つくろう、島の未来

2021年05月13日 木曜日

佐渡島(さどがしま|新潟県)の両津港から車で約45分、島の南東部に位置する松ヶ崎地区は、かつて佐渡で一番古い港町として廻船業で栄え、この地から日蓮や世阿弥が上陸したと伝えられています。屋号の里としても名高く、集落に残る二階造りの伝統建築が深い歴史を感じさせます。
2021年にスタートする「松ヶ崎留学」の舞台・松ヶ崎小中学校の校区には、世界農業遺産の拠点である岩首昇竜棚田(いわくびしょうりゅうたなだ)があり、中学生は太鼓芸能集団「鼓童(こどう)」の研修生とふれあう特別プログラムも体験できます。
松ヶ崎留学を発案した「子どもの元気は地域の元気プロジェクト」の上之山博文さん、山﨑聡子さんにお話をうかがいました。

「人が宝」の松ヶ崎で笑顔あふれる暮らしを家族で体験してほしい

子どもの元気は地域の元気プロジェクト
上之山博文(うえのやま・ひろふみ)さん

生まれ育った松ヶ崎にUターンをし、山﨑聡子さんと共に「子どもの元気は地域の元気プロジェクト」を立ち上げました。

それぞれの離島にそれぞれの良さがありますが、松ヶ崎にもさまざまな魅力があります。なかでも、一番の宝は暮らしている人です。伝統行事を通じて、地域への愛や誇りが脈々と受け継がれています。

松ヶ崎学区内の各集落には、毎年春や秋に行われる神事があり、鬼太鼓(おにだいこ)とともに集落の家を一軒一軒回る門付けが行われます。

佐渡各地に残る鬼太鼓は、他の集落では大人になってから取り組むことが多いのですが、松ヶ崎では子どもの頃から教えこまれ、子どもたちが鬼太鼓を発表する機会もあります。伝統文化を通してさまざまな世代とふれあえ、濃いつながりを持てることが、この地域の特徴です。

海も山もある松ヶ崎では自然体験も魅力の一つです。小学校では、90年続く「遠泳大会」が行われており、学年によって500メートルから1キロほどの遠泳にチャレンジします。この日は地域の大人たちが休みをとり、子どもたちの伴泳や、応援にまわり、子どもたちは地域の大人たちに見守られながら、完泳を目指します。

松ヶ崎小中学校には松林の学校林があり、伐採などの林業体験も行います。地域の大人とふれあう時間が多いため、子どもたちは自然と「地域の大人とどのように交流したいか?」を考えるようになり、中学生になると総合学習で「どうしたら外から松ヶ崎へ人に来てもらえるか?」といった課題解決を検討するなど、自発的な学習が行われています。

小規模校だからこそ、子ども一人ひとりが主役で、自分で考え、発言し、動けるので、外部から視察に来る方々が「子どもが大人ときちんとコミュニケーションできている」「発言がしっかりしている」とおっしゃってくださいます。

そんな松ヶ崎ですが、佐渡島内でも過疎化が進んでいます。我が家には、小学校4年生の長男と4歳の長女がいますが、松ヶ崎には長男と長女の間の学年の子どもがいません。長女が保育園に入園した時は、子どもがいなくなる故郷の未来に危機感を持ちました。

そこで、子育て世代の自分たちや、周りの人が好きな場所で暮らし続けられるように、「子どもがいる地域」という未来を築けるよう、島外から松ヶ崎小中学校に来てくれる子どもと、その親御さんを受け入れる「松ヶ崎留学」を開始することにしました。

留学というアイデアは、地域研究を行う大学生と一緒に「地域の子どもをどう増やすか」と考えた時に発案されたもので、行政や松ヶ崎小中学校とも議論を重ね、実現することになりました。

留学という限られた期間にはなりますが、松ヶ崎は子どもも親も、一緒に笑い合いながら過ごせる地域ではないかと思っています。

私たちと一緒に子育てをしませんか?

