つくろう、島の未来

2023年09月29日 金曜日

つくろう、島の未来

奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)南西部の西岸に位置する宇検村(うけんそん)は、焼内湾の深い入り江を取り囲む14の集落で構成されている人口1,685人(2020年6月末時点)の村。豊年祭、シバサシといった伝統行事が大切に受け継がれ、奄美大島の最高峰である湯湾岳山頂からは太平洋と東シナ海に浮かぶ島々が一望できます。
宇検村では、2010年より子どもとその保護者で移住する「親子山村留学」を開始、留学中の家族へは阿室(あむろ)校区活性化対策委員会が保護者への就業先の紹介や、集落の方々との交流の場を設けるなど地域に溶け込みやすい環境を整えるべく尽力しています。
今回は、2016年より宇検村で親子留学中の村上久美子さんにお話を伺いました。

宇検村ではみんなが家族です

留学生の母親
村上久美子(むらかみ・くみこ)さん

4人の子どものうち、現在は小学校5年生になる次女と親子留学で宇検村に暮らしています。高校1年生になる次男は留学後、島外の高校に通っています。

初めて奄美大島を訪れたとき、空港から「いつになったら到着するんだろう」と不安になるくらい車で走り、やっと到着した宇検村の夜空を見上げた時、見たことのないほどの満天の星が見えたことを覚えています。

当初、宇検村に知合いはおらず、買い物にも病院にもすぐ行けず、不便で「帰りたい」と泣いたこともありました。また、ご近所同士のお付き合いが濃密で戸惑うこともありました。

でも、こちらは台風をはじめ災害が多く、自然環境が厳しいため、みんなで助け合わねば生きていけません。今ではその濃密さが心地よく安心感があります。

地域一丸となって取り組んでいる豊年祭や学校行事へ参加したり、近所の方から野菜や魚のおすそ分けついでに料理の仕方を教えていただいたりするうちに、自然と地域に溶け込むことができました。

以前は泳げなかった子どもたちも、海で行われる水泳の授業を受けて2キロ近く泳げるようになり、今では夏は暗くなるまで海で過ごしたり、魚を釣ったりと、随分たくましくなりました。家にはテレビがないのですが、子どもたちは自然に囲まれた中で遊び、「テレビを見たい」とは言いません。

次男は以前、全校児童が800名ほどのマンモス校に在学していましたが、宇検村では小中学校合わせて20名ほどの学校に通いました。保育園から中学生までみんなが兄弟のように過ごし、いじめもありません。少人数のため委員会や部活で様々な役割を引き受けることで成長し、人間力、生活力が身についたと思います。

そんな次男は今、島を出て調理課のある高校に通っています。調理師免許を取得して、いつかは宇検村で地元の食材を使った飲食店を出して、地域の皆さんに恩返しがしたいそうです。こちらでは地元の方が自分で獲った魚や猪などをさばくところを子どもたちが見る機会があり「命をいただく」ことを生活の中で自然と学んだことも影響しているかもしれません。

宇検村は、お互いが家族として助け合える場所です。集落の皆さんは子どもたちを自分の子どものように見守って、ある時は叱り、ある時はほめ、応援してくれます。みんなに見守られ過ごせる、子どもたちにとっては最高の場所です。

東京都神津島村(こうづしまむら)出身の石野田奈津代さんが地元の子どもたちと一緒に歌詞を考え作曲した「I LOVE 宇検村」という歌には「みんなが家族だ宇検村」という歌詞が登場しますが、ここはまさにその歌詞の通りの場所だと思います。


〈宇検村の「親子山村留学」概要〉

【受入学校名】阿室小中学校、名柄小中学校
【対象】全国:小1〜中3
【受入体制】親子型(親子で島に移住して通学)
【留学期間】義務教育の期間中
【募集時期】随時
【詳細URL】http://www.uken.net/
【問合せ先】宇検村教育委員会 0997-67-2261

特集記事 目次

特集|離島留学

人口減少により休校・廃校となる島の学校が増えるなか、島外から児童生徒を受け入れる「離島留学」を行う学校が増加しています。 離島経済新聞社では、少子化という島の緊急課題と、都市部の親子のニーズを引き合わせる離島留学・離島通学を、島の未来をつくる希望と捉え「離島留学」を特集しています。(当記事は、「子どもたちが暮らせる島づくり」をコンセプトに明るい島づくりを推進する「島の未来づくりプロジェクト」のサポーター会費やご寄付をもとに制作しています)

ritokei特集