【特集|離島留学】児童数500人の小学校から人口150人の地島へ 1年間の離島留学(前編)

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玄界灘に浮かぶ地島(じのしま|福岡)は昨夏、世界遺産登録された沖ノ島(おきのしま|福岡)に近い漁業の島。島唯一の宗像市立地島小学校では、平成15年にスタートした漁村留学で毎年5〜6人の留学生を受け入れている。その人気は高く、今年の倍率は5倍以上。子どもたちが暮らす漁村留学センター「なぎさの家」を訪れた。

※この記事は『季刊ritokei』24号(2018年5月下旬発行)「島と親子に離島留学という可能性を」特集連動記事です

泊港のそばに建つ漁村留学センター「なぎさの家」は平成27年10月に新設されたばかり。以前は空き家となっていた元旅館などで留学生を受け入れていた

実家との連絡は手紙のみ 子どもたちの留学生活

午後4時。「ただいまー!」と、なぎさの家に明るい声が響きわたり、留学生たちが帰ってきた。「今年は福岡や大分から来ています」。島で漁業を営みながら「地島校区漁村留学を育てる会」の会長を務める前田浩昌さんが教えてくれる。

取材に訪れた4月下旬は、今年度の留学がスタートしてまだ2週間という頃。3月まで児童数500~1500人規模の小学校に通っていたという4年生1人、5年生4人の留学生たちは、全校児童10人の小さな小学校に通学。

取材中の部屋に次々と顔をのぞかせては「こんにちは!」と元気に挨拶し「おやつの前に洗濯物!」と、それぞれの部屋に向かっていった。

地島の漁村留学は1年間の期間限定。留学生たちは「なぎさの家」で共同生活を送る。生活方針は「自分でできることは自分で、自分たちでできることは自分たちで」。壁には日々の時間割や当番表が掲示され、実家なら保護者がやってくれていた身の回りの世話を自分でこなす。

留学生たちに話を聞くと「楽しいです!」「寂しいです!」とこの期間で得た感想を話してくれた。意外だったことは「猫にさわっちゃいけないこと」や「自由時間が決まっていること」で、楽しいことは「釣り!」。30分でも時間を見つけたら徒歩30秒で到着する海で釣りを楽しんでいるという。

平日は6時半起床。学校へ行き16時に戻ると、自分の洗濯物をたたみ、17時から宿題。22時には就寝するという規則正しい日々を過ごす

地島の漁村留学は1年間の期間限定。留学生たちは「なぎさの家」で共同生活を送る。生活方針は「自分でできることは自分で、自分たちでできることは自分たちで」。壁には日々の時間割や当番表が掲示され、実家なら保護者がやってくれていた身の回りの世話を自分でこなす。

留学生たちに話を聞くと「楽しいです!」「寂しいです!」とこの期間で得た感想を話してくれた。意外だったことは「猫にさわっちゃいけないこと」や「自由時間が決まっていること」で、楽しいことは「釣り!」。30分でも時間を見つけたらなぎさの家の目の前にある海で釣りを楽しんでいるという。

留学生は1ヶ月に一度は実家に帰省できるが、緊急時を除いては電話もNG。かわりに週1回、郵送される「なぎさの家通信」で日々の様子が保護者に伝えられ、時々、子どもたちからの手紙も同封される。両親に手紙を送ったという女の子は「(新しく)できるようになったことを手紙に書きました」とうれしそうに教えてくれた。

なぎさの家には留学生と生活を共にする「指導員」が付き、「寮母」となる島のお母さんが朝夕の食事や掃除、洗濯の世話をする。

2011年から指導員を務める竹井ゆかりさんは、そのやりがいを「子どもたちが大変なことを乗り越えていき、最後は楽しかったと言ってくれることですね」とおだやかに話す。

一方、「夜間に高熱を出した留学生を漁船で本土の病院まで送ったこともある」という気の抜けなさも隠さない。

寮母さんが夕食の支度をはじめると、野菜を切る音がし、鍋からいい匂いが立ちのぼる。ある女の子は実親に会えないことを「ずっと寂しい」と語ったが、数々の大人が自分を支えてくれる1年間で、彼女がどう成長するかは楽しみでならない。(記事後編に続く)

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