つくろう、島の未来

2019年10月17日 木曜日

たとえそのごみが何処から流れ出していたとしても、美しい島を汚すものは拾うほかない。人口数人から数万人の離島地域に容赦なく流れ着く、膨大な海ごみに対峙するならひとりよりも「みんな」が心強い。全国の離島地域で海岸清掃を行う団体に話を聞いた。(文・竹内松裕)

世界中に漂着する海ごみを楽しく拾おう!日本生まれの地球に最もやさしいスポーツ「スポGOMI」

「ごみ拾いは、スポーツだ!」という刺激的な合言葉のもとに、ごみ拾いとスポーツの要素をかけ合わせたイベント「スポGOMI」が活気を呈している。開催地は全国各地にとどまらず、ロシアやミャンマー、韓国など海外にも展開。参加者は60分の制限時間で、チームごとに特定の地域のごみを拾い、その量や質を競い合う。

(提供・一般社団法人ソーシャルイニシアチブ協会)

社会奉仕として捉えられがちなごみ拾いに競技性を持たせ、楽しみながら気軽に地域貢献活動に参加できる仕組みを構築したのは、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ(東京都)の馬見塚健一代表理事。2008年5月の初開催を皮切りに、2018年12月の時点で国内外746大会を実施し、総参加者数は約88,000人にのぼる。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、スポーツを通じた国際貢献・交流事業として認定されており、さらに広がりを見せそうだ。

(提供・一般社団法人ソーシャルイニシアチブ協会)

スポGOMIが普及した理由には、開催場所を選ばない点がある。首都圏の市街地や海岸、野山などがどこでも競技エリアになり得る。この柔軟性が敷居を低くし、子どもから高齢者まで幅広い参加者を受け入れることができる。さらにスポGOMIのイベント運営を通じて自治体や学校、企業などの結束力が強まり、参加者が地域を大切に思う気持ちを強くするなどの効果もある。

離島地域では佐渡島(新潟県)島内の企業が日本一美しい島を目指す取り組みとして採用した。立ち上げ時の2013年には馬見塚さんが佐渡島を訪れサポートし「スポーツごみ拾い大会 in 佐渡」を開催。2年目からは行政の理解も得られ、官民がタッグを組んで運営している。

(提供・一般社団法人ソーシャルイニシアチブ協会)

一方、2015年には旅行会社が女木島と粟島(ともに香川県)で実施するスポGOMIを組み込んだパッケージツアーを販売。このときは旅行会社から馬見塚さんに打診があり、「瀬戸内海 離島の海ごみ物語」と題した旅行商品として販売された。

その後も離島地域に限らず旅行会社からの問い合わせがあり、「シンプルでルールもわかりやすく、他のイベントに比べて開催にそれほど手間がかからないところが注目されているのでは」と馬見塚さん。「スポーツツーリズムの一環としてスポGOMIが旅行商品に盛り込まれ、その場所に行くためのきっかけになるのはとても嬉しいですね」と喜ぶ。

今でこそ軌道に乗ったスポGOMIだが、活動を始めた当初は、半ばふざけて遊び感覚でごみ拾いをする団体だと見られることが多かった。その中で転機となったのは2009年末、大田区で開催したスポGOMIだった。

当日の大会で優勝した小学5年生の子どもたちが「ごみ拾いはスポーツだ」と言い合いながら、落ちているごみを拾いながら帰っていく。その姿を見た馬見塚さんは「彼らはスポGOMIを経験して、ごみとの向き合い方が少し変わったんだと思いました。そして、なんとかしてその変化を可視化したかった」と決意。独立行政法人国立環境研究所(茨城県)と2年間にわたり共同で調査を実施。その結果がスポGOMIの活動に具体的な説得力をもたらした。

(提供・一般社団法人ソーシャルイニシアチブ協会)

そして今、馬見塚さんが重要視しているのが海ごみの問題だ。「スポGOMIの活動をしていると、プラスチックなどの海ごみが世界的な問題になっていることがわかります。一方で、まだまだ遠い島のことだと思っている人が多いので、スポGOMIを楽しんでもらいながら伝えていくかが課題のひとつです」と馬見塚さん。イベント当日には参加者に向けて、海ごみの約8割は陸から出たものであり、雨風で川に流れて、川から海に運ばれていくケースが大部分を占める現状を伝えている。

最近では海岸で開催するスポGOMIも増えてきている。馬見塚さんらが現地で小さいプラスチックごみに意識を向けるように促すと、参加者の多くは「本当に落ちているのか」と驚くという。

馬見塚さんは2019年3月、パナマで開かれたスポGOMIに参加し、海外の海ごみの現状も目の当たりにした。カリブ海の島々では、マングローブの隙間に、目を覆いたくなるほどのペットボトルやビニールごみが漂着し、回収もできず放置状態になっていた。日本国内だけでなく諸外国でもスポGOMIが定着すれば、世界中に漂着する海ごみの除去と抑制を同時にできる希望が生まれる。

スポGOMIは、国内外を問わず多くの人に気軽な地域貢献活動への道筋を提示してきた。馬見塚さんの仲間はスポGOMIを「日本で生まれた地球に最もやさしいスポーツ」と呼んでいるという。「このモチベーションを諸外国に伝え、広げていきたいと強く思います」と馬見塚さんは意気込んでいる。

特集記事 目次

特集|島と海ごみ
四方を海に囲まれる海は離島地域では近年、「海ごみ」の急増に頭を痛める人が増えています。 海洋ごみ(本特集では海ごみと表記する)は主に、海を漂う「漂流ごみ」海岸にたどり着く「漂着ごみ」海底に沈み堆積する「海底ごみ」の3つに分類され、いずれも世界規模で解決が迫られる大問題となっています。 なかでも問題になっているのは、人工的に合成され、ほとんど自然に還らないプラスチックごみ。ペットボトル、発泡スチロール、漁業につかわれる網など。都市や田舎に限らず、現代の暮らしに浸透するプラスチック製品が、なんらかの原因で海に流れ出し、海を漂流し続け、島に流れ着いているのです。 紫外線を浴びて変質した微細な「マイクロプラスチック」は回収困難といわれ、多くの恵みを与えてくれる海が「プラスチックスープ」になると警鐘を鳴らされています。 海から離れた地域に暮らす人には、遠い話にも聞こえる海ごみ問題は、その一端を知るだけでも、現代社会の恩恵を享受するすべての人が関係する問題であることがわかります。 本特集では、そんな海ごみ問題を「島」の現状や取り組みを軸に紹介します。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』28号「島と海ごみ」特集(2019年5月28日発行)と連動しています。

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