つくろう、島の未来

2019年09月22日 日曜日

離島地域や日本経済にとって、観光産業が重要な役割を果たしていることは自明の事実。しかし、今や観光産業は世界規模で急成長を続け、億単位の人間が移動する時代。野放しに観光を推進すれば「観光公害」を招く危険性もある状況をふまえ、世界の事例と日本の離島地域のオーバーツーリズムを知るための最新図書を紹介します。

この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

『観光公害-インバウンド4000万人時代の副作用-』(佐滝剛弘・著
)

観光需要に住民が窮する
宮古島は健全といえるのか?

スペイン東部に浮かぶバイアレス諸島のイビザ島やマヨルカ島では、街の中心部にある住宅が観光客用の民泊に転用されたことで家賃が高騰し、やむなく郊外に移り住む住民が増えている。

さまざまな施設が島外資本となり、働き手も島外からやってきていることに危機感を覚えた地元住民は、「島が自分たちのものではなくなりつつある」と、島の変化を嘆く。

両島に酷似した状況は、2011年からわずか7年で観光客が3倍に膨れ上がった宮古島(みやこじま|沖縄県)でも起きている。

観光分野の研究者として、ひとりの非営利観光事業者として、オーバーツーリズムの実態を探る著者は、急激な観光客の増加が地域に影響を及ぼし始めている一方で、さらなる観光客の受け入れ体制が整備されようとしている状況は健全といえるのかと、観光バブルに沸く宮古島の現状に疑念を抱く。

資源が限られる離島地域では、その発展に観光を欠かすことはできない。しかし、海に囲まれる島は地理的に発展の余地がなく、オーバーツーリズムの影響を受けやすい。

同著では、バイアレス諸島州政府や各島の自治体が、「経済性」「社会性」「環境」のバランスがうまく回らなければ観光業の発展はないと表明し、民泊に厳しい規制をかけるなどしながら、秩序を取り戻そうとする姿も追いかける。

観光公害を論じる際には、「殺
到する観光客」が悪者にされやす
いが、本書では儲けを重視して観
光客を優先する「受け入れ側」の
問題にも言及。

「観光という行為に
は、内在的に摩擦や軋轢を生み出
す要素があるのが当然と見るべき」とし、観光客の急増によりビーチを閉鎖したフィリピンのボラカイ島やタイのピピレイ島、中国・廈門(アモイ)のコロンス島、屋久島(やくしま|鹿児島県)、小笠原諸島(おがさわらしょとう|東京都)、石垣島(いしがきじま|沖縄県)などを例に、持続可能な観光を追究する。

『観光公害-インバウンド4000万人時代の副作用-』(佐滝剛弘・著
 2019年7月/祥伝社840円+税)

特集記事 目次

特集|島と人が幸せな観光とは?
現在、国が定義する日本の有人離島は416島。豊かな自然や多様な歴史文化、人と人が助け合う共助社会が存在する島は、いずれも住民やゆかりを持つ人にとって重要な場所であり、海洋資源や国土保全の視点に立てば、すべての日本人にとって重要な拠点ともいえる。 しかしながら、多くの島では戦後から人口減少が続き、離島地域に暮らす0~14歳の人口は、平成17年から27年までの10年間だけで、20%も減少している現実がある(平成17年、27年国勢調査)。 いくら愛着があっても、島を担う人が不在となれば、その島の文化は途絶えてしまう。離島経済新聞社では、住民にとって、島を想う人にとって、すべての日本人にとって、重要な島の営みが健やかに続いていくことを願い、「島の幸せ」を「健全な持続」と説き、持続可能な離島経済のあり方を追求。 今回は、多くの島で産業の中心を担う「観光」をテーマに、持続可能な観光を考える。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

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