﨑:
茶実(ちゃじつ ※お茶の実)をご存じですか?お茶の栽培分布は広く、南は鹿児島でも栽培されていますが、茶葉の栽培に茶実を使う習慣はお茶が栽培できる北限地域にしかありません(※)。これは我々の憶測ですが、ギリギリの環境で育つ茶の木は種を残すことに全精力を注ぐため、茶実に含まれる有効成分も豊富になると考えています。
(※)茶葉を育てるために花を落し茶実が実らない栽培法をとる茶園が多いなか、お茶栽培の北限地域にはあえて花を落とさずに茶実を栽培する茶園が存在する
ritokei:
興味深いです。
山﨑:
こうしたことは微生物も同じで、酸素を減らしたり温度を上げたりして極限の環境におくと微生物はたくさんのものを産出する。そういうことをヒントにもらいながら、茶実がその地域でどんな場合に利用されてきたのか? 皮膚に置き換えて茶実だからこそできることは何なのか? と絞り込んでいきます。
ritokei:
興味深いです。ひとつの素材を見つけて開発するにも時間がかかりそうですね。
郡司:
時間はかけていますね。まずは植物などの薬効に興味を持つところから始まり、関連することを調べて、産地を絞り込み、産地の人に会いに行って原材料を分けていただき、成分分析や肌の測定をしていきます。ある素材に着目して実際に肌につけられるまでには約2〜3年かかるんです。
ritokei:
宝探しをして、時間をかけて磨き上げられるという。まさに宝の原石のようです。
「地域の宝を途絶えさせたくない」ある絹糸農家との出会い
ritokei:
サティス製薬が磨いてきた原石素材には離島地域の素材もあるとのこと。全国各地に存在する原石素材を集めるのが、2009年にスタートした「ふるさと元気プロジェクト」ですね。このプロジェクトをはじめたきっかけは何でしょう?
山﨑:
理由は3つあって、ひとつは技術集団として技術を高めることができ、素材に求める水準が上がってきたことで、より優秀な素材を求めていたこと。
二つ目は、僕自身がフランスの素材で評価を得た経験があるため、次は日本の素材で成果を出したいと想い、国内の原材料を探し歩くようになったこと。
三つ目は、黄金色のシルクを求めて訪ねた養蚕農家との出会いです。そこは地図にも載らないような山奥の集落で、80代ぐらいのご夫婦が養蚕をされていました。その方が育てているきれいな黄金色のシルクが特定の成分を持っていて、「いいものを見つけた」と思ったのですが、そのおじいちゃんが生産をやめてしまったのです。
ritokei:
せっかく見つけた原石が、後継者不在で途絶えてしまったんですね。
山﨑:
ものすごい損失だと感じて、それに対し何ができるのだろう? と考えました。後継者を見つけるまではできなくても、次世代がその仕事をやってみようと思える環境をつくることはできるかもしれない。そして、経済的に所得が上がったり、生業に誇りが持てるような、ふるさとの元気に貢献できる原料開発をビジネスのスキームにしようと考えたのが「ふるさと元気プロジェクト」です。
ritokei:
地方に眠る優れた原石素材を採用するだけでなく、高付加価値をつけるプロジェクトなんですね。
山﨑:
それをいかにサスティナブルにしていけるかだと思います。
ritokei:
サスティナブルといえば、今はSDGsなどの言葉であらゆる場面で重要視されています。
山﨑:
SDGsは、みんなで足並みを揃えてやっていかないといけない。だから、まずみんなでこういうことをやり遂げたいという目標をはっきり示すことが大切です。次に、頑張った結果がどうなったのか現在地を示すこと。加えて、我慢を強いないことです。
ritokei:
我慢を強いない?
山﨑:
豊かな生活を捨てることのできる人はごく一部なので、我慢の上に成り立つことは持続可能ではありません。
そこで僕らがするべきは、例えば「泡の立たない洗顔で我慢しなさい」というのではなく、今までの洗顔料よりも豊かな泡でしっとり洗えるけれど、実は99%自然のもので原料化されているようなものをつくることだと思います。
ritokei:
なるほど。
山﨑:
昔、西表島に行きました。船から島に上陸する時に外来種の持ち込みをしないようにと靴の裏を消毒するよう言われて、さすがだなと。
それで僕が泊まったコテージはマングローブの側にあり、静かな夜に蟹たちが活動するカシャカシャという音が聞こえてくる。東京では聞けない自然のメロディだなと感じました。
ところがお風呂に置かれているシャンプーが、いけてないシャンプーだったんです。がっかりしていると案の定、泡が消えることなく排水溝へ流れて行く。この泡はどう処理しているんだろう? と思って外に出たら、みんな同じ時間に風呂に入るのでしょう、泡がマングローブ林の海に流れ出ていたんです。
先進国の日本でも下水普及率は80%ちょっとなので、まだ世帯の2割弱は下水処理されていないんですよね(※)。だから、我慢しろと強いるのは難しい。豊かな生活を大切にしつつ、製品が環境に対し問題を起こさないよう、僕らはモノづくりを頑張っていかないといけない。それがSDGsかなと思っています。
※令和3年度日本下水協会「下水道処理人口普及率」より
ritokei:
それが「ふるさと元気プロジェクト」にもつながっているんですね。
山崎:
自分たちが綺麗になることと環境によいことが両立できるのだという意識を多くの生活者に持ってもらえたらいいなと考えています。
伝統素材への愛着と技術者のこだわりが共鳴するものづくり
ritokei:
原石素材の候補はどのように探しているのでしょう?
