つくろう、島の未来

2024年03月19日 火曜日

つくろう、島の未来

リトケイ編集部の島酒担当記者、石原です。「島酒日記」では、取材をしながら出会った島酒や島酒の造り手さんたちのこと、島酒の楽しみ方などを徒然にお話ししています。先日、日本海に浮かぶ佐渡島(さどがしま|新潟県)とルミネがコラボレーションしたイベント「旅ルミネmeets佐渡島」におじゃましました。その様子をお話しします。

佐渡のお洒落可愛いお店が新宿に集合

「旅ルミネmeets佐渡島」は、株式会社ルミネが全国の魅力溢れる土地との出会いをつくる「旅ルミネ」プロジェクトの第一弾として開催されました。

日本の離島で最大の広さを持つ佐渡島は、面積855.66キロ平方メートル(※1)。東京23区の約1.4倍の広さに現在約56,000人(※2)が暮らしています。日本の北限と南限の植物が混生する豊かな自然に恵まれ、日本最古の歴史書「古事記」の国生み神話にもイザナギとイザナミが生んだ8つの島々「大八島」の7番目の島として登場します。

※1……平成29年10月1日時点国土地理院調査
※2……2018年2月1日時点自治体統計

中世までは、政争に敗れた要人の流刑地として、万葉歌人の穂積朝臣老をはじめ、承久の乱で敗れた順徳上皇、鎌倉幕府を批判した日蓮聖人、時の将軍の怒りを買い流刑となった能楽師の世阿弥など、歴史の教科書に登場するような貴族や知識人が佐渡に流されました。

江戸時代に入ると徳川家康が本格的に金銀山開発を進め、「佐渡金山」などの鉱山の繁栄と共に日本各地から人が集まり、北前船の寄港地でもあった佐渡には、さまざまな人や物が行き交い、独自の食や文化が育まれてきました。

左:のれんの下がるエントランス/右:佐渡関連のフライヤーと共にリトケイ最新号も配布

「旅ルミネmeets佐渡島」には、そんな佐渡の昔ながらの民芸品をはじめ、佐渡の地元で愛される島グルメや、島在住の作家によるお洒落で可愛い雑貨などが並びました。

まぶしさを抑えた優しい照明に照らされた会場は、春の木漏れ日の下にいるような、リラックスした空気感。お散歩するような気分で会場をそぞろ歩きました。

佐渡の方々とお喋りしながら、島が身近に

左:可愛い民芸品や雑貨が揃う「佐渡百貨店」/右:本のセレクトにセンスが光る「南書店」

目を引いたのが、わら細工や古布の裂き織りなどの伝統的な手仕事や、佐渡在住の作家による手ぬぐいなどの雑貨を集めた「佐渡百貨店」。民芸的なものと現代の若手作家の作品が、お洒落に混じり合いながらプレゼンテーションされていました。

個人的なお気に入りは、「南書店」。新潟市の「北書店」の姉妹店で、佐渡の暮らしに沿う本や佐渡にゆかりのある著者の本など、佐渡に暮らす人々に向けた本を販売しています。今回の出張店舗には、「旅」をテーマにセレクトした読み物や写真集、雑誌などが集合。気になる本を手に取りページをめくると、むくむくと旅心が湧いてきます。思わず3冊購入。

左:フードセレクトショップ「GOOD FORTUNE FACTORY」/右:佐渡産の素材を使い、さまざまな瓶詰めを展開する「佐渡保存」

食品系も、佐渡の素材をアレンジした保存食のお店や、食のセレクトショップなど、若い店主たちが営むお洒落で可愛いお店がたくさん。試食しながら「どうやって食べるのがおすすめ?」「工房は島のどの辺りにあるの?」と、お店の方とお喋りするうちに、いつの間にか佐渡が身近な存在に感じられてきました。

クロモジビールと佐渡のお酒にほろ酔い気分

「手ぬぐいとコーヒーの店日和山」の「クロモジビール」

さて、島酒担当として気になるのは佐渡のお酒。イベントで出会った、素敵な島酒をご紹介します。

まずは「手ぬぐいとコーヒーの店日和山」が提供していた、「クロモジビール」。クロモジといえば、和菓子用の楊枝としてよく使われていますよね。気品のある香りが珍重され、かの千利休も茶席で愛用したと伝わっています。

「クロモジビール」は、佐渡に自生するクロモジの枝をビールに差したもの。枝を少し折ってマドラーのようにくるくる回すと、ビールにウッディで爽やかな風味がうつります。これ、焼酎でもやってみたい!

左:佐渡5蔵の清酒が揃う試飲販売コーナー/右:「天領盃酒造」の若き蔵元、加登仙一さん

佐渡にある5つの酒蔵全てのお酒が揃う試飲販売コーナーでは、試飲しながら味わいの特徴やおすすめの酒肴などをお聞きすることができました。

女性客の人気を集めていた天領盃酒造は売り切れ続出とのことで、最後に残っていたフルーティーな大吟醸を試飲させていただきました。

左:無農薬のたかね錦で仕込んだ純米酒「拓」/右:加藤酒造店の竹内康太郎さん

酒造りに使う酒米は全て地元佐渡産、「米から手掛ける酒造り」がテーマの加藤酒造店は、島内の農家さんたちと協力して無農薬の酒米生産に取り組んでいるそうです。

試飲させていただいた純米酒「拓」は、和食にマッチするすっきりとした味わい。お酒の包装紙に米づくりのプロセスが書かれていて、造り手の情熱や温もりが伝わってきます。

会場では佐渡の暮らしや旅の魅力を伝えるトークショーやワークショップなども開催されていました。明治25年創業の尾畑酒造5代目・尾畑留美子さんのトークショーを見学。

「佐渡のお酒がなぜおいしいのか。3つの理由があります」と話し始める尾畑さん。第1は「米」。江戸時代、佐渡金山の開発に伴い人口が急増した佐渡では、人々の食を賄うために水田が拓かれ、魚沼、岩船に次ぐ新潟県有数の米どころとなりました。佐渡産のコシヒカリは13年連続で特A(※)にランクインするなど、品質が高く評価されているそうです。

※日本穀物検定協会が毎年行う米の食味ランキング試験における、5段階評価での最高ランク

次に「水」。1,000メートル級の山を2つ抱える佐渡の地下水は、じっくりと時間をかけて山脈を浸透してきた中軟水のため、発酵が穏やに進みソフトな味わいのお酒に仕上がるそうです。

3つめは「人」。人や物が行き交う佐渡には酒造りに従事する人々が数多く集まり、技を磨き上げてきました。日光が当たらず気温が一定に保たれた佐渡金山の坑道を貯蔵場に使った熟成酒づくりなど、地域性を活かした酒造りも行われているそうです。

1島に5つもの蔵を持つ佐渡島。その背景に思いを馳せると、島酒がより一層味わい深くなってきますね。佐渡へ、酒蔵巡りに行こうかしら。

イベントのお土産に特製ZINE(小冊子)と佐渡島の形をしたクッキーをいただきました。ZINEには佐渡へ渡るフェリーからの景色や島の宿、イベントに出展していない素敵なお店なども収められ、佐渡への島旅に誘われます。

佐渡からやってきたお店の人たちとお話をしているうちに、だんだん島に行きたくなってくる、素敵なイベント「旅ルミネ」。第2弾はどこでしょうか、楽しみです。
それでは、また。良い酒を。

離島経済新聞 目次

編集部員石原の島酒日記

リトケイ編集部の島酒担当、石原です。取材をしながら出会った島酒や島酒の造り手さんたちのことを徒然にお話しします。

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