つくろう、島の未来

2019年06月18日 火曜日

有人離島(約400島余り)のうち約9割が人口減少にある日本。島の未来づくりのヒントを求め、リトケイ「島の未来づくりプロジェクト」サポーターや読者の皆さんが聴講するなか、公開インタビューを行いました。

ゲストは『都市と地方をかきまぜる』の著者であり、「日本食べる通信リーグ」代表理事の高橋博之さん。9月某日に都内で行われたリトケイ編集長・鯨本あつこによるインタビューの全文を全5回でお届けします。第1回はこちらから。

第5回 離島は”生きるリアリティ”で溢れている

鯨本

最後の質問になります。

リトケイでは「島の未来づくり」を推進しているんですが、たとえば「島と都市とかきまぜる」手法で「島の未来づくり」を進めるとしたら、高橋さんが「食」に可能性を見出したように、リアルかつ有機的な交流要素があるといいなと考えています。

離島地域の場合、「食」も含め、島と外をつなぐ交流要素にはどのようなものが考えられるか、ヒントがあれば教えてください。

高橋

僕はあんまり島まで行かないので、島の良さや課題は正直わかりませんが、わからない前提でしゃべると、(離島地域は)東京の対極だと思います。

閉鎖系で、人口過疎の最先端。そして自然に近くて不便。まさに真逆なので、「都市と地方をかきまぜる」では最もレベル高いところだと思います。

僕は「ふるさと難民」って言っていますが、たとえば僕の人間としてのふるさとは岩手県花巻市なんですけど、人間も生き物ですから、生き物としてのふるさとは最終的には「海」と「土」なんです。

鯨本

海と土。

(提供:東北食べる通信

高橋

最近は火葬ですけど、僕らも結局は最期は焼かれてけむりになって雲になって雨になって地上に落ちて、土壌に染み込んで微生物が食べて循環して土に還っていくわけです。

鯨本

確かに。

高橋

長い人類の歴史の中で、海と土から離れたのは最近のことで、すべての人は、何世代かさかのぼると海と土にふれて生きていた。最近、東京だと「1年で1回も海と土に触れない」という人もいるんですけど、そんな人でもDNAには残っていると思うんです。

鯨本

それはそうですよね。

高橋

僕は養老孟司先生と「逆参勤交代」って言っているんですけど、江戸時代とは逆に都市の人たちが定期的に海と土がある場所や、不便だからこそ得られる価値(不便だといろいろ自分考えないといけないので)に時々ふれる。それは、生き物としてものすごく大事だと思います。そうして心の健康を保って、都会に戻って来たほうが、生産性が上がるはずです。

人間社会にはこれからますますAI(人工知能)等が入ってきますけど、すべてが0と1で書ける(プログラミングできる)ということは「コピーできる」ということでもあるんです。

鯨本

つまり社会が均一になる?

高橋

世界が「同じ」に向かっていくところ、島は真逆でしょう? そんな、唯一無二の1点が「島で生きる」ってことなんだと思うんです。

鯨本

確かに、そういう意味で、島の人に「島は島」と聞くこともありますし、きっと世界と同じにはならない。

高橋

これからますます、都会の暮らしはツルツルし、消費者は待てなくなる。そんな「待てない消費者」に答えるべく、テクノロジーが駆使され、社会がグローバルに進化していく。

人間がどんどんロボット化していくなか、島のような「生きるリアリティ」そのものが存在する世界にちゃんと接続しているということは、人々が孤独に溺れずに生き抜いてく大事な要素になってくるんじゃないかと思うんです。

(提供:東北食べる通信

鯨本

離島地域は「生きるリアリティ」で溢れていますので、「島と外をつなぐ交流要素」になるかもしれません。

高橋

いま、イギリスでは「孤独」による年間の経済損失が5兆円といわれ、それを解消する大臣まで生まれています。日本も他人事ではなくて、孤独という「ネットワーク貧困」をどう解消していくかが大事なんです。

鯨本

国家レベルでも重要な問題なんですね。

高橋

僕は「幸せ」という問題を日本人は置き忘れてきたと思っています。これから「人生100年時代」になると言われていますが、そこではヘルスケアの話ばかりで、決定的に抜け落ちている議論は「何のために100年生きるか?」なんです。

鯨本

確かに「何のために生きるか?」の議論は耳に届きません。

高橋

「孤独」「さみしい」「生きてて楽しくない」。それが100年続くなら、不幸が長引くだけ。

1日1日幸せに生きるというのはなんなのか? 「生きていて楽しい」「幸せ」「だから長く生きたい」という議論が順番のはずなのに、今の社会のまま、皆が100年生きるんだったら最後の30年は介護施設とか病院。生き地獄だと思います。

鯨本

それは避けたいです。

高橋

そこで「幸せ」を考えるときに島がある。もちろん島だけに答えがあるわけではないですけど、島と都会を行ったり来たりしているなかで、見えてくる幸せはあると思います。

(提供:東北食べる通信

鯨本

あちこちの島を訪れている時、「なんのために生きているんだろう」「幸せってなんだろう」と悩んでいるような旅行者を見かけることがあります。

高橋

これから先、そういう人はすごく増えると思いますよ。

鯨本

そういったところに今後の「島づくり」のヒントもあるように思います。 ここで19時31分になりました。これから皆さんと乾杯をしつつ、打ち上げをしたいと思います。高橋さん、ありがとうございました。

鯨本

ありがとうございました。

会場

(拍手)

<完>

高橋博之さん、ありがとうございました!

特集記事 目次

島づくりのヒント「島と都市をかきまぜる?!」
有人離島(約400島余り)のうち約9割が人口減少にある日本。島の未来づくりのヒントを求め、リトケイ「島の未来づくりプロジェクト」サポーターや読者の皆さんが聴講するなか、公開インタビューを行いました。ゲストは『都市と地方をかきまぜる』の著者であり、「日本食べる通信リーグ」代表理事の高橋博之さん。リトケイ編集長・鯨本あつこによるインタビューの全文をお届けします。

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