つくろう、島の未来

2019年05月23日 木曜日

現在、日本には800万戸以上の「空き家」が存在し、今後も増え続ければ2033年には2100万戸を超えるとも予測されています。離島地域にも人影を失った建物が増えるなか、住居や旅館など、かつての役割を失ってしまった空き家が英気を取り戻し、にぎわいを呼び込む拠点となった「島に福よぶ空き家活用」の事例を紹介します。

この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』27号「島に福よぶ空き家活用」特集(2019年2月25日発行)と連動しています。

古民家再生を軸にした島おこしに取り組む「島の風」

島の人が誇りを持てるような美しい島をつくり、守り、そして伝えていく。この一連の取り組みこそが「島おこし」につながると考える伊是名島のNPO法人「島の風」(納戸義彦代表)は、古民家再生プロジェクトをその中核と位置付け、10年以上にわたり取り組みを続けている。

過疎化を背景に、朽ちるばかりとなった古民家が増えるなど、島の風景がどんどん「崩れて」いくことに危機感を抱いた納戸代表と島の若者ら計10人は2005年、島おこしを目的に「島の風」を立ち上げた。納戸代表は1995年、島に移住してきたIターン者だが、島の若者に推される形で代表に就いた。

(提供:島の風)

古民家は、修復して再び命を吹き込むことで島らしい風景が守られていくと同時に、宿泊施設として活用することにより島の良さを知ってもらう拠点としての役割も担っている。

古民家から生まれる利益を島に還元する仕組みを構築

さらに「島の風」は、古民家の宿泊利用に伴う清掃やリネン類の洗濯、庭の草刈りなどの業務について地元の人間を雇用。島の貴重な資源ともいえる古民家がもたらす利益を、地域に還元するシステムを構築している。

(提供:島の風)

現在、改修を終えた古民家4棟を宿泊施設として運用しており、繁忙期の7~9月は毎年予約で一杯。シェアハウスを想定した5棟目の改修計画も進行中だ。

改修は「自分たちで手掛けると気持ちがこもる」(納戸代表)ため、基本的にNPOメンバー自身が行っていることから費用が抑えられ、改修費は一軒につき500万円程度。原資は、古民家宿泊による運用益の一部や、家主からの資金提供などにより捻出しているほか、2016年にはインターネットで資金を集めるクラウドファンディングで110万円の資金調達にも成功している。

(提供:島の風)

古民家再生プロジェクトの成果として、納戸代表は「島の人の意識が変わり始めたこと」を挙げる。

プロジェクトが進み、島らしい美しい民家が蘇るのを目にした島の人が、それまで傷んだまま放置していた古い自宅を、誰に指示されるわけでもなく少しずつ修復するようになり、島でごみがポイ捨てされることも減った。いずれも美しい島を守りたい、という思いが醸成された結果だった。

納戸さんは「地域は、そこに住んでいる人の気持ちによって形作られる。古民家再生を通じ、島の人に、島への誇りを持ってもらうことが私の命題で、そのことが島を守ることにつながる」と力を込める。

(取材・文 竹内章)

【施設概要】
古民家宿泊は一棟貸しのみ、2泊(3万円)以上で。利用人数は、基本的に1棟6人。島の「お母さん」による夕食の出張調理や、出張三味線演奏などの有料サービスも。予約は、NPO法人「島の風」のホームページまたは電話0980-50-7330で。

【伊是名島(いぜなじま)】
伊是名村の島。沖縄本島北部今帰仁村にある運天港から約1時間、1日2便のフェリーが運航。

特集記事 目次

特集|島に福よぶ空き家活用
2019年現在、日本には800万戸以上の「空き家」が存在し、今後も増え続ければ2033年には2100万戸を超えると予測されています。 過疎地域だけに限らず、空き家の増加が社会問題となるなか、少子高齢化や都市部への人口流出が続いてきた離島地域でも、島の風景に家主を失った家々が増えているのではないでしょうか。 廃校などの公共空間を中心にした休眠空間の利活用事例を特集した前号「島の休眠空間利活用」に続き、今号では空き家となった住宅や民間施設をテーマに、離島地域の活用事例を特集します。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』27号「島に福よぶ空き家活用」特集(2019年2月25日発行)と連動しています。

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