つくろう、島の未来

2024年04月18日 木曜日

つくろう、島の未来

ひとえに「島の観光」といっても、地理的条件や自然環境、歴史、文化、産業構造、人口規模などの違いによって個性があります。

400島あれば400様ある個性の一端にふれるべく、7つの島に「観光の歴史」「見どころ」「課題」「取り組み」について尋ねました。

島根県は隠岐諸島の島・海士町(※島名は中ノ島)は、七類(松江市)または境港(境港市)から定期船で1時間50分~3時間、西郷(隠岐の島町)から定期船で約30分~1時間でアクセスできる島。一般社団法人海士町観光協会に聞いた、海士町観光とは? (取材・上島妙子)

この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

キンニャモニャセンター(提供:一般社団法人海士町観光協会)

第一次離島ブームが後押しとなり観光協会が設立

海士町(中ノ島)の観光の歴史は昭和初期。1953年の離島振興法施行や、1963年に隠岐諸島が国立公園となったことで隠岐観光の概念が広がり、昭和40年代の第一次離島ブームに後押しされて1968年に観光協会を創立。

2013年に一般社団法人化し、「離島キッチン」をはじめ、多様な事業に取り組んできました。

夜参りが人気の「隠岐神社」「キンニャモニャ」「海の幸」が自慢

後鳥羽天皇を祀る「隠岐神社」は海士町を象徴する存在で、神秘的な雰囲気の夜参りも人気です。後鳥羽天皇の歌「われこそは新島守よ隠岐の海の荒き波風心して吹け」には海士町の歴史が凝縮されています。

隠岐神社(提供:一般社団法人海士町観光協会)

次に、毎年8月にお祭りが開催される民謡の「キンニャモニャ」。法被をまといしゃもじを握り、ユーモラスなお囃しで踊るこの民謡からは、人との交流が大好きな素朴な島民気質が伝わります。

岩牡蠣、白いか、アラメなど「海の幸」も自慢です。火山岩に濾過され、農業も盛んな島の豊饒な大地から豊富な栄養を得た雨水が名水百選の天川として海へ流れ込み、海の幸を元気一杯に育んでいます。

名所旧跡の観光や海遊びなどを目的に幅広い年代のファミリー層が来島

来島者の多くが周遊型観光主体の「ファミリー層」で、高齢者は名所旧跡巡りを好まれています。

子連れの30〜50代の層は、夏のレインボービーチでの海水浴や、魚が泳ぐ姿を間近で見られる海中展望船あまんぼう、明屋海岸キャンプ場で海の幸や隠岐牛などのBBQを楽しんでいます。

島内にあるビーチ(提供:一般社団法人海士町観光協会)

地域に興味を持つ社会人や中長期滞在する大学生も訪問

地域に興味を持つ社会人も多く来島し、地方創生の分野で活躍する人や事業所を訪れます。また「地域と関わりを持ちたい」という想いから海士町に興味を持ち、観光協会のシェアハウスに2週間以上滞在する一人旅の大学生も増加しています。

中長期滞在型の観光「離島ワーホリ」で地場産業の人手不足を解消し移住者を創出

海士町では「暮らすように旅する」中長期滞在型観光に注目し、2週間以上の滞在と地元での就労を体験する「Working tourism」を3年前に開始しました。昨年はこの取り組みを元に総務省が「ふるさとワーキングホリデー」を全国展開し、それに伴い「Working tourism」を「離島ワーホリ」と名称変更しました。

観光協会では、中長期滞在者が離島の良さを発見し、継続的に関わることで、観光客が準島民となる人材の育成を目指しています。これまでの実績は、地場産業の人手不足解消や、移住者の創出などです。

島の森(提供:一般社団法人海士町観光協会)

島内での観光産業の認知度を上げることが課題

海士町は、流刑地として多数のよそ者を受け入れた歴史から、思いやりやもてなしの心が引き継がれていますが、観光産業は島内の認知度が低く、観光業者と島民の間ですり合わせを行い、前向きに取り組むべき課題です。

島の夕景(提供:一般社団法人海士町観光協会)

観光産業から離島で活躍するヒトを作り、育てたい

観光産業の役割は、離島と様々なニーズを持つ島外の人々とのマッチング機能です。自然や文化、歴史、食のほか、離島のヒトや生活、仕事も十分に観光商品となり得ます。

観光協会では、こうした観光商品に興味を持つターゲット層が地方との関係づくりを構築し、島の抱える諸問題を解決に導くきっかけになると考え、離島社会のパートナーとなるヒトをつくり、育て、離島経済社会に貢献すべく「一般社団法人離島百貨店」などワークシェアリングを中心とした「暮らし×仕事×観光」に取り組んでいます。

海士町は島ファンをいつでもお待ちしています!「海士の島旅」を検索してみてください!

特集記事 目次

特集|島と人が幸せな観光とは?

現在、国が定義する日本の有人離島は416島。豊かな自然や多様な歴史文化、人と人が助け合う共助社会が存在する島は、いずれも住民やゆかりを持つ人にとって重要な場所であり、海洋資源や国土保全の視点に立てば、すべての日本人にとって重要な拠点ともいえる。 しかしながら、多くの島では戦後から人口減少が続き、離島地域に暮らす0~14歳の人口は、平成17年から27年までの10年間だけで、20%も減少している現実がある(平成17年、27年国勢調査)。 いくら愛着があっても、島を担う人が不在となれば、その島の文化は途絶えてしまう。離島経済新聞社では、住民にとって、島を想う人にとって、すべての日本人にとって、重要な島の営みが健やかに続いていくことを願い、「島の幸せ」を「健全な持続」と説き、持続可能な離島経済のあり方を追求。 今回は、多くの島で産業の中心を担う「観光」をテーマに、持続可能な観光を考える。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

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