つくろう、島の未来

2018年11月18日 日曜日

2018年、ユネスコの世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された黒島(くろしま|長崎県佐世保市)。島のシンボル「黒島天主堂」だけではない、じんわり温かな魅力があふれています。「させぼ黒島の秘密」では、黒島に暮らす3人が “島の住民だからこそ知っている島の魅力“を、さまざまな角度からご紹介。第4回目は地域おこし協力隊として活動する山中彩香さんが黒島でおすすめの「体験」について紹介します。

写真・文 山中彩香

皆さん、島を訪れようと思ったとき、期待するものは何ですか? きれいな海?豊かな自然?島民との触れ合い? それとものんびりとした時間でしょうか。

私が暮らす黒島は、今年の7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の1つとして世界文化遺産に登録されたこともあり、訪れる方の多くは、島にある教会「黒島天主堂」を期待してやってきます。

もちろん、それだけでも来ていただく価値は十分にあるのですが、実はせっかく島に来て天主堂だけみて帰るなんてもったいないなぁと、こっそり思っています。

そこで今回は、黒島の隠れた楽しみ方、島のおばちゃんとおしゃべりしながら黒島の郷土料理が学べる「体験」を紹介します。

もちもち食感の「ふくれ饅頭づくり」

ふくれ饅頭は、小麦粉をこねて発酵させた生地でこしあんを包み、サツマサンキライの葉っぱにのせて蒸しあげたお饅頭です。五島列島にも同じ名前の饅頭がありますが、黒島のものはモチモチとした食感が特徴(離島経済新聞のこの記事ではフワフワ感が特徴とのこと)。今や黒島定番のお土産にもなっています。

生地のこね具合や、発酵の度合いなどのアレンジは各家庭によって様々。生地に牛乳を入れたり、サツマイモやカボチャなど季節の素材を練り込む家もあります。

昔からお祝い事には必ず出される特別なお饅頭ですが、今は昔と違い、小麦や小豆、砂糖が高価なものでなくなり、気軽に作れるようになったため、親戚や地区の集まり、島外からお客さんが来たときなど、ちょっとしたおもてなしの品としても作られるようになりました。

ふくれ饅頭づくり体験は、島の一般家庭で行われます。季節によって生地の発酵時間が違うため一概には言えませんが、生地を練る1番始めの工程から2〜3時間ほどで完成します。

生地をこねる、丸めるという単純な作業のため、子どもと一緒に楽しむことができます。体験するお家によっては昔ながらに釜戸で蒸す家もあるので、火をくべる体験もできるかも知れません。

普通の豆腐の4倍!「黒島豆腐づくり体験」

黒島の島めしといえば、欠かせない食材が島豆腐です。にがりの代わりに黒島のきれいな海水を使って固めるのが特徴。とにかく大きく、1丁が普通の豆腐の4丁ほど。スーパーなどで見かける豆腐の4倍になります。

海水の量や固める時間は、その家の好みが反映されますが、固めでずっしりとしています。そのため、そのまま食べるのではなく、煮付けにして食べるのが一般的です。最近は柔らかいほうが美味しいと昔ほど固めない家が多いそうですが、普段食べるスーパーのお豆腐とは比較になりません。

本来は前日に大豆を洗って水に浸け、翌日ミキサーで潰したものを火にかけて豆乳を作り、海水と混ぜて豆腐にしていくのですが、体験では潰した大豆を火にかけるところから行います。

体験時間は約4時間。ふくれ饅頭よりも時間はかかりますが、黒島豆腐は島内でも販売されておらず、手間もかかるため現在では島民でも年に数回しか食べられない貴重な逸品。そんな豆腐を味わえ、作った豆腐をお土産として持って帰ることもできます!(※気温が高くなる6月~10月はお持ち帰り不可)

ちなみに、作った人だけが味わえる幻のおぼろ豆腐は絶品です。饅頭づくりと比べて火の側にいることも多く、少しだけ難易度の高い作業となりますが、ご家族でも十分お楽しみいただけると思います。

黒島を「体験」してほしい2つの理由

さて、2つの体験をおすすめしてきましたが、私が、黒島で「体験」をおすすめするのには2つの理由があります。

1つ目は、普通のおばちゃんが先生になってくれること。普段は主婦をしている島のおばちゃん達との交流が楽しめます。

2つ目は、先生(島のおばちゃん)の自宅が体験場であること。普段生活している場で体験を行うので、島の生活を垣間見ることができます。場合によっては、たまたま訪ねて来た島民との交流なんてこともあるかも知れません。

黒島は島民の生活を知ってこそ面白いところです。親から子へ姑から嫁へと代々伝えられてきた生活を守りながらも、少しずつその時代にあった変化を遂げている生きた伝統があります。

それは、伝統を守るのでも変えるのでもなく、当たり前に生活の中にあるということです。ただ教会を見ただけ、島をまわっただけでは知ることのできない島の暮らしをぜひ垣間見に来て下さい。

黒島ならでは? 島民自慢の「かんころ餅」

実は私も、黒島の面白い生活文化を多くの方に知っていただきたいと今年から活動を始めました。その名も「くろしまde遊び隊」です。現在は、「かんころ餅」という「かんころ(干したサツマイモ)」ともち米で作った餅を材料から作るプロジェクトを行っています。

かんころ餅というと、ご存知の方は「五島列島じゃないの?」と思われるかも知れませんが、黒島でも昔から作られており、今でもお正月に向けた10月末のかんころ作りから、12月のかんころ餅作りまで各家で作業が行われています。

ちなみに黒島の自慢はかんころを作るとき「1枚1枚丁寧に並べて干すこと」。黒島の人々は「五島の投げ広げるのとは違うんだ」と表現していますが、実際は、五島列島でも丁寧に並べられているかもしれません。

詳しく説明すると、かんころを作るとき、スライスしたさつま芋を茹でて、干し棚に並べて干す作業があります。この時、どさっと置いて重ならないように広げていくのと、最初から1枚1枚丁寧に並べて干すのでは、出来上がりの綺麗さが違うそうなのです。

「くろしまde遊び隊」では、定期的に黒島暮らしの魅力を伝えられるワークショップを開催する予定です。ぜひ、このプロジェクトにご興味のある方はフェイスブック「くろしまde遊び隊」をチェックして下さい。


ふくれ饅頭づくり体験、黒島豆腐づくり体験の詳細は 黒島観光協会HPまで。
※体験場所は基本的には、民家となりますが公民館で行われる場合もあります。

くろしまde遊び隊

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