郡司:
最初はその植物が何のために成分をつくっているか? とか、どうやって過酷な土地に住んでいるのに身を守っているのか? などを考えてみるところからはじまります。
ritokei:
???
郡司:
例えば大豆はイソフラボンという成分を作り出しますが、なぜイソフラボンを作り出すのかを考えていくと、自ら栄養を摂るために根に共生させる根粒菌と出会うためにイソフラボンを利用していることを知りました。
そこで、全国各地の大豆もやしの育て方や生産者を調べていくうちに、土と温泉熱をつかった伝統農法でもやしを育てる「温泉豆もやし」に出会いました。「温泉豆もやし」は水耕栽培のもやしとは異なり、根が長く、肌に対して有効な形のイソフラボンを作り出していたのです。
ritokei:
開発者の視点ではそのように捉えられているんですね。郡司さんはこれまでどのくらいの原材料を開発されたのでしょう?
郡司:
私自身は研究部に配属されてから5年間で化粧品の原料化に至ったものは10件です。サティス製薬全体では、ふるさと元気プロジェクトのスタートから10年間で原料化に至ったのは68件になり、その間に160をこえる素材を試してきました。
技術や知識が伴わないことで、素材を上手く活かすことができない時は自分の力量のなさを感じますが、そこは日々精進。技術は鍛錬だと思っています。
ritokei:
精進と鍛錬。ソフトな印象を持っていましたが、厳しい仕事なんですね。
郡司:
それと当たり前なのですが、地域の生産者は「食べるため」とか「隣の人に喜んでもらうため」に生産していて、化粧品のために生産しているわけではないので、(素材から化粧品を開発するということに)すべての方が共感してくださるわけではないんです。だから話を進めるなかで「大変なことは望んでいない」「小ぢんまりやっているから」と言われることもあります。
ritokei:
そんな時はどうするんですか?
郡司:
それでも生産者の方はつくっているものに強いこだわりや愛着があり、それは食べてもらう人を笑顔にしたいとか、健康にしたいという気持ちからだと感じています。私たちは化粧品開発者として肌を綺麗にしたいという強いこだわりを持っているわけなので、どんな風に生活者に役立つか私たちがわかりやすくお伝え出来れば、そこは絶対に共感されると信じています。
だから、自分たちが発見したことを生産者の方に「すごいことが分かったんです!聞いてください!」と話しに行っています。
ritokei:
高度な技術や専門知識を持った開発者が、地域の方とのふれあいを通じて、原石素材をみつけ、形にしていくというのはとても楽しそうです。
標準化する世界の中で、島々の文化や人々の誇りが輝く
ritokei:
「ふるさと元気プロジェクト」では、今後、離島地域に眠る原石素材を積極的に探していかれたいと伺いました。島の原石素材といえば、大三島(おおみしま|愛媛県)で未利用資源となっていた摘果みかんやレモンを活用されているんですね。
郡司:
大三島では摘果みかんでしたが、もし成熟したみかんの方がベストであればそちらを取り扱った上で、なるべく廃棄の部分が出ない最適な加工方法を考えます。未利用資源も含めていい素材を見つけたいですね。
ritokei:
地力が高い島々で育てられている素材のなかには、化粧品としても活用できる原石素材がたくさんありそうです。
郡司:
人や物の交流が便利になったことで、世界が標準化して個々のユニークさが見えにくくなってきているように感じますが、冬には大雪で人が出入りできないような地域には宝物のような固有の素材や文化があるので、海に囲まれ人の往来が少ない離島にも宝物がたくさん存在しているはず。
そこに期待とワクワクを感じています。島の皆さんが大事に育ててきた素材を、化粧品として触れさせていただきたいです。
こだわりの植物から化粧品を作りませんか?
サティス製薬では、地域の農産物やこだわりの植物から化粧品の原料をオーダーメイド開発しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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