つくろう、島の未来

2020年10月29日 木曜日

島は、心すこやかな子どもの成長を叶える理想の場所かもしれない。ただ、たとえそうであっても、島に暮らしていない家族がその理想を実現するには、親の仕事や住まいなど、多数の問題が立ちはだかります。

そんな中、注目したいのは全国の島々で広がる離島留学。

ここでは、1997年より島外の子どもたちを受け入れる三島村(※)の「しおかぜ留学」に関わる4名に、それぞれの立場から親、子ども、島の可能性を拓く離島留学について語っていただきました。

※竹島、黒島、硫黄島の3島で構成される三島村。大名竹に覆われた竹島や、ダイナミックな地形が魅力の硫黄島、多様な動植物がみられる黒島など、3島3様の島々にあわせて388人(2020年6月末)が暮らしている。

※この記事は『季刊ritokei』32号(2020年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

里親のおじちゃん、おばちゃんと、島で過ごした経験が自信に

4年間、竹島に留学した元留学生
島田亜矢子(しまだ・あやこ)さん

離島留学は、不登校だった私に母が勧めてくれたことと、竹島の海の美しさが決め手でした。思い出は、海での水泳の授業や釣り大会、大名竹という特産の筍を取りに行ったこと。今も大名竹の季節になると懐かしくなります。

里親の日髙忠一さん、喜世子さんのことは「おじちゃん、おばちゃん」と呼んでいました。当時、おじちゃんが飼っていた牛の世話を手伝うとほめてもらい、自信になりました。おばちゃんが作るご飯は美味しくて、大好きだったひき肉たっぷりのオムレツは大人になってからレシピを聞き、自分でもつくっています。

昨年、ふたりの里親20年周年を記念する会が鹿児島市内で開かれ、全国から元留学生が駆けつけました。元留学生からのメッセージや写真を集めて二人に見てもらうと、泣いて喜んでくれました。

父が転勤族だったので地元と呼べる場所がありませんでしたが、「悩んだ時はいつでも島においで!」と言ってくれるおじちゃん、おばちゃんがいる島は、帰れる場所になりました。

(写真左から) 里親の日高さんご夫妻と卒業生の島田亜矢子さん/三島村では1994年からジャンベスクールが続いている/海で開かれる水泳の授業(提供・島田亜矢子)

子どもたちにとって、島での生活が人生の糧になってほしい

20年間で累計100人を迎えた里親
日髙喜世子(ひだか・きよこ)さん

里親を始めて21年目、累計100人を超える留学生を迎えました。不登校など、さまざまな事情を抱えてくる子どももいますが、その子の話を聞き、家から出てみようと声をかけながら過ごしていると1カ月ほどで目の輝きが変わってきます。挨拶できなかった子でも、地域の人や留学の先輩から教えられ、自ら挨拶するようになるんです。

人口が少ないので、子どもたちは学校や地域のなかで役割を与えられることも多く、その経験が自信に繋がります。子どもたちは時にケンカもしますが、あえて見守っていると、自分たちで話し合って解決しています。

留学生活がその後の子どもの人生に影響することもあります。夕食の時に「味噌汁作らせて」と言ってきた子は調理師になりました。島では身近にある海や畜産に関わる仕事についた子どももいます。子どもたちに一番伝えたいのは「思いやりや感謝の気持ちを忘れず、周りの人に優しくしてほしい」こと。島での生活が、少しでも人生の糧になればと考えています。

(写真左から)島の人々との交流/日高さんご夫妻の里親20周年記念イベント(提供・島田亜矢子)

子どもも、親も、新たな世界を知り、成長できています

長女が竹島に留学中
野口大(のぐち・だい)さん

小6の長女が竹島学園へ留学中です。初めて竹島に渡ったとき、島の皆さんが明るく笑顔で挨拶してくれたことや、力強いジャンベの演奏が印象的でした。

娘は島で英語に取り組みたいと希望していました。島には塾がありませんが、先生方のきめ細かな指導のおかげで英検3級を取得でき、剣道やピアノなどの課外活動も充実しています。

里親さんとの生活では、皿洗いなどの役割もあるので、家に帰ってきたときも積極的にお手伝いしてくれるようになりました。来年は小4になる次女も留学させる予定です。

コンビニがない島は都会のように便利ではなく、台風時には避難所で過ごすこともありますが、島での経験を通じて、都会の環境が当たり前ではないことも知ってほしいですね。

島で過ごす子どもたちの吸収や成長は素晴らしく、親である私も、離島留学のおかげで、新たな文化や考え方を知ることができています。少しでも興味があるご家族は、トライしてみてはどうでしょうか。

(写真左から) 離島留学中の野口大さんの長女ななみさん/留学生活を楽しむ子どもたち(提供・野口大)

子どもが前を向くきっかけになる離島留学は島の生命線

三島村教育委員会・教育長
室之園晃徳(むろのその・たかのり)さん

三島村には3島あわせて81名の児童・生徒がいますが、そのうちの4割が留学生です。ICTを積極的に導入しており、隣の島の学校との合同授業や、英会話の授業で活用しています。各校、少人数の良さを活かしたきめ細かな指導ができるため、子どもたちの英語の能力は高いです。

地方では子どもの数が減り続けていますが、都会で増加する不登校の子どもたちを山村や離島で受け入れられるなら、都会と地方のマッチングの可能性もあると考えます。

課題は離島留学制度を発信する機会が少ないことで、「もっと早く知りたかった」という留学希望者の声も耳にします。里親の負担軽減も課題で、現在は7家庭が里親を引き受けていますが、今後は留学生を受け入れるための施設を増やすなどしたいですね。

三島村にとって子どもたちは生命線です。その存在で住民は笑顔になり、心が安らぎます。一方、生き方に悩む子どもたちにとっても、離島留学は前向きな気持ちを持てるきっかけを与えられると思います。

(写真左から)現在も続くジャンベスクールの様子/三島村竹島学園の教室/鹿児島港から約3時間で到着する竹島の港(提供・野口大)


〈三島村の「しおかぜ留学」概要〉

【受入学校名】三島竹島学園(竹島)、三島硫黄島学園(硫黄島)、三島大里学園、三島片泊学園(黒島)
【対象】令和3年度 小学校4年生〜中学校3年生
【受入体制】 里親型(島の里親の元から通学)、孫もどし型(島の祖父母宅から通学)
【留学期間】令和3年4月1日〜令和4年3月31日 ※継続可
【募集時期】 随時 
【詳細URL】 http://mishimamura.com/education-culture-history/shiokaze-bosyuu//
【問合せ先】三島村教育委員会 しおかぜ留学生係 電話番号:099-222-3141

特集記事 目次

子どもは島で育てたい

島ではよく聞くのに都会では聞こえてこない言葉があります。それは「子どもはみんなで育てる」こと。
核家族化や地域コミュニティの衰退から、日本の子育てが「孤育て」と呼ばれる現代。この特集では島に暮らす読者や専門家など共に、島での子育ての価値と課題、可能性を探ります。

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