子どもの元気は地域の元気プロジェクト
山﨑聡子(やまざき・さとこ)さん

松ヶ崎には8年前に地域おこし協力隊で来ました。棚田の再生など、里山振興を中心に活動する協力隊時代には、お年寄りや、若手の方々と「地域活性化とは何か」を一緒に考える機会が多くありました。

その後、縁あって佐渡で結婚し、現在は松ヶ崎小中学校の校区で、2人の子どもを育てています。

この地域で子育てをする中で「子どもがいることは楽しみの原点であり、地域が元気になる」と感じるようになり、そういった意味でも学校の存続は重要だと思っています。

先生方の尽力もあり、松ヶ崎小中学校の子どもたちには、外部の人たちと関わる機会が多くあります。

新潟県内の上越地域や長崎県の学校とつなぐオンライン授業や、佐渡を拠点に活動する世界的な太鼓芸能集団「鼓童」の研修生との交流に、島外からやってくる大学生と関わる機会も設けられています。佐渡に大学はありませんが、大学生との交流が多いことは、子どもたちにとっても良い刺激となっています。

また、地域で活動する地域おこし協力隊員の協力で、授業が終わったあとの放課後活動として、子どもたちが日常的に接している保護者や地元の人々が、これまでどのような人生を歩み、どういう思いを持って佐渡で暮らしているのかを聞き取る「人生授業」という取り組みも開始しました。

地元の大人が先生となりものづくりを教わることもあり、学校の廊下には、「今年出会った人たち」がずらりと貼られています。

2021年度の松ヶ崎留学スタートに向けて、留学希望のご家族が見学に来ていますが「子どもの元気は地域の元気プロジェクト」という名前に共感し、中には「子どもも大人も学べるプレーパークをつくりたい」「森の幼稚園を地域の人と一緒にやりたい」など、新たなプロジェクトを考えてくださっている方もいます。

佐渡島は生活しやすい離島だと感じます。佐渡島のなかでも松ヶ崎は僻地にありますが、豊かな自然の中でのびのび過ごすことができ、車の運転ができれば町にも出やすい地域です。

高齢者をはじめさまざまな年代の方々との交流ができますし、地域の大人が子どもたちの成長を見守ってくれ、困った時に助けを求められる環境もあります。

松ヶ崎は地域おこしが発展途上で、ないものもたくさんありますが、だからこそいろんな可能性、未来があります。

留学生となる子どもだけでなくお母さんやお父さんも、松ヶ崎で生活することが自分の人生の理想を叶えていくことにつながるよう、私たちと一緒に地域のこれからをつくり上げていただけたらと思っています。

留学に来られるご家族の皆さんのことは、同じ子育て世代として、そして一緒に歩む仲間として、私たちプロジェクトメンバーが支えていきます。

【受入学校名】 佐渡市立松ヶ崎小中学校
【受入体制】親子型(親子で島に移住して通学)
【対象】令和3年度 小学校1年生〜中学校3年生
【留学期間】令和3年4月1日〜令和4年3月31日 ※継続を希望の場合は応相談
【募集時期】第一次締切:令和3年1月18日 第二次締切:令和3年3月15日 
【詳細URL】https://www.facebook.com/kodomo.project.sado/posts/949192588823941
【問合せ先】松ヶ崎小中学校運営協議会内 松ヶ崎留学事務局
電話:0259-67-2151
E-mail:matsu-es★sado.ed.jp(★を@に変えてお送りください)

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特集|離島留学
人口減少により休校・廃校となる島の学校が増えるなか、島外から児童生徒を受け入れる「離島留学」を行う学校が増加しています。 離島経済新聞社では、少子化という島の緊急課題と、都市部の親子のニーズを引き合わせる離島留学・離島通学を、島の未来をつくる希望と捉え「離島留学」を特集しています。(当記事は、「子どもたちが暮らせる島づくり」をコンセプトに明るい島づくりを推進する「島の未来づくりプロジェクト」のサポーター会費やご寄付をもとに制作しています)

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