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【特集|しまのがっこう】男木小中学校が再開するまで

2011年春、卒業生3名を送り出し、男木中学校は休校となった。子どもたちの笑い声の消えた島で、誰もが廃校を考えずにはいられない状況だった。ところが昨年秋、未就学児から中学一年生までの子ども11人のいる4世帯が男木島への移住を希望したことで、事態は急展開をみせた。『季刊ritokei』08号に掲載された島記者北坊あいりのレポート。

■男木小中学校が再開するまで

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昨年10月、高松市立男木小中学校の再開を求める要望書とともに、900名以上の署名が高松市に提出された。大西秀人市長はこれを受け取り、その後高松市教育委員会の定例会にて、正式に男木小中学校の再開が決定した。

再開の活動の中心となったのは、男木島出身の福井大和さんだ。早くに島を出て大阪で会社を経営していたが、故郷に戻ることを決意し、今年の春から島で家族とともに新しい生活を始める。福井さんは、活動をはじめたきっかけについてこう語っている。

「昨年夏、瀬戸内国際芸術祭の手伝いで、久しぶりに男木島に長期滞在したんです。島を離れて20年近く経つのですが、思った以上に大変な状況がみえてきました。島の産業は衰退し、平均年齢は70歳以上、子どものいない現状に危機感を覚えました。島に残っている知り合いに、学校を再開するには教育委員会に半年前には届けを出さなければならないと聞いて、やるなら今しかないなと思いました」

すべてはご縁とタイミングなのだと福井さんは言う。島に滞在する間、男木島昭和40年会やオンバファクトリーのアーティストたちと交流し、彼らの後押しもあって再開へ向けて動き始めることができたのだ。芸術祭という一つの大きなイベントだからこそ、一期一会の出逢いとご縁は人々の心を結び、なんとか再開させたいという皆の願いが男木島の未来を担う扉を開かせた。

福井さんは今後について、「男木島に会社の支社をつくって男木島発の何かを発信し、イノシシ対策や空き家の再生など、生活に根ざした部分に力を入れたいです。次回の瀬戸内国際芸術祭までに、機を熟したものを繋げることができればもっと広がるかもしれない。芸術祭に代わって島に来る理由となるような何かを、今後は見出していかなければならないですね」と話してくれた。

目の前のことばかりで後回しにされて来た「島の未来」について、考える時がやって来たのだ。それはごく自然なことであり、気付くことのできる人がいること自体、島にとって大きな財産だと思う。可能性は無限大なのだ。

“男木島最後の校長先生”と呼ばれた柾木俊幸さんは、2008年から休校になるまでの3年間、男木島中学校の校長先生として子どもたちを見守って来た。再開が決まったときの率直な思いを伺った。

「再開はまず不可能じゃないかなと思っていたので、大変うれしく思いましたね。というのも、一家族のみ帰って来たいなと思ったとしても、島の教育を考えたら一人学級というような形になり、集団の中で人間関係を育む場がない。親御さんは、なかなか踏み切れないと思うんですね。島の人は、私が男木島に赴任した時から3年間でなくなってしまうということがわかっていましたから。潰したくない、なんとか存続できないかという動きをずっとしていました」

2011年3月12日、これで最後になるかもしれない… そんな思いで挑んだ閉校式。柾木さんは、この日のために今まで男木島中学校で撮りためて来た写真を校内中に展示し、一般の方々にも公開したのだという。

「思い出の写真展として、校長室に置いてあった古いアルバムや写真なんかを出してきて複製し、体育館周りから教室までずらーっと並べました。本当に大勢の方々がいらっしゃいましたね」なつかしそうに語る柾木さんからは、男木島中学校への大きな愛情と想いが伝わってくる。休校になる運命をわかっていて過ごした3年間、子どもたちとともに刻んだ時間と思い出は特別なものだったのだろう。

「学校というのは、文化が集中していますし、歴史その他すべてを語るものですからね。それがなくなるというのは、非常に寂しいことだと思います。また3年という余裕ができましたから、その間にいろいろ働きかけて、今後に繋がってくれればいいですね」

最後に、柾木さんは「男木島最後の校長なんて言われていたのに、なんだか存在感が薄れたようで残念やー」と言いながら笑った。島を想う気持ちはどこにいても、どれだけの月日が経っても変わらない。とてもあたたかい気持ちになった。

取材を通して感じたのは、男木島が人々に愛され、守られているということ。島の行く末は、次世代の子どもたちへと託されていく。大切なのは、未来を見据える「目」であり、外へと発信する「声」なのだ。

島という限られたコミュニティーの中だからこそ、よそ者を受け入れて客観的な視点でものを見ることも必要である。男木小中学校にたくさんの子どもたちの笑い声が戻り、島に新しい風が吹く日も近いだろう。

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