つくろう、島の未来

2020年12月03日 木曜日

種子島(たねがしま|鹿児島県)の北部に位置する西之表(にしのおもて)市は、島の総面積の約45%を占める自治体です。人口は14,968名(2020年8月時点)。日本最南端の氏族である種子島家の城下町として名高く、市内の「鉄砲館」では鉄砲伝来の歴史を学ぶことができ、毎年開催される「鉄砲祭り」では迫力満点の火縄銃の試射が行われます。

西之表市では、2014年度より「種子島しおさい留学」を開始。里親型、孫戻し型、親子型の形態で留学生を受け入れています。

今回は、2018年に里親型の留学を体験した元留学生・中村彦太さんとそのお母さん、潔子さんにお話を伺いました。

少人数学級での学びと島暮らしで適応能力が身に付いた

元留学生
中学2年生 中村彦太(なかむら・げんた)さん

※インタビュー時

自然豊かな場所で生活してみたいと思い、小学6年生の1年間、西之表市に留学しました。海がきれいで自然が多く、通学路には虫やトカゲや鳥がいて、同じ時期に留学した同級生 とよく寄り道していました。夜に連れて行ってもらった田んぼや川で、初めて蛍が光るのを見た時は感動しました。

父の仕事の都合で、小学2~4年生まで通った天津(中国)の日本人学校では、学校に通う全員が顔見知りでしたが、帰国して通った小学校は、1学年の児童数が約30人で4クラスある学校だったので、少人数の学校に通いたいと思っていました。

島で通った現和小学校は、全校児童が約40人の少人数複式学級でした。留学当時、6年生は5人だけで、話し合う時はゆっくりと意見交換をしながらお互いの意見を深められ、5〜 6年生の複式学級では、それぞれ得意な教科を教え合い、時間をかけて理解できるまで学ぶことができました。

テレビ会議を利用して遠い学校と合同で授業を行うこともありました。通信状態が悪い時は、音が出なければホワイトボードに書いて画面越しに見せるなどの工夫をしたことも、島の小学校の授業ならではの体験でした。

生活面では、里親さんの家の田んぼのお手伝いや、牛のお世話でエサやりも体験しました。牛の出産にも3回立ち会い、最初はびっくりしましたし、世話をした牛がセリで売られていく時は悲しい気持ちになりました。

食事の前後にお皿を運んだり、学校で使う給食用の白衣にアイロンがけをするなど自分のことは自分でやることで、実の両親にいかに甘えていたかを改めて感じました。

島の食事はおいしくて太ってしまったほどです。島での歓迎会では大きなエビを出していただきました。島ならではの新鮮な魚介類、ご近所さんからおすそ分けでいただいた野菜、そして、自分で獲った川エビの素揚げなど、どれもおいしかったです。種子島名物の安納芋も天ぷらや焼き芋、スイートポテトなどいろいろな料理で食べました。パッションフルーツなどの島の果物は毎日のおやつでした。

学校外では、地域の子ども会に入って相撲大会に参加したり、風本神社の秋の大祭でひょっとこのお面をつけて「兵児踊り(へこおどり)」を踊ったのもよい思い出です。ロケットの打ち上げや、鉄砲祭りで迫力ある試射の実演を見学できたことも印象的でした。

留学中は、新しいことにもチャレンジしました。海での水泳の授業を通じて、長い距離が泳げるようになり、西之表市の遠泳大会にも参加しました。島で始めた剣道は、地元の千葉に帰っても続けています。中学生になってからも、色々なことに挑戦したいと思えるようになり、今は委員会の代表を務めています。

留学をして生活環境が大きく変わったことで、適応能力が身に付き、経験の幅や、人生の幅が広がったと思っています。

子どもの力を信じて見守る時間が「プレ子離れ」の訓練に

元留学生の母
中村潔子(なかむら・ゆきこ)さん

初めて西之表市を訪れた時の印象は、のんびりした雰囲気で、自然豊かな冒険心をくすぐるワクワクする環境だなというものでした。

留学するまで、息子は慎重なタイプで、何かを決める時も考え過ぎてしまうところがあったのですが、留学を機に自信をつけ、親子での話し合いでも自分の考えを伝えてくれるようになり、一方通行の会話はなくなりました。今年からは、長男(彦太さん)の弟にあたる次男も同じ里親さんのもとに留学しており、のびのびと過ごしているようです。

これから里親型の留学を希望する方々やそのご家族へは、「子どもは確実に成長することができるので、親はその子の力を信じて遠くから見守ってあげてほしい、手を差し伸べられずに心配かもしれないが、子どもたちは親が思うよりたくましい」と伝えたいです。

地域の皆さんや先生、里親さんが見守ってくださるので、子どもは安心して心身ともに成長しますし、親も成長できます。私は息子を留学させたことで「プレ子離れ」の訓練になったかな、と感じています。


【受入学校名】 西之表市内の小学校 (榕城小学校及び下西小学校を除く)
【受入体制】里親型(島の里親のもとから通学)・親子型(親子で島に移住して通学)・孫もどし型 (島の祖父母宅から通学)
【対象】
里親型:令和3年度 小学校2年生〜6年生
親子型・孫もどし型:令和3年度 小学校1年生〜6年生
【留学期間】令和3年4月1日〜令和4年3月31日 ※原則1年間
【募集時期】令和2年7月〜12月末日(予定) 
【詳細URL】
https://www.city.nishinoomote.lg.jp/admin/soshiki/kyouikuiinkai/kyouikuka/kanrikakari/2982.html
【問合せ先】西之表市教育委員会 電話番号:0997-22-1111

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特集|離島留学
人口減少により休校・廃校となる島の学校が増えるなか、島外から児童生徒を受け入れる「離島留学」を行う学校が増加しています。 離島経済新聞社では、少子化という島の緊急課題と、都市部の親子のニーズを引き合わせる離島留学・離島通学を、島の未来をつくる希望と捉え「離島留学」を特集しています。(当記事は、「子どもたちが暮らせる島づくり」をコンセプトに明るい島づくりを推進する「島の未来づくりプロジェクト」のサポーター会費やご寄付をもとに制作しています)